>   漢詩   >   唐詩選   >   巻七 七絶   >   浪淘沙詞(劉禹錫)

浪淘沙詞(劉禹錫)

浪淘沙詞
浪淘ろうとう
りゅうしゃく
  • 〔テキスト〕 『唐詩選』巻七、『全唐詩』巻三百六十五、『劉夢得文集』巻九(『四部叢刊 初編集部』所収)、『劉賓客集』巻二十七(『四部備要 集部』所収)、趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻十七(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)、『古今詩刪』巻二十二(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、63頁)、『唐詩品彙』巻五十一、『楽府詩集』巻八十二、『唐人万首絶句選』巻四、他
  • 七言絶句。沙・斜・家(平声麻韻)。
  • ウィキソース「浪淘沙九首」「劉夢得文集 (四部叢刊本)/卷第九」参照。
  • 詩題 … 『全唐詩』『楽府詩集』では「浪淘沙九首 其四」に作る。『四部備要本』『万首唐人絶句』では「浪淘沙詞九首 其四」に作る。『四部叢刊本』では「浪濤沙詞九首 其四」に作る。
  • 浪淘沙詞 … 楽府題。なみすなあらうの意。淘は、揺り動かして洗うこと。白居易や劉禹錫などから盛んに作られるようになった。
  • 『全唐詩』には「一作張籍詩」とある。『唐張司業詩集』(『四部叢刊 初編集部』所収)巻六に重出。「唐張司業詩集 (四部叢刊本)/卷第六」参照。
  • この詩は、旅に出た夫を思う妻の気持ちを詠んだもの。
  • 劉禹錫 … 772~842。中唐の詩人。あざな夢得ぼうとくちゅうざん(河北省)の人。貞元九年(793)、柳宗元とともに進士に及第。王叔文らの政治改革に加わり、僻地に左遷された。太和二年(828)に長安に復帰。その後も都と地方の諸官を歴任。開成元年(836)、太子賓客となった。柳宗元とは無二の親友。晩年は白居易とも親交があり、白居易は彼を「詩豪」と称賛した。『劉賓客文集』30巻、『外集』10巻がある。ウィキペディア【劉禹錫】参照。
鸚鵡洲頭浪颭沙
おうしゅうとう なみ すなうごかす
  • 鸚鵡洲 … 湖北省武漢市武昌区黄鵠磯の西、長江の中にある中洲。『水経注』江水の条に「江の右岸は鸚鵡洲の南に当たる」(江之右岸當鸚鵡洲南)とある。ウィキソース「水經注/35」参照。また『方輿勝覧』鄂州の条に「鸚鵡洲は、江中に在り。黄祖が禰衡でいこうあやむる処なり。衡、鸚鵡をす、故に名づく」(鸚鵡洲、在江中。黄祖殺禰衡處。衡賦鸚鵡、故名)とある。ウィキソース「方輿勝覽 (四庫全書本)/卷28」参照。ウィキペディア【黄祖】【禰衡】参照。
  • 洲 … 『四部叢刊本』『四部備要本』では「舟」に作る。
  • 頭 … ほとり。
  • 浪 … 打ち寄せる川浪。
  • 沙 … 渚の砂。
  • 颭 … 風が物を揺らす。ここでは風が吹いて渚の砂を揺り動かしていること。『説文解字』巻十三下、風部に「風吹いて浪動くなり」(風吹浪動也)とある(新附字)。ウィキソース「說文解字/13」参照。
靑樓春望日將斜
青楼せいろうしゅんぼう  まさななめならんとす
  • 青楼 … 青楼に登って。青楼は、青く塗った高殿たかどの。女性の住む所とされる。ちなみに青楼には妓楼の意もあるが、ここではその意味ではない。江淹の「西洲曲」(『玉台新詠』巻五・宋版不収)に「おおとり飛んで西洲に満ち、郎を望んで青楼に上る」(鴻飛滿西洲、望郎上靑樓)とある。ウィキソース「西洲曲」参照。また『南斉書』東昏侯本紀に「世祖の興光楼上に青漆を施す、世に之を青楼と謂う」(世祖興光樓上施青漆、世謂之青樓)とある。ウィキソース「南齊書/卷7」参照。
  • 春望 … 春の景色を眺めれば。春の景色を見渡せば。
  • 日将斜 … 日は今しも西に傾こうとしている。陰鏗の「侯司空宅詠妓」(『玉台新詠』巻八・宋版不収)に「翠柳将に斜日ならんとす」(翠柳將斜日)とある。ウィキソース「侯司空宅詠妓」参照。
  • 将 … 「まさに~んとす」と読み、「今にも~しようとする」と訳す。再読文字。
銜泥燕子爭歸舍
どろふくえんあらそってしゃかえるも
  • 銜泥 … 泥を口にくわえる。燕が巣を作っていること。銜は、口にくわえる。ふくむ。
  • 銜 … 『楽府詩集』では「㘅」に作る。異体字。
  • 燕子 … つばめ。つばくらめ。子は、親しみを表す語。
  • 燕 … 『四部叢刊本』では「鷰」に作る。同義。
  • 争 … 我先にと争って。
  • 帰舎 … 巣に帰ってくる(のに)。舎は、家。宿。ここでは燕の巣を指す。
獨自狂夫不憶家
独自ひとり きょうのみいえおもわず
  • 独自 … ここでは二字で「ひとり~(のみ)」と読み、「ひとりだけ~」「ただ~だけ」と訳す。限定の意を示す。
  • 狂夫 … 妻が自分の夫のことを謙遜していう言葉。夫を罵っている言葉ではない。愚妻・豚児などと同じ。『列女伝』弁通伝・楚野弁女譚に「大夫曰く、なんぞ我に鄭に従わざるや、と。対えて曰く、既に狂夫の昭氏内に在る有り、と。遂に去る」(大夫曰、盍從我於鄭乎。對曰、既有狂夫昭氏在內矣。遂去)とある。ウィキソース「列女傳/卷6」参照。また李白の「かわって遠きに贈る」(『全唐詩』巻一百八十四)に「しょうと洛陽の人、狂夫は幽燕のかく」(妾本洛陽人、狂夫幽燕客)とある。ウィキソース「代贈遠」参照。
  • 不憶家 … 家のことなど気にもかけない。
歴代詩選
古代 前漢
後漢
南北朝
初唐 盛唐
中唐 晩唐
北宋 南宋
唐詩選
巻一 五言古詩 巻二 七言古詩
巻三 五言律詩 巻四 五言排律
巻五 七言律詩 巻六 五言絶句
巻七 七言絶句
詩人別
あ行 か行 さ行
た行 は行 ま行
や行 ら行