少年行(崔国輔)
少年行
少年行
少年行
- ウィキソース「長樂少年行」参照。
- この詩は、白馬にまたがった貴公子が花街で遊興する様子を詠んだもの。
- 詩題 … 楽府題。雑曲歌辞に属す。若者の歌。行は、歌・曲の意。『楽府古題要解』巻下、結客少年の条に「生を軽んじ義を重んじ、慷慨以て功名を立つるを言うなり」(言輕生重義、慷慨以立功名也)とある。ウィキソース「樂府古題要解」参照。『全唐詩』では「長楽少年行」に作り、「一作古意」と注する。『楽府詩集』では「長楽少年行」に作る。『文苑英華』では「古意六首其一」に作る。
- 崔国輔 … 生没年不詳。盛唐の詩人。山陰(浙江省紹興)の人。一説に呉郡(江蘇省)の人ともいう。字は不詳。開元十四年(726)、進士に及第。集賢院直学士・礼部郎中を歴任した。天宝十一載(752年)、御史大夫の王鉷が死罪となり、その近親者であったので連座して竟陵(今の湖北省天門市)の司馬(郡の属官)に左遷された。楽府の短い詩を得意とした。ウィキペディア【崔国輔】参照。
遺卻珊瑚鞭
遺却す 珊瑚の鞭
- 遺却 … 置き忘れる。却は、動詞の下につける助字で、「~してしまう」という語感を添える。
- 珊瑚鞭 … 柄を珊瑚珠で飾った贅沢な鞭。『涼州記』に「張駿陵を盗発して鞭を得、飾るに珊瑚を以てす」(盜發張駿陵得鞭、飾以珊瑚)とある。盗発は、墓を発いて中の品物を盗み取ること。ウィキソース「涼州記 (段龜龍)」参照。また、南朝梁の元帝(蕭繹)の楽府「紫騮馬」(『楽府詩集』巻二十四)に「長安の美少年、金絡鉄連銭、宛転たり青糸の鞚、照り耀く珊瑚の鞭」(長安美少年、金絡鐵連錢、宛轉青絲鞚、照耀珊瑚鞭)とある。紫騮馬は、黒栗毛の馬。金絡は、黄金で作った面繋(馬の頭の上から轡にかけて飾りにする紐)。鉄連銭は、黒い銭形の斑点がある馬。鞚は、面繋と轡。ウィキソース「樂府詩集/024卷」参照。
白馬驕不行
白馬驕りて行かず
章臺折楊柳
章台 楊柳を折る
- 章台 … 漢代の長安の町名。唐詩では遊里の代名詞に使われる。もとは戦国時代の秦の都咸陽の西南隅にあった宮殿。宮殿内に章台という高殿があり、宮殿は章台宮と呼ばれた。藺相如が璧を奉じて秦王に謁見した場所でもある。『史記』藺相如伝に「秦王、章台に坐して相如を見る。相如、璧を奉じて秦王に奏む」(秦王坐章臺見相如。相如奉璧奏秦王)とある。ウィキソース「史記/卷081」参照。また、漢の張敞は長安の長官であったが、朝廷から退出すると章台の町を馬で通ったという。『漢書』張敞伝に「然れども敞は威儀無く、時に朝会を罷め、過りて馬を章台の街に走らしめ、御吏をして駆らしめ、自ら便面を以て馬を拊つ」(然敞無威儀、時罷朝會、過走馬章臺街、使御吏驅、自以便面拊馬)とある。便面は、扇の類。ウィキソース「漢書/卷076」参照。
- 折楊柳 … 柳の枝を折って鞭の代わりにする。中唐の詩人、韓翃(『柳氏伝』では韓翊に作る)と愛妾の柳氏は、安史の乱によって離れ離れとなり、柳氏は尼僧となっていた。数年後、韓翃が柳氏に詩を贈った。柳氏はむせび泣いて返しの詩を詠んだという故事を踏まえる。『柳氏伝』に「翊は乃ち使いを遣わし、間行して柳氏を求めしむ。練囊を以て麩金を盛り、之に題して曰く、章台の柳、章台の柳。昔日青青たりしも今在りや否や。縦使長き条は旧の似く垂るるとも、亦た応に他人の手に攀折せられぬべし、と。柳氏は金を捧げて嗚咽し、左右も凄憫す。之に答えて曰く、楊柳の枝、芳菲の節、恨む所は年年離別に贈る。一葉風に随って忽ち秋を報ず。縦使君来るも豈に折るに堪えんや、と」(翊乃遣使、間行求柳氏。以練囊盛麩金、題之曰、章臺柳、章臺柳。昔日靑靑今在否。縱使長條似舊垂、亦應攀折他人手。柳氏捧金嗚咽、左右淒憫。答之曰、楊柳枝、芳菲節、所恨年年贈離別。一葉隨風忽報秋。縱使君來豈堪折)とある。間行は、人に気づかれないようにひそかに行くこと。練囊は、練絹で作った袋。麩金は、砂金。左右は、そばの者。凄憫は、悲しみ哀れむこと。芳菲は、草が青々と生え、花が美しく咲き匂っているさま。一葉は、一枚の木の葉。秋を報ずとは、秋を告げること。自分の容色が衰えたことのたとえ。ウィキソース「太平廣記/卷第485」「本事詩/1」参照。
春日路傍情
春日 路傍の情
- 春日 … 春の日。『詩経』豳風・七月に「春日載ち陽かく、鳴く倉庚有り」(春日載陽、有鳴倉庚)とある。倉庚は、うぐいす。ウィキソース「詩經/七月」参照。また、南朝梁の元帝(蕭繹)「春日」詩(『玉台新詠』巻七・宋刻不収)に「春還りて 春節美しく、春日 春風過る」(春還春節美、春日春風過)とある。ウィキソース「春日 (蕭繹)」参照。
- 日 … 『全唐詩』には「一作草」と注する。『楽府詩集』では「草」に作る。
- 路傍 … 道ばた。ここでは両側の娼家から眺めている遊女たちを指す。後漢の宋子侯の楽府「董嬌饒」(『玉台新詠』巻一、『楽府詩集』巻七十三)に「洛陽城東の路、桃李路傍に生ず」(洛陽城東路、桃李生路傍)とある。董嬌饒は、桑摘み娘の名か。「董嬌嬈」に作るテキストもある。ウィキソース「董嬌嬈」「樂府詩集/073卷」参照。また、三国魏の劉楨「公讌の詩」(『文選』巻二十)に「輦車 素蓋を飛ばし、従者 路傍に盈つ」(輦車飛素蓋、從者盈路傍)とある。公讌は、公式の宴会。輦車は、人が引く車。素蓋は、白い車蓋。ウィキソース「公讌詩 (劉公幹)」参照。
- 情 … 若者の徒し心。若者の浮気な心。
詩型・韻字
- 五言絶句。
- 行・情(下平声庚韻)。
テキスト
- 『箋註唐詩選』巻六(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
- 『全唐詩』巻一百十九(排印本、中華書局、1960年)※詩題:長楽少年行
- 『文苑英華』巻二百五(影印本、中華書局、1966年)※詩題:古意六首其一
- 『楽府詩集』巻六十六・雑曲歌辞(北京図書館蔵宋刊本影印、中津濱渉『樂府詩集の研究』所収)※詩題:長楽少年行
- 『万首唐人絶句』五言・巻十六(明嘉靖本影印、文学古籍刊行社、1955年)
- 『唐詩解』巻二十二(順治十六年刊、内閣文庫蔵)
- 『唐詩品彙』巻三十九([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
- 『古今詩刪』巻二十(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、汲古書院)
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