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少年行(王維)

少年行
しょうねんこう
おう
  • 七言絶句。郎・陽・香(平声陽韻)。
  • ウィキソース「少年行 (出身仕漢羽林郎)」参照。
  • 少年行 … 楽府題。少年の歌。行は、歌・曲の意。『楽府古題要解』巻下、結客少年の条に「生を軽んじ義を重んじ、慷慨以て功名を立つるを言うなり」(言輕生重義、慷慨以立功名也)とある。ウィキソース「樂府古題要解」参照。『全唐詩』『静嘉堂本』『蜀刊本』『四部叢刊本』『顧起経注本』『顧可久注本』『趙注本』『万首唐人絶句』『文苑英華』では「少年行四首其二」に作る。『楽府詩集』では「少年行四首其三」に作る。『唐詩品彙』『唐詩解』では「少年行二首其二」に作る。
  • 王維 … 699?~761。盛唐の詩人、画家。太原(山西省)の人。あざなきつ。開元七年(719)、進士に及第。安禄山の乱で捕らえられたが事なきを得、乱後は粛宗に用いられてしょうじょゆうじょう(書記官長)まで進んだので、王右丞とも呼ばれる。また、仏教に帰依したため、詩仏と称される。『王右丞文集』十巻がある。ウィキペディア【王維】参照。
出身仕漢羽林郎
しゅっしん かんつかう りんろう
  • 出身 … 官職に就くこと。『漢書』酷吏伝、しつの条に「常に称して曰く、已に親に背きて身をだせり。もとより当に職に奉じて節に官下に死すべし。終に妻子をかえりみず、と」(常稱曰、已背親而出身。固當奉職死節官下。終不顧妻子矣)とある。ウィキソース「漢書/卷090」参照。また後漢末の禰衡でいこう「鸚鵡の賦」(『文選』巻十三)に「おんなは家を辞して人にき、臣は身をだして主に事う」(女辭家而適人、臣出身而事主)とある。ウィキソース「鸚鵡賦 (禰衡)」参照。また南朝宋の鮑照の詩「東武吟」(『文選』巻二十八)に「僕はと寒郷の士、身をだして漢恩をこうむる」(僕本寒郷士、出身蒙漢恩)とある。ウィキソース「東武吟 (鮑照)」参照。
  • 仕漢 … 唐の王朝に仕えることを、漢の王朝に仕えるといった。唐の詩人の常套表現。南朝梁の劉孝勝の詩「升天行」(『楽府詩集』巻六十三)に「少翁倶に漢に仕え、韓ついはなはだ秦に入る」(少翁倶仕漢、韓終苦入秦)とある。ウィキソース「樂府詩集/063卷」参照。また北魏の常景「四君を讃する詩四首」(其一 司馬相如)に「梁に遊びて仁を好むと雖も、漢に仕えて常に病と称す」(遊梁雖好仁、仕漢常稱病)とある。ウィキソース「古詩紀 (四庫全書本)/卷118」参照。
  • 羽林郎 … 官名。天子の警護にあたる近衛兵。『漢書』宣帝紀、応劭の注に「天に羽林大将軍の星有り。林とは林木のごとくの盛んなるにたとう。羽は羽翼げきの意にして、故に以て武官に名づく」(天有羽林大将軍星。林諭若林木之盛。羽羽翼鷙撃之意、故以名武官焉)とある。『漢書評林』巻八(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『漢書』百官公卿表、郎中令の条に「羽林は送従を掌ること、期門に次ぐ。武帝の太初元年に初めて置く。名づけて建章営騎と曰い、後にあらためて羽林騎と名づく。又た軍に従い事に死するの子孫を取りて羽林官に養い、教うるに五兵を以てし、号して羽林孤児と曰う」(羽林掌送從、次期門。武帝太初元年初置。名曰建章營騎、後更名羽林騎。又取從軍死事之子孫養羽林官、敎以五兵、號曰羽林孤兒)とある。ウィキソース「漢書/卷019」参照。また『後漢書』百官志、羽林中郎将の条に「羽林中郎将は、二千石に比す。羽林郎は、三百石に比す」(羽林中郎將、比二千石。羽林郎、比三百石)とあり、その注に「宿衛侍従を掌す。常に漢陽・隴西・安定・北地・上郡・西河の凡て六郡の良家を選んで補す」(掌宿衞侍從。常選漢陽、隴西、安定、北地、上郡、西河凡六郡良家補)とある。ウィキソース「後漢書/卷115」参照。
初隨驃騎戰漁陽
はじめてひょうしたがって漁陽ぎょようたたか
  • 驃騎 … 漢代の将軍の称号の一つ。驃騎将軍の略。なお、驃騎といえば霍去病かくきょへいを指す。『史記』霍去病伝に「元狩げんしゅ二年春、冠軍侯去病を以て驃騎将軍と為す。万騎をひきいて隴西より出でて、功有り。……去病に二千戸をほうず」(元狩二年春、以冠軍侯去病爲驃騎將軍。將萬騎出隴西、有功。……益封去病二千戶)とある。ウィキソース「史記/卷111」参照。
  • 漁陽 … 地名。秦のときに置かれた郡名。今の北京市の東北。ウィキペディア【漁陽郡】参照。『読史方輿紀要』北直二、順天府、薊州の条に「隋末、始め漁陽郡を無終に移し、改めて漁陽県を置く。唐初、幽州に属す。武后の時、営州は契丹におとしいれられ、治めて漁陽に寄す。神龍の初め、県は改めて営州に属す。開元四年、復た幽州に属す。十八年、薊州に治を置く。是れより州郡皆此を治む」(隋末、始移漁陽郡於無終、改置漁陽縣。唐初屬幽州。武后時營州陷於契丹、寄治漁陽。神龍初、縣改屬營州。開元四年復屬幽州。十八年置薊州治焉。自是州郡皆治此)とある。ウィキソース「讀史方輿紀要/卷十一」参照。
孰知不向邊庭苦
たれらん 辺庭へんていむかってくるしまざるを
  • 辺庭 … 辺境地方。匈奴には南庭と北庭とがあった。南朝梁の呉均「入関」詩に「げき 辺庭より起こり、烽火 乱るること蛍の如し」(羽檄起邊庭、烽火亂如螢)とある。羽檄は、緊急を知らせる文書。ウィキソース「樂府詩集/021卷」参照。
  • 庭 … 『顧可久注本』では「廷」に作る。同義。
  • 苦 … 『全唐詩』『顧起経注本』『趙注本』『文苑英華』には「一作死」とある。
縱死猶聞俠骨香
たとすともきょうこつかんばしきをかしめん
  • 俠骨香 … 義俠に殉じて骨となること。俠骨は、俠気の気骨。義俠心のある性質。香は、 義俠に殉じた骨は芳香を放つということ、転じて死後芳名が伝わること。西晋の張華の詩「博陵王宮俠曲二首其二」に「生きて命子に従って遊び、死して俠骨のかんばしきを聞く」(生從命子遊、死聞俠骨香)とある。ウィキソース「樂府詩集/067卷」参照。また李白の詩「俠客行」にも「たとい死すとも俠骨香り、世上のえいたるにじず」(縱死俠骨香、不慙世上英)とある。ウィキソース「俠客行 (李白)」参照。
  • 聞 … ここでは、匂うこと。匂いを嗅ぐこと。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻七(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻一百二十八(中華書局、1960年)
  • 『王右丞文集』巻一(静嘉堂文庫蔵、略称:静嘉堂本)
  • 『王摩詰文集』巻一(書韻楼叢刊、上海古籍出版社、2003年、略称:蜀刊本)
  • 『須渓先生校本唐王右丞集』巻一(『四部叢刊 初篇集部』所収、略称:四部叢刊本)
  • 顧起経注『類箋唐王右丞詩集』巻十(台湾学生書局、1970年、略称:顧起経注本)
  • 顧可久注『唐王右丞詩集』巻一(『和刻本漢詩集成 唐詩1』所収、略称:顧可久注本)
  • 趙殿成注『王右丞集箋注』巻十四(中国古典文学叢書、上海古籍出版社、1998年、略称:趙注本)
  • 『唐詩品彙』巻四十八([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
  • 『唐詩解』巻二十六(順治十六年刊、内閣文庫蔵)
  • 『万首唐人絶句』七言・巻四(明嘉靖刊本影印、文学古籍刊行社、1955年)
  • 『楽府詩集』巻六十六・雑曲歌辞(北京図書館蔵宋刊本影印、中津濱渉『樂府詩集の研究』所収)
  • 『文苑英華』巻一百九十四(影印本、中華書局、1966年)
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