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汾上驚秋(蘇頲)

汾上驚秋
ふんじょうにてあきおどろ
てい
  • ウィキソース「汾上驚秋」参照。
  • この詩は、作者が旅の途中、汾水のほとりにさしかかったとき、いつの間にか辺りを包む秋の気配に気付き、その驚きを詠んだもの。なお、汾水はその昔、漢の武帝が船を浮かべて遊び、「秋風起こりて白雲飛び、草木黄落こうらくしてかり南に帰る。蘭にはな有り菊にかおり有り、佳人をおもいて忘るる能はず。楼船をうかべてふんわたり、中流に横わりて素波そはぐ。しょう鳴りてとうを発す。歓楽極りて哀情多し。少壮幾時いくときぞ老いをかんせん」という「秋風の辞」を作った川として有名。この詩も「秋風の辞」を踏まえて作ったもの。
  • 汾上 … 汾水のほとり。汾水は、山西省寧武県の西南に源を発し、黄河に注ぐ川。汾河ともいう。上は、ほとり。『水経注』汾水篇に「汾水は太原たいげん汾陽県の北、管涔山かんしんざんづ」(汾水出太原汾陽縣北管涔山)とある。ウィキソース「水經注/06」参照。
  • 驚秋 … もう秋になったかとハッと驚く。秋の気配の訪れにハッと胸をつかれる。
  • 蘇頲 … 670~727。初唐の詩人。ようしゅうこう(陝西省武功県)の人。あざな廷碩ていせき。監察御史などの官職を歴任後、開元四年(716)に宰相となった。ウィキペディア【蘇頲】参照。
北風吹白雲
北風ほくふう 白雲はくうん
  • 北風 … 北から吹いてくる冷たい風。『詩経』邶風はいふう・北風に「北風其れ涼なり、雪ること其れほうたり」(北風其涼、雨雪其雱)とある。雱は、雪がさかんに降るさま。ウィキソース「詩經/北風」参照。なお、平野彦次郎『唐詩選研究』(明徳出版社、昭和49年)では「四時の風は、春は東風、夏は南風、秋は西風、冬は北風というのが普通である。しかしこの詩では、秋の風を特に北風といっている。語調の関係であろう」と言っている。
  • 白雲 … 白い雲。ここでは、漢の武帝「秋風の辞」の「秋風起りて白雲飛ぶ」(秋風起兮白雲飛)とあるのを踏まえる。ウィキソース「秋風辭 (劉徹)」参照。
  • 吹 … 吹き飛ばす。吹き流す。
萬里渡河汾
ばん ふんわた
  • 万里 … (一万里の意から)きわめて遠いこと。ここでは、都から遠く離れた旅の途中にあること。前漢の李陵「別歌」(『古詩紀』巻十二)に「万里をわたりて沙漠をわたり、君がしょうりて匈奴にふるう」(徑萬里兮度沙漠、爲君將兮奮匈奴)とある。ウィキソース「古詩紀 (四庫全書本)/卷012」参照。
  • 河汾 … もとは黄河と汾水のことであるが、ここでは「秋風の辞」にある「楼船ろうせんうかべて ふんわたる」(汎樓船兮濟汾河)とあるのを踏まえる。汾河は、汾水の別名。押韻の都合で汾河を逆にしている。ウィキソース「秋風辭 (劉徹)」参照。また『漢書』揚雄伝に「揚は河汾の間に在り、周衰えて揚氏或いは侯と称し、号して揚侯と曰う」(揚在河汾之閒、周衰而揚氏或稱侯、號曰揚侯)とある。こちらの河汾は、黄河と汾水の意。ウィキソース「漢書/卷087」参照。
心緒逢搖落
心緒しんしょ 揺落ようらく
  • 心緒 … 心の糸口。心の動き。情緒。緒は、糸のはし。後漢の蔡琰さいえんの楽府「胡笳十八拍」(『楽府詩集』巻五十九、『楚辞後語』巻三)の第十七拍に「去る時は土をおもいて心緒無く、来たる時は児に別れて思いは漫漫たり」(去時懷土兮心無緒、來時別兒兮思漫漫)とある。ウィキソース「胡笳十八拍」「樂府詩集/059卷」「楚辭集注 (四庫全書本)/後語卷3」参照。また、隋の孫万寿ばんじゅ「遠く江南をまもりて、京邑けいゆうの親友に寄す」詩(『古詩紀』巻一百三十五)に「心緒乱れて糸の如く、空しくちゅうせきの時をおもう」(心緒亂如絲、空懐疇昔時)とある。戍るとは、武器を持って辺境を守ること。京邑は、長安の都。疇昔は、過日。昔。ウィキソース「古詩紀 (四庫全書本)/卷135」参照。
  • 揺落 … 落葉が揺れながら落ちること。ここでは、漢の武帝「秋風の辞」の「草木黄落こうらくして かり 南に帰る」(草木黃落兮雁南歸)とあるのを踏まえる。黄落は、木の葉が黄ばんで落ちること。ウィキソース「秋風辭 (劉徹)」参照。また『楚辞』九弁に「悲しいかな、秋の気たるや。しょうしつとして、草木揺落ようらくして変衰へんすいす」(悲哉、秋之為氣也。蕭瑟兮、草木揺落而變衰)とある。蕭瑟は、秋風のさびしく吹くさま。変衰は、変化し衰えること。ウィキソース「九辯」参照。
秋聲不可聞
しゅうせい からず
  • 秋声 … 秋の物音。風の音や、木の葉の落ちる音。北斉の顔之推「よう納言のうげん鳴蟬めいせんを聴く篇に和す」詩(『古詩紀』巻一百二十)に「歴乱として秋声起こり、しんとして人慮をみだす」(歴亂起秋聲、參差攪人慮)とある。陽納言は、納言中大夫の陽休之(509~582)。歴乱は、物の乱れるさま。参差は、ばらばらに散らばるさま。ウィキソース「古詩紀 (四庫全書本)/卷120」参照。
  • 不可聞 … 物寂しくて、聞くに堪えない。北周の庾信「趙王の峽中の軍を送るに和す」詩(『古詩紀』巻一百二十五)に「かくは行く 明月めいげつきょう、猿声 聞く可からず」(客行明月峽、猿聲不可聞)とある。明月峡は、四川省広元市朝天区に位置する峡谷。ウィキソース「古詩紀 (四庫全書本)/卷125」参照。
詩型・韻字
  • 五言絶句。
  • 雲・汾・聞(上平声文韻)。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻六(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻七十四(排印本、中華書局、1960年)
  • 『蘇頲碩集』巻下(明銅活字本、『唐五十家詩集』所収、上海古籍出版社、1989年)
  • 『万首唐人絶句』五言・巻二十五(明嘉靖本影印、文学古籍刊行社、1955年)
  • 『唐詩解』巻二十一(順治十六年刊、内閣文庫蔵)
  • 『唐詩品彙』巻三十八([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
  • 『唐詩別裁集』巻十九([清]沈徳潜編、乾隆二十八年教忠堂重訂本縮印、中華書局、1975年)
  • 『古今詩刪』巻二十(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、汲古書院)
  • 松浦友久編『校注 唐詩解釈辞典』(大修館書店、1987年)
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