洛陽客舎逢祖詠留宴(蔡希寂)
洛陽客舍逢祖詠留宴
洛陽の客舎にて祖詠に逢い、留宴す
洛陽の客舎にて祖詠に逢い、留宴す
- 〔テキスト〕 『唐詩選』巻七、『全唐詩』巻一百十四、『唐詩品彙』巻四十八、趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻十二(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)、『古今詩刪』巻二十二(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、60頁)、『文苑英華』巻二百十四、他
- 七言絶句。城・迎・情(平声庚韻)。
- ウィキソース「洛陽客舍逢祖詠留宴」参照。
- 洛陽 … 今の河南省洛陽市。唐代の副都として栄えた。東都とも呼ばれた。ウィキペディア【洛陽市】参照。
- 客舎 … 旅館。宿屋。
- 祖詠 … 699~746?。盛唐の詩人。洛陽の人。王維とは幼友達。開元十二年(724)、進士に及第したが、生涯にわたり仕官せず、汝水(河南省の川)のほとりに隠棲し、樵漁の生活で終わったという。ウィキペディア【祖詠】参照。
- 留 … 『唐詩選』『唐詩品彙』『万首唐人絶句』では「畱」に作る。異体字。
- 留宴 … 人を引きとどめて、酒を酌み交わすこと。
- 蔡希寂 … 生没年不詳。盛唐の詩人。曲阿(江蘇省丹陽市)の人。監察御史であった蔡希周(688~747)の弟。渭南(陝西省渭南市)の尉となった。『全唐詩』に五首収める。
綿綿漏鼓洛陽城
綿綿たる漏鼓 洛陽城
- 綿綿 … 長く続いて絶えないさま。『詩経』大雅・緜の詩に「緜緜たる瓜瓞、民の初めて生ずる、土より漆に沮く」(緜緜瓜瓞、民之初生、自土沮漆)とある。緜は、綿の異体字。瓜瓞は、子孫が長く続いて繁栄すること。瓞は、小さなうり。沮は、徂(ゆく)の仮借。ウィキソース「詩經/緜」参照。
- 漏鼓 … 漏刻(水時計)の時刻を知らせるために鳴らす太鼓。『全唐詩』『唐詩品彙』『万首唐人絶句』『文苑英華』では「鐘漏」に作る。こちらは、時を知らせる鐘と漏刻(水時計)の音。
- 洛陽城 … 洛陽の町。城は、町全体を囲む城壁。
客舍平居絕送迎
客舎 平居 送迎を絶つ
- 客舎 … 旅館。宿屋。
- 平居 … 普段。日頃。平生。『全唐詩』『唐詩品彙』『万首唐人絶句』『文苑英華』では「貧居」に作る。こちらは、貧しい暮らし。謝霊運の「魏の太子の鄴中集の詩に擬す八首 劉楨」(『文選』巻三十)に「貧居して里閈に晏んじ、少小にして東平に長ず」(貧居晏里閈、少小長東平)とある。里閈は、村里。ウィキソース「昭明文選/卷30」参照。
- 絶送迎 … 客を送り迎えすることがない。つまり訪問客がないこと。人との交際がないこと。『史記』酷吏伝に「縦の関に至るに及び、寧成側行して送迎す」(及縱至關、寧成側行送迎)とある。縦は、人名。義縦。関は、函谷関。側行は、道の真ん中を避けて傍らを歩くこと。恭敬の意を表す。ウィキソース「史記/卷122」参照。ウィキペディア【義縦】【寧成】参照。
逢君買酒因成醉
君に逢って酒を買い 因って酔いを成す
- 買 … 『全唐詩』『唐詩品彙』『万首唐人絶句』『古今詩刪』『文苑英華』では「貰」に作る。こちらは、「貰る」と読む。代金を後払いにして品物を買うこと。つけで買うこと。
- 因 … 「よって」「よりて」と読み、「そういうわけで」「それがもとになって」と訳す。前節をうけて、後節の結果を導く意を示す。
- 成酔 … 酔ってしまった。
醉後焉知世上情
酔後 焉んぞ知らん 世上の情
- 酔後 … 酔ってしまえば。
- 焉知 … どうして気になろうか、全く気にならない。こちらの知ったことじゃない。
- 焉 … 「いずくんぞ~ん(や)」と読む。「どうして~であろうか、いや~でない」と訳す。反語の形。
- 世上情 … 俗世間のつまらぬ義理人情。
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