寄楊侍御郎(包何)
寄楊侍御
楊侍御に寄す
楊侍御に寄す
- 〔テキスト〕 『唐詩選』巻七、『全唐詩』巻二百五(包佶の作)、『全唐詩』巻二百八、『包何集』(『唐五十家詩集』所収)、『唐詩品彙』巻五十、趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻二十七(包佶の作、万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)、『古今詩刪』巻二十二(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、63頁)、『文苑英華』巻二百五十三、他
- 七言絶句。時・遺・絲(平声支韻)。
- ウィキソース「寄楊侍御 (包何)」「寄楊侍御 (包佶)」参照。
- 詩題 … 『全唐詩』(巻二百八、包何の作)には、題下に「一作包佶詩」とある。『全唐詩』(巻二百五、包佶の作)には、題下に「一作包何詩」とある。
- 楊 … 楊某。人物については不明。『登科記考』巻九、天宝七載(748)の条に「進士二十四人、楊誉状元」とあり、包何と一緒に及第した状元(首席合格)の楊誉(生卒年不詳)である可能性が高い。しかし、弟の包佶が進士に及第した天宝六載(747)の状元も楊護(生卒年不詳)という人物であり、どちらとも言えない。ウィキメディア・コモンズ『登科記考』巻九「96頁」「86頁」参照。ウィキペディア【唐朝狀元列表】(中文)参照。
- 侍御 … 官名。侍御史。宮中の文書をつかさどり、官吏の違法を摘発する検察官のこと。
- 寄 … 詩を人に託して送り届けること。「贈」は、詩を直接手渡すこと。
- この詩は、順調に昇進した同僚の楊侍御に贈って、いっこうに出世しないわが身の不遇を訴えたもの。
- 包何 … 生卒年不詳。中唐の詩人。潤州延陵(江蘇省丹陽市の西南)の人。字は幼嗣。包融の子。弟の包佶とともに詩名があり、二包と称された。天宝七載(748)、進士に及第。大暦年間(766~779)、起居舎人で官を終えた。父の友人であった孟浩然に師事して詩を学んだ。『全唐詩』に十九首を収める。ウィキペディア【包何】(中文)参照。
一官何幸得同時
一官 何の幸ぞ 時を同じうするを得たる
- 一官 … 一つの官職。一官職。ここでは一官職に就くことができたということ。『荘子』逍遥遊篇に「故に夫の知は一官に効あり、行いは一郷に比し、徳は一君に合し、而は一国に徴ある者、其の自ら視るや、亦た此の若し」(故夫知效一官、行比一鄉、德合一君、而徵一國者、其自視也、亦若此矣)とある。而は、能に同じ。才能のこと。ウィキソース「莊子/逍遙遊」参照。『塩鉄論』刺権篇に「一人職を失し、一官治まらざるは、皆公卿の累なり」(一人失職、一官不治、皆公卿之累也)とある。ウィキソース「鹽鐵論/卷02」参照。南朝梁の何遜の「族人の秣陵の兄弟に贈る」(『古詩紀』巻九十三)に「十載猶お先職、一官乃ち真に任す」(十載猶先職、一官乃任真)とある。ウィキソース「古詩紀 (四庫全書本)/卷093」参照。
- 何幸 … なんと幸せなことであったか。
- 得同時 … 君と同時に任官することができた。
十載無媒獨見遺
十載 媒無くして独り遺さる
- 十載 … (あれから)十年。載は、年。歳と同じで、年数を表す言葉。なお、元号の表記では、天宝三載(744)から天宝十五載(756)、至徳元載(756)から至徳三載(758)まで「年」が「載」に改められ、次の乾元元年(758)から「年」に戻された。
- 媒 … 自分を推薦してくれる仲介者。『楚辞』九章の「抽思」に「既に惸独にして群せず、又良媒の其の側に在る無し」(既惸獨而不群兮、又無良媒在其側)とある。惸独は、孤独。ウィキソース「楚辭/九章」参照。
- 独見遺 … ひとり昇進から取り残されてしまった。
- 見 … 「る」「らる」と読み、「~される」と訳す。受身の意を示す。
今日莫論腰下組
今日 論ずること莫かれ 腰下の組
- 莫論 … とやかく言ってくれるな。『全唐詩』『唐詩品彙』『唐五十家詩集本』『万首唐人絶句』『文苑英華』では「不論」に作る。
- 腰下組 … 腰に下げた印綬(官吏に任命された者が、天子から与えられた印章とその紐)。組は、組紐。ここでは印綬の色を指す。位階によって紐の色が異なり、金印紫綬、銀印青綬、銅印黒綬、銅印黄綬などがある。『続漢書』輿服志(『後漢書』に合刻)に「乗輿は黄赤の綬……諸侯王は赤綬……諸国貴人相国は皆緑綬……公侯将軍は紫綬……九卿中二千石二千石は青綬……千石六百石は黒綬……四百石三百石二百石は黄綬……百石は青紺綬」(乘輿黃赤綬……諸侯王赤綬……諸國貴人相國皆綠綬……公侯將軍紫綬……九卿中二千石二千石靑綬……千石六百石黑綬……四百石三百石二百石黃綬……百石靑紺綬)とある。ウィキソース「後漢書/卷120」参照。
請君看取鬢邊絲
請う 君 看取せよ 鬢辺の糸
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