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洛陽客舎逢祖詠留宴(蔡希寂)

洛陽客舍逢祖詠留宴
洛陽(らくよう)の客舎(かくしゃ)にて祖(そ)詠(えい)に逢(あ)い、留宴(りゅうえん)す
蔡(さい)希(き)寂(せき)
  • 七言絶句。城・迎・情(下平声庚韻)。
  • ウィキソース「洛陽客舍逢祖詠留宴」参照。
  • 洛陽 … 今の河南省洛陽市。唐代の副都として栄えた。東都とも呼ばれた。ウィキペディア【洛陽市】参照。『読史方輿紀要』河南、河南府に「洛陽の故城は、府の東北二十里に在り。周の顕王以後、都(みやこ)する所なり」(洛陽故城、在府東北二十里。周顯王以後所都也)とある。ウィキソース「讀史方輿紀要/卷四十八」参照(原文に異同あり)。
  • 客舎 … 旅館。宿屋。『史記』商君列伝に「商君亡(に)げ、関(かん)下(か)に至り、客舎に舎(しゃ)せんと欲す」(商君兦、至關下、欲舍客舍)とある。商君は、商鞅。戦国時代、法家の政治家。秦の孝公に仕えた。関下は、函谷関の付近。舎は、泊まる。ウィキソース「史記/卷068」参照。また、南朝梁の費(ひ)昶(ちょう)の楽府「行路難二首」(『玉台新詠』巻九)の第一首に「君見ずや 長安客舎の門、倡(しょう)家(か)の少女 名は桃根(とうこん)」(君不見長安客舍門、倡家少女名桃根)とある。倡家は、娼家に同じ。遊女屋。ウィキソース「行路難 (費昶)」参照。
  • 祖詠 … 699~746?。盛唐の詩人。洛陽(河南省洛陽市)の人。字(あざな)は不詳。王維とは幼友達。開元十二年(724)、進士に及第したが、生涯にわたり仕官せず、汝水(じょすい)(河南省の川)のほとりに隠棲し、樵(しょう)漁(ぎょ)の生活で終わったという。ウィキペディア【祖詠】参照。
  • 留宴 … 人を引きとどめて、酒を酌み交わすこと。
  • 蔡希寂 … 生没年不詳。盛唐の詩人。曲阿(江蘇省丹陽市)の人。監察御史であった蔡希周(688~747)の弟。渭南(陝西省渭南市)の尉となった。『全唐詩』に五首収める。
綿綿漏鼓洛陽城
綿綿(めんめん)たる漏(ろう)鼓(こ) 洛陽(らくよう)城(じょう)
  • 綿綿 … 長く続いて絶えないさま。『詩経』大雅・緜(めん)に「緜緜(めんめん)たる瓜(か)瓞(てつ)、民(たみ)の初(はじ)めて生(しょう)ずる、土(ど)より漆(しつ)に沮(ゆ)く」(緜緜瓜瓞、民之初生、自土沮漆)とある。瓜瓞は、子孫が長く続いて繁栄すること。瓞は、小さなうり。沮は、徂(ゆく)の仮借。ウィキソース「詩經/緜」参照。
  • 漏鼓 … 漏刻(水時計)の時刻を知らせるために鳴らす太鼓。『全唐詩』『唐詩品彙』『万首唐人絶句』『文苑英華』では「鐘漏」に作る。こちらは、時を知らせる鐘と漏刻(水時計)の音。
  • 洛陽城 … 洛陽の町。城は、町全体を囲む城壁。
客舍平居絕送迎
客舎(かくしゃ) 平居(へいきょ) 送迎(そうげい)を絶(た)つ
  • 客舎 … 旅館。宿屋。
  • 平居 … 普段。日頃。平生(へいぜい)。『全唐詩』『唐詩品彙』『万首唐人絶句』『文苑英華』では「貧居」に作る。こちらは、貧しい暮らし。劉宋の謝霊運の詩「魏(ぎ)の太(たい)子(し)の鄴中集(ぎょうちゅうしゅう)の詩(し)に擬(ぎ)す八首(はっしゅ) 劉(りゅう)楨(てい)」(『文選』巻三十)に「貧居(ひんきょ)して里(り)閈(かん)に晏(やす)んじ、少小(しょうしょう)にして東平(とうへい)に長(ちょう)ず」(貧居晏里閈、少小長東平)とある。里閈は、村里。ウィキソース「昭明文選/卷30」参照。
  • 絶送迎 … 客を送り迎えすることがない。つまり訪問客がないこと。人との交際がないこと。『史記』酷吏伝に「縦(しょう)の関(かん)に至(いた)るに及(およ)び、寧成(ねいせい)側行(そっこう)して送迎(そうげい)す」(及縱至關、寧成側行送迎)とある。縦は、人名。義縦。関は、函谷関。側行は、道の真ん中を避けて傍らを歩くこと。恭敬の意を表す。ウィキソース「史記/卷122」参照。ウィキペディア【義縦】【寧成】参照。
逢君買酒因成醉
君(きみ)に逢(あ)って酒(さけ)を買(か)い 因(よ)って酔(よ)いを成(な)す
  • 買 … 『全唐詩』『唐詩品彙』『万首唐人絶句』『古今詩刪』『文苑英華』では「貰」に作る。こちらは、「貰(おきの)る」と読む。代金を後払いにして品物を買うこと。つけで買うこと。
  • 因 … 「よって」「よりて」と読み、「そういうわけで」「それがもとになって」と訳す。前節をうけて、後節の結果を導く意を示す。
  • 成酔 … 酔ってしまった。
醉後焉知世上情
酔(すい)後(ご) 焉(いずく)んぞ知(し)らん 世(せ)上(じょう)の情(じょう)
  • 酔後 … 酔ってしまえば。
  • 焉知 … どうして気になろうか、全く気にならない。こちらの知ったことじゃない。
  • 焉 … 「いずくんぞ~ん(や)」と読む。「どうして~であろうか、いや~でない」と訳す。反語の形。
  • 世上情 … 俗世間のつまらぬ義理人情。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻七(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻一百十四(排印本、中華書局、1960年)
  • 『文苑英華』巻二百十四(影印本、中華書局、1966年)
  • 趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻十二(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)
  • 『唐詩品彙』巻四十八([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
  • 『古今詩刪』巻二十二(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、汲古書院)
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