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秋日湖上(薛瑩)

秋日湖上
しゅうじつじょう
薛瑩せつえい
  • ウィキソース「秋日湖上」参照。
  • この詩は、秋の夕暮れ、湖上に舟を浮かべて遊覧したときの感慨を詠んだもの。
  • 詩題 … ここの湖は、湖南省にある洞庭湖とする説と、江蘇・浙江両省にまたがる太湖とする説とに分かれる。詩中に「五湖」とあり、古来、どちらの湖も五湖と呼ばれている。ここでは、作者に『洞庭集』という詩集があるので洞庭湖ではないかと思われる。『韓非子』初見秦篇に「秦、荊人けいひとと戦い、大いに荊を破り、えいおそい、洞庭・五湖・江南を取る」(秦與荊人戰、大破荊、襲郢、取洞庭五湖江南)とある。ウィキソース「韓非子 (四部叢刊本)/卷第一」参照。
  • 湖上 … 湖のみな。湖面。
  • 薛瑩 … 晩唐の詩人。文宗(827~840)の時代の人。詩集『洞庭集』一巻があったことのほか、詳しい伝記は分からない。『全唐詩』に十一首、『唐詩選』に一首のみ収める。
落日五湖遊
落日らくじつ 五湖ごこあそ
  • 落日 … 日の落ちる頃。日が沈む頃。南朝梁のじょの妻りゅう令嫺れいかんがいに答う詩二首」(『玉台新詠』巻六)の第一首に「落日更にしんしょうれんを開きてしゅんじゅに対す」(落日更新妝、開簾對春樹)とある。新妝は、化粧し直すこと。ウィキソース「答外詩」参照。また、南朝梁の皇太子簡文(のちの簡文帝しょうこう)「湘東王の名士傾城けいせいよろこぶに和す」詩(『玉台新詠』巻七)に「すいまんめぐり、落日房櫳ぼうろうわたる」(垂絲遶帷幔、落日度房櫳)とある。垂糸は、ここでは蜘蛛の糸。帷幔は、たれ幕。房櫳は、れん窓。ウィキソース「和湘東王名士悅傾城」参照。
  • 五湖 … 湖南省にある洞庭湖、または江蘇・浙江両省にまたがる太湖のいずれかであるが、ここでは、洞庭湖のこととする。上記の〔詩題〕参照。
煙波處處愁
えん 処処しょしょうれ
  • 煙波 … 夕もやの立ち込めたみな。南朝梁のしょうちん「謝文学にせんす」詩(『古詩紀』巻九十五)に「けい びょうとして何ぞ際まらんも、煙波 千里通ず」(荊呉眇何際、煙波千里通)とある。荊は、楚の国。現在の湖北省の地方。呉は、江南の地。現在の江蘇省の地方。ウィキソース「古詩紀 (四庫全書本)/卷095」参照。
  • 処処 … あちこち。いたるところ。どこもかしこも。南朝梁の元帝(しょうえき)「春日」詩(『玉台新詠』巻七・宋刻不収)に「春心 日日に異なり、春情 処処に多し」(春心日日異、春情處處多)とある。ウィキソース「春日 (蕭繹)」参照。
  • 愁 … 私の心を憂えさせる。
浮沈千古事
ちん せんこと
  • 浮沈 … 人の世の浮き沈み。栄枯盛衰。ここでは、小舟が波間に浮き沈みするのと掛けている。三国魏の阮籍「詠懐詩」の第五十四首に「一餐いっさん 万世ばんせいわたり、千歳せんざい 再び浮沈す」(一餐度萬世、千歳再浮沈)とある。一餐は、一回の食事。万世は、人が死に変わり生まれ変わりして続く長い世。ウィキソース「詠懷詩五言八十二首」参照。『全唐詩』『万首唐人絶句』では「沈(沉)浮」に作る。
  • 千古 … 遠い昔から。隋の李元操「周の宣帝の為に比干を祭る文」(『全隋文』巻二十)に「きゅうげんさず、恨み千古に深し」(九原不作、恨深千古)とある。九原は、墓地。または人が死後に行くという地底の世界。ウィキソース「全隋文/卷二十」参照。
誰與問東流
たれともにかとうりゅうわん
  • 誰与問東流 … (栄枯盛衰について)いったい誰とともに東へ流れる水に向かって問いかけることができようか、いやできない。反語。
  • 東流 … 中国の川はすべて東へ向かって流れる。東流の水は遠い昔からの栄枯盛衰を見てきている。その栄枯盛衰を東流の水に尋ねるということ。『楚辞』天問に「東に流れてあふれず、たれか其のゆえを知る」(東流不溢、孰知其故)とある。ウィキソース「天問」参照。
詩型・韻字
  • 五言絶句。
  • 遊・愁・流(下平声尤韻)。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻六(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻五百四十二(排印本、中華書局、1960年)
  • 『万首唐人絶句』五言・巻十九(明嘉靖本影印、文学古籍刊行社、1955年)
  • 『唐詩解』巻二十四(順治十六年刊、内閣文庫蔵)
  • 『唐詩品彙』巻四十四([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
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