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楊柳枝詞(劉禹錫)

楊柳枝詞
楊(よう)柳(りゅう)枝(し)詞(し)
劉(りゅう)禹(う)錫(しゃく)
  • 七言絶句。濱・春・人(上平声真韻)。
  • ウィキソース「楊柳枝詞九首」「劉夢得文集 (四部叢刊本)/卷第九」参照。
  • 詩題 … 隋隄(ずいてい)(隋の煬帝(ようだい)が築いた運河の堤)の柳を主題とした歌曲。楊柳枝は、白居易が楽府題の「折楊柳」を基に、樊素・小蛮という二人の愛妾のために創作したもの。唐末の孟棨(もうけい)『本事詩』事感第二に「白尚書の姫人樊素は歌を善くし、妓人小蛮は舞を善くす。嘗て詩を為(つく)りて曰く、桜桃樊素の口、楊柳小蛮の腰、と。年既に高邁にして小蛮方に豊艶なり。因って楊柳の詞を為(つく)りて以て意を托す」(白尚書姫人樊素善歌、妓人小蠻善舞。嘗爲詩曰、櫻桃樊素口、楊柳小蠻腰。年旣髙邁而小蠻方豐艷。因爲楊柳之詞以托意)とある。ウィキソース「本事詩/2」参照。『全唐詩』『四部叢刊本』『四部備要本』では「楊柳枝詞九首其六」に作る。『楽府詩集』では「楊柳枝九首其六」に作る。『万首唐人絶句』では「楊柳枝詞十一首其六」に作る。『古今詩刪』『唐詩品彙』では「楊柳枝詞二首其一」に作る。『才調集』では「楊柳枝詞三首其二」に作る。
  • 張籍『唐張司業詩集』巻六(『四部叢刊 初編集部』所収)に「楊栁枝詞二首其一」として重出。「唐張司業詩集 (四部叢刊本)/卷第六」参照。
  • この詩は、隋の煬帝の旧跡を訪ね、往時を偲んだもの。白居易が創案した歌曲「折楊柳」に倣って作っている。
  • 劉禹錫 … 772~842。中唐の詩人。河南郡洛陽県(河南省洛陽市)の人。字(あざな)は夢得(ぼうとく)。貞元九年(793)、柳宗元とともに進士に及第。王叔文に連座して僻地に左遷された。太和二年(828)に長安に復帰。その後も都と地方の諸官を歴任。開成元年(836)、太子賓客となった。柳宗元とは無二の親友。晩年は白居易とも親交があり、白居易は彼を「詩豪」と称賛した。『劉賓客文集』三十巻、外集十巻がある。ウィキペディア【劉禹錫】参照。
煬帝行宮汴水濱
煬帝(ようだい)の行宮(あんぐう) 汴水(べんすい)の浜(ひん)
  • 煬帝 … 569~618。隋の第二代皇帝(在位604~617)。文帝の第二子。姓名は楊広。兄を失脚させ、父の文帝を殺して即位したという。大運河を開通させたが、三度におよぶ高句麗遠征に失敗、各地に反乱が起こり、ついに揚州の離宮で臣下に殺された。ウィキペディア【煬帝】参照。
  • 行宮 … 天子が行幸の際に泊まる仮宮(かりみや)。ここでは汴水のほとりの離宮を指す。行在(あんざい)。行在所(あんざいしょ)。行所(あんしょ)。
  • 汴水 … 汴(べん)河(が)に同じ。黄河と淮水(わいすい)とをつなぐ運河。南北交通の要路であった。隋の煬帝(ようだい)は大業年間(605~618)、この川の岸に堤防を築き、楊柳を植え、四十箇所余りの離宮を置いて行楽の地とした。
  • 浜 … 水ぎわ。ほとり。
數株楊柳不勝春
数株(すうしゅ)の楊(よう)柳(りゅう) 春(はる)に勝(た)えず
  • 数株 … 数かぶ。数本。株は、草木を数える単位。
  • 株 … 『全唐詩』では「枝」に作り、「一作株」と注する。
  • 楊柳 … 柳の総称。楊は、カワヤナギ。柳は、シダレヤナギ。南朝梁の簡文帝の楽府「折楊柳」(『玉台新詠』巻七、『楽府詩集』巻二十二)に「楊柳乱れて糸を成し、攀折(はんせつ)す上春の時」(楊柳亂成絲、攀折上春時)とある。攀折は、枝を引き寄せて折ること。上春は、陰暦の正月。孟春に同じ。ウィキソース「折楊柳 (蕭綱)」参照。
  • 楊 … 『全唐詩』には「一作殘」と注する。『四部叢刊本』『四部備要本』『楽府詩集』『万首唐人絶句』『古今詩刪』『唐詩品彙』『唐詩別裁集』『才調集』では「殘」に作る。
  • 不勝春 … 春の風情に堪えられない。春の思いに堪えかねる風情がある。春の風情が深いさま。不勝は、不堪に同じ。
晚來風起花如雪
晩来(ばんらい)風(かぜ)起(おこ)って 花(はな) 雪(ゆき)の如(ごと)し
  • 晩来 … 夕方。日暮れがた。来は、時をあらわす語につく助辞。
  • 晩 … 『全唐詩』には「一作昨」と注する。『楽府詩集』では「昨」に作る。
  • 花 … 柳の花。実は柳(りゅう)絮(じょ)(柳の白い綿毛)を指す。
  • 如雪 … 雪のように白い。柳の花は黄色いので、雪のようには見えない。
飛入宮牆不見人
飛(と)んで宮牆(きゅうしょう)に入(い)るも人(ひと)を見(み)ず
  • 宮牆 … 屋敷の周りの垣根。ここでは行宮跡の土塀を指す。宮は、家の意で、必ずしも宮殿とは限らない。
  • 不見人 … 今や人影はひとりも見えない。かつて華やかだった宮女の姿も見かけない。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻七(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻三百六十五(排印本、中華書局、1960年)
  • 『劉夢得文集』巻九(『四部叢刊 初編集部』所収)
  • 『劉賓客集』巻二十七(『四部備要 集部』所収、中華書局)
  • 趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻十七(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)
  • 『楽府詩集』巻八十一・近代曲辞(北京図書館蔵宋刊本影印、中津濱渉『樂府詩集の研究』所収)
  • 『唐詩品彙』巻五十一([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
  • 『古今詩刪』巻二十二(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、汲古書院)
  • 『唐詩別裁集』巻二十([清]沈徳潜編、乾隆二十八年教忠堂重訂本縮印、中華書局、1975年)
  • 『才調集』巻五(傅璇琮編撰『唐人選唐詩新編』、陝西人民教育出版社、1996年)
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