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浪淘沙詞(劉禹錫)

浪淘沙詞
浪淘(ろうとう)沙(さ)詞(し)
劉(りゅう)禹(う)錫(しゃく)
  • 七言絶句。沙・斜・家(下平声麻韻)。
  • ウィキソース「浪淘沙九首」「劉夢得文集 (四部叢刊本)/卷第九」参照。
  • 詩題 … 『全唐詩』『楽府詩集』では「浪淘沙九首其四」に作る。『四部備要本』『万首唐人絶句』では「浪淘沙詞九首其四」に作る。『四部叢刊本』では「浪濤沙詞九首其四」に作る。『全唐詩』には、第四首の下に「一作張籍詩」と注する。『唐張司業詩集』(『四部叢刊 初編集部』所収)巻六に重出。「唐張司業詩集 (四部叢刊本)/卷第六」参照。
  • 浪淘沙詞 … 楽府題の一つ。浪(なみ)が沙(すな)を淘(あら)うの意。淘は、揺り動かして洗うこと。白居易や劉禹錫などから盛んに作られるようになった。
  • この詩は、旅に出た夫を思う妻の気持ちを詠んだもの。
  • 劉禹錫 … 772~842。中唐の詩人。河南郡洛陽県(河南省洛陽市)の人。字(あざな)は夢得(ぼうとく)。貞元九年(793)、柳宗元とともに進士に及第。王叔文に連座して僻地に左遷された。太和二年(828)に長安に復帰。その後も都と地方の諸官を歴任。開成元年(836)、太子賓客となった。柳宗元とは無二の親友。晩年は白居易とも親交があり、白居易は彼を「詩豪」と称賛した。『劉賓客文集』三十巻、外集十巻がある。ウィキペディア【劉禹錫】参照。
鸚鵡洲頭浪颭沙
鸚(おう)鵡(む)洲(しゅう)頭(とう) 浪(なみ) 沙(すな)を颭(うご)かす
  • 鸚鵡洲 … 湖北省武漢市武昌区黄鵠磯の西、長江の中にある中洲。『水経注』江水篇に「江の右岸は鸚鵡洲の南に当たる」(江之右岸當鸚鵡洲南)とある。ウィキソース「水經注/35」参照。また『方輿勝覧』鄂州の条に「鸚鵡洲は、江中に在り。黄祖が禰衡(でいこう)を殺(あや)むる処なり。衡、鸚鵡を賦(ふ)す、故に名づく」(鸚鵡洲、在江中。黄祖殺禰衡處。衡賦鸚鵡、故名)とある。ウィキソース「方輿勝覽 (四庫全書本)/卷28」参照。ウィキペディア【黄祖】【禰衡】参照。
  • 洲 … 『四部叢刊本』『四部備要本』では「舟」に作る。
  • 頭 … ほとり。
  • 浪 … 打ち寄せる川浪。
  • 沙 … 渚の砂。
  • 颭 … 風が物を揺らす。ここでは、風が吹いて渚の砂を揺り動かしていること。『説文解字』巻十三下、風部に「風吹いて浪動くなり」(風吹浪動也)とある(新附字)。ウィキソース「說文解字/13」参照。
靑樓春望日將斜
青楼(せいろう)春(しゅん)望(ぼう) 日(ひ) 将(まさ)に斜(なな)めならんとす
  • 青楼 … 青楼に登って。青楼は、青く塗った高殿(たかどの)。女性の住む所とされる。ちなみに青楼には妓楼の意もあるが、ここではその意味ではない。南朝梁の江淹の楽府「西洲曲」(『玉台新詠』巻五・宋版不収)に「鴻(おおとり)飛んで西洲に満ち、郎を望んで青楼に上る」(鴻飛滿西洲、望郎上靑樓)とある。ウィキソース「西洲曲」参照。また『南斉書』東昏侯本紀に「世祖の興光楼上に青漆を施す、世に之を青楼と謂う」(世祖興光樓上施青漆、世謂之青樓)とある。ウィキソース「南齊書/卷7」参照。
  • 春望 … 春の景色を眺めれば。春の景色を見渡せば。
  • 日将斜 … 日は今しも西に傾こうとしている。南朝陳の陰鏗「侯司空の宅にて妓を詠ず」詩(『玉台新詠』巻八・宋版不収)に「翠柳将に斜日ならんとす」(翠柳將斜日)とある。ウィキソース「侯司空宅詠妓」参照。
  • 将 … 「まさに~んとす」と読み、「今にも~しようとする」と訳す。再読文字。
銜泥燕子爭歸舍
泥(どろ)を銜(ふく)む燕(えん)子(し)は争(あらそ)って舎(しゃ)に帰(かえ)るも
  • 銜泥 … 泥を口に銜(くわ)える。燕が巣を作っていること。銜は、口にくわえる。ふくむ。
  • 燕子 … つばめ。つばくらめ。子は、親しみを表す語。
  • 争 … 我先にと争って。
  • 帰舎 … 巣に帰ってくる(のに)。舎は、家。宿。ここでは燕の巣を指す。
獨自狂夫不憶家
独自(ひとり) 狂(きょう)夫(ふ)のみ家(いえ)を憶(おも)わず
  • 独自 … ここでは二字で「ひとり~(のみ)」と読み、「ひとりだけ~」「ただ~だけ」と訳す。限定の意を示す。
  • 狂夫 … 妻が自分の夫のことを謙遜していう言葉。夫を罵っている言葉ではない。「愚妻」「豚児」などに同じ。『列女伝』弁通伝・楚野弁女譚に「大夫曰く、盍(なん)ぞ我に鄭に従わざるや、と。対えて曰く、既に狂夫の昭氏内に在る有り、と。遂に去る」(大夫曰、盍從我於鄭乎。對曰、既有狂夫昭氏在內矣。遂去)とある。ウィキソース「列女傳/卷6」参照。また、盛唐の李白「代(かわ)って遠きに贈る」詩(『全唐詩』巻一百八十四)に「妾(しょう)は本(も)と洛陽の人、狂夫は幽燕の客(かく)」(妾本洛陽人、狂夫幽燕客)とある。ウィキソース「代贈遠」参照。
  • 不憶家 … 家のことなど気にもかけない。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻七(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻三百六十五(排印本、中華書局、1960年)
  • 『劉夢得文集』巻九(『四部叢刊 初編集部』所収)
  • 『劉賓客集』巻二十七(『四部備要 集部』所収、中華書局)
  • 趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻十七(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)
  • 『唐詩品彙』巻五十一([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
  • 『古今詩刪』巻二十二(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、汲古書院)
  • 『楽府詩集』巻八十二・近代曲辞(北京図書館蔵宋刊本影印、中津濱渉『樂府詩集の研究』所収)
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