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少年行(呉象之)

少年行
少(しょう)年(ねん)行(こう)
呉(ご)象(しょう)之(し)
  • 七言絶句。津・人・貧(上平声真韻)。
  • ウィキソース「全唐詩/卷777」参照。
  • 詩題 … 少年行は、楽府題の一つ。若者の歌。行は、歌・曲の意。『楽府古題要解』巻下、結客少年の条に「生を軽んじ義を重んじ、慷慨以て功名を立つるを言うなり」(言輕生重義、慷慨以立功名也)とある。ウィキソース「樂府古題要解」参照。
  • この詩は、遊俠の若者の意気を詠んだもの。
  • 呉象之 … 伝記不詳。『万首唐人絶句』では盛唐に分類されている。『全唐詩』に二首収める。
承恩借獵小平津
恩(おん)を承(う)けて借(しゃ)猟(りょう)す 小(しょう)平津(へいしん)
  • 承恩 … 天子の恩寵をこうむる。
  • 借猟 … 猟(りょう)場(ば)を借りて狩りをすること。
  • 小平津 … 河南省鞏県(今の鞏義市)の西北、孟津県の北にあった黄河沿いの渡し場。天子の御猟場がこの付近にあったと思われる。漢の霊帝は黄巾の賊に備えるため、八関都尉を置いた。ここは、その八関の一つ。ウィキペディア【洛陽八関】参照。『後漢書』孝霊帝紀の注に「小平津は今の鞏県の西北に在り」(小平津在今鞏縣西北)とある。ウィキソース「後漢書 (四庫全書本)/卷008」参照。また『読史方輿紀要』河南、孟津県に「小平城は、今の県西北に在り。旧志に云く、漢の平陰県の城北、河津に有り、小平津と曰う。津上に城有り、霊帝の時の河南八関の一つなり」(小平城、在今縣西北。舊志云、漢平陰縣城北有河津、曰小平津。津上有城、靈帝時河南八關之一也)とある。ウィキソース「讀史方輿紀要/卷四十八」参照。
使氣常遊中貴人
気(き)を使(つか)いて常(つね)に遊(あそ)ぶ 中(ちゅう)貴(き)人(じん)
  • 使気 … 意気にまかせて任侠のふるまいをすること。『漢書』灌夫伝に「夫(ぶ)、人(ひと)と為(な)り剛(ごう)直(ちょく)にして、酒(さけ)を使(つか)う」(夫爲人剛直、使酒)とある。為人は、人がもっている性質。ウィキソース「漢書/卷052」参照。その注に「師古(しこ)曰(いわ)く、酒(さけ)を使(つか)うとは、酒(さけ)に因(よ)りて気(き)を使(つか)うなり」(師古曰、使酒、因酒而使氣也)とある。『漢書評林』巻五十二(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 常遊 … いつも付き合う。いつも交際する。
  • 中貴人 … 宮中で地位の高い内臣(天子の側近に仕える臣)。普通は宦官を指す。『史記』李広伝に「天(てん)子(し)、中(ちゅう)貴(き)人(じん)をして広(こう)に従(したが)い勒(ろく)して兵(へい)を習(なら)い匈(きょう)奴(ど)を撃(う)たしむ」(天子使中貴人從廣勒習兵擊匈奴)とあり、その注(集解)に「内官の幸貴なる者なり」(內官之幸貴者)とある。内官は、宦官。ウィキソース「史記三家註/卷109」参照。
一擲千金渾是膽
一擲(いってき)千金(せんきん) 渾(す)べて是(こ)れ胆(たん)
  • 一擲千金 … 一度に千金を投げ出す。一つのことに思い切って大金をつぎ込むこと。擲は、惜しげもなく投げ捨てること。『宋書』武帝本紀上に「劉(りゅう)毅(き)は家(いえ)に担石(たんせき)の儲(ちょ)無(な)けれども、樗(ちょ)蒲(ぼ)百(ひゃく)万(まん)を一擲(いってき)す」(劉毅家無擔石之儲、樗蒲一擲百萬)とある。担石之儲は、僅かな蓄え。樗蒲は、ばくち。ウィキソース「宋書/卷1」参照。
  • 渾 … すべて。全部。すっかり。
  • 渾是胆 … すべて男(おとこ)気(ぎ)の為せる業(わざ)。胆は、胆力。度胸。「蜀志」趙雲伝の注に「子(し)竜(りゅう)は一身(いっしん)都(すべ)て是(こ)れ胆(たん)なり」(子龍一身都是膽也)とある。子竜は、趙雲の字。ウィキソース「三國志/卷36」参照。
家無四壁不知貧
家(いえ)に四(し)壁(へき)無(な)きも貧(ひん)を知(し)らず
  • 家無四壁 … 家に四方の壁もないほど非常に貧しい様子。『史記』司馬相如伝に「相(しょう)如(じょ)乃(すなわ)ち人(ひと)をして重(おも)く文君(ぶんくん)の侍(じ)者(しゃ)に賜(たま)い殷勤(いんぎん)を通(つう)ぜしむ。文君(ぶんくん)、夜(よる)亡(に)げて相(しょう)如(じょ)に奔(はし)る。相(しょう)如(じょ)乃(すなわ)ち与(とも)に馳(は)せて成(せい)都(と)に帰(かえ)る。家(か)居(きょ)徒(た)だ四(し)壁(へき)立(た)つのみ」(相如乃使人重賜文君侍者通殷勤。文君夜亡奔相如。相如乃與馳歸成都。家居徒四壁立)とあるのに基づく。ウィキソース「史記/卷117」参照。
  • 無 … 『古今詩刪』では「徒」に作る。
  • 不知貧 … 貧乏など一向に苦にしない。貧乏など気にもしない。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻七(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻七百七十七(排印本、中華書局、1960年)
  • 『文苑英華』巻一百九十四(影印本、中華書局、1966年)
  • 趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻十二(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)
  • 『唐詩品彙』巻四十八([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
  • 『古今詩刪』巻二十二(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、汲古書院)
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