楊柳枝詞(劉禹錫)
楊柳枝詞
楊柳枝詞
楊柳枝詞
- 〔テキスト〕 『唐詩選』巻七、『全唐詩』巻三百六十五、『劉夢得文集』巻九(『四部叢刊 初編集部』所収)、『劉賓客集』巻二十七(『四部備要 集部』所収)、『楽府詩集』巻八十一、趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻十七(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)、『古今詩刪』巻二十二(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、63頁)、『唐詩品彙』巻五十一、『唐詩別裁集』巻二十、『才調集』巻五、『唐人万首絶句選』巻四、他
- 七言絶句。濱・春・人(平声真韻)。
- ウィキソース「楊柳枝詞九首」「劉夢得文集 (四部叢刊本)/卷第九」参照。
- 詩題 … 隋隄(隋の煬帝が築いた運河の堤)の柳を主題とした歌曲。楊柳枝は、白居易が楽府題の「折楊柳」を基に、樊素・小蛮という二人の愛妾のために創作したもの。孟棨の『本事詩』事感第二に「白尚書の姫人樊素は歌を善くし、妓人小蛮は舞を善くす。嘗て詩を為りて曰く、桜桃樊素の口、楊柳小蛮の腰、と。年既に高邁にして小蛮方に豊艶なり。因って楊柳の詞を為りて以て意を托す」(白尚書姫人樊素善歌、妓人小蠻善舞。嘗爲詩曰、櫻桃樊素口、楊柳小蠻腰。年旣髙邁而小蠻方豐艷。因爲楊柳之詞以托意)とある。ウィキソース「本事詩/2」参照。『全唐詩』『四部叢刊本』『四部備要本』では「楊柳枝詞九首 其六」に作る。『楽府詩集』では「楊柳枝九首 其六」に作る。『万首唐人絶句』では「楊柳枝詞十一首 其六」に作る。『古今詩刪』『唐詩品彙』では「楊柳枝詞二首 其一」に作る。『才調集』『唐人万首絶句選』では「楊柳枝詞三首 其二」に作る。
- 張籍『唐張司業詩集』巻六(『四部叢刊 初編集部』所収)に「楊栁枝詞二首 其一」として重出。「唐張司業詩集 (四部叢刊本)/卷第六」参照。
- この詩は、隋の煬帝の旧跡を訪ね、往時を偲んだもの。白居易が創案した歌曲「折楊柳」に倣って作っている。
- 劉禹錫 … 772~842。中唐の詩人。字は夢得。中山(河北省)の人。貞元九年(793)、柳宗元とともに進士に及第。王叔文らの政治改革に加わり、僻地に左遷された。太和二年(828)に長安に復帰。その後も都と地方の諸官を歴任。開成元年(836)、太子賓客となった。柳宗元とは無二の親友。晩年は白居易とも親交があり、白居易は彼を「詩豪」と称賛した。『劉賓客文集』30巻、『外集』10巻がある。ウィキペディア【劉禹錫】参照。
煬帝行宮汴水濱
煬帝の行宮 汴水の浜
- 煬帝 … 569~618。隋の第二代皇帝(在位604~617)。文帝の第二子。姓名は楊広。兄を失脚させ、父の文帝を殺して即位したという。大運河を開通させたが、三度におよぶ高句麗遠征に失敗、各地に反乱が起こり、ついに揚州の離宮で臣下に殺された。ウィキペディア【煬帝】参照。
- 行宮 … 天子が行幸の際に泊まる仮宮。ここでは汴水のほとりの離宮を指す。行在。行在所。行所。
- 汴水 … 汴河に同じ。黄河と淮水とをつなぐ運河。南北交通の要路であった。隋の煬帝は大業年間(605~618)、この川の岸に堤防を築き、楊柳を植え、四十箇所余りの離宮を置いて行楽の地とした。
- 浜 … 水ぎわ。ほとり。
數株楊柳不勝春
数株の楊柳 春に勝えず
- 数株 … 数かぶ。数本。株は、草木を数える単位。
- 株 … 『全唐詩』では「枝」に作り、「一作株」とある。
- 楊柳 … 柳の総称。楊は、カワヤナギ。柳は、シダレヤナギ。
- 楊 … 『全唐詩』には「一作殘」とある。『四部叢刊本』『四部備要本』『楽府詩集』『万首唐人絶句』『古今詩刪』『唐詩品彙』『唐詩別裁集』『才調集』『唐人万首絶句選』では「殘」に作る。
- 不勝春 … 春の風情に堪えられない。春の思いに堪えかねる風情がある。春の風情が深いさま。不勝は、不堪に同じ。
晚來風起花如雪
晩来風起って 花 雪の如し
- 晩来 … 夕方。日暮れがた。来は、時をあらわす語につく助辞。
- 晩 … 『全唐詩』には「一作昨」とある。『楽府詩集』では「昨」に作る。
- 花 … 柳の花。実は柳絮(柳の白い綿毛)を指す。
- 如雪 … 雪のように白い。柳の花は黄色いので、雪のようには見えない。
飛入宮牆不見人
飛んで宮牆に入るも人を見ず
- 宮牆 … 屋敷の周りの垣根。ここでは行宮跡の土塀を指す。宮は、家の意で、必ずしも宮殿とは限らない。
- 不見人 … 今や人影はひとりも見えない。かつて華やかだった宮女の姿も見かけない。
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