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黄鶴楼(崔顥)

黃鶴樓
黄鶴楼こうかくろう
さいこう
  • 〔テキスト〕 『唐詩選』巻五、『唐詩三百首』七言律詩、『三体詩』七言律詩・前虚後実、『全唐詩』巻一百三十、『文苑英華』巻三百十二、『唐詩品彙』巻八十三、『唐百家詩選』巻四、『唐詩別裁集』巻十三、『河岳英霊集』巻下、『国秀集』巻中、『才調集』巻八、『唐詩紀事』巻二十一(『四部叢刊 初編集部』所収)、『唐文粋』巻十六上(『四部叢刊 初編集部』所収)、他
  • 七言律詩。樓・悠・洲・愁(平声尤韻)。
  • ウィキソース「黄鶴楼」参照。
  • この詩は李白に褒められた詩としても有名。『文苑英華』『唐文粋』では「登黄鶴樓」に作る。『国秀集』では「題黄鶴樓」に作る。
  • 黄鶴楼 … 江夏(今の湖北省武漢市武昌区)の黄鶴山(別名黄鵠山、俗称蛇山じゃざん)の西北、長江を見下ろす黄鶴こうかく(磯は、川に突き出た小さな岩山の意)に建っていた楼閣。呉の黄武二年(223)の建立と伝えられ、何度も破壊と改修を繰り返してきた。現在の楼は、1985年、蛇山の頂上に再建されたもの。ウィキペディア【黄鶴楼】参照。黄鶴楼には、仙人が黄色い鶴(鵠)に乗ってここに立ち寄ったという伝説がある。『南斉書』州郡志下、郢州の条に「夏口城は黄鵠磯に拠る、世に伝う仙人子安、黄鵠に乗りて此の上を過ぐると」(夏口城據黃鵠磯、世傳仙人子安乘黃鵠過此上也)とある。ウィキソース「南齊書/卷15」参照。また『太平寰宇記』江南西道、鄂州、江夏県の条に「黄鶴楼は県の西二百八十歩に在り。昔、韋褘登仙し、毎に黄鶴に乗じ、此の楼に于いて駕を憩う。故に号す」(黄鶴樓在縣西二百八十歩。昔韋褘登仙、每乗黄鶴、于此樓憇駕。故號)とある。ウィキソース「太平寰宇記 (四庫全書本)/卷112」参照。
  • 崔顥 … ?~754。盛唐の詩人。べんしゅう(河南省開封市)の人。あざなは不詳。開元十一年(723)、進士に及第。官は司勲員外郎に至った。酒と賭博を好んだという。ウィキペディア【崔コウ】参照。
昔人已乘白雲去
昔人せきじんすで白雲はくうんりて
  • 昔人 … 昔の人。ここではしん氏の酒屋を訪れた仙人を指す。ウィキペディア【黄鶴楼】の「伝承」参照。
  • 白雲 … 『全唐詩』には「一云作黄鶴」とある。『唐詩三百首』『唐詩別裁集』『唐百家詩選』では「黄鶴」に作る。
此地空餘黃鶴樓
むなしくあます 黄鶴楼こうかくろう
  • 此 … 『全唐詩』には「一作茲」とある。『文苑英華』『国秀集』では「茲」に作る。
  • 空 … ただ~だけ。ただ~ばかり。むなしく。さびしく。
  • 余 … 残っている。『全唐詩』には「一作留」とある。『才調集』では「作」に作る。『文苑英華』では「遺」に作る。
黃鶴一去不復返
黄鶴こうかくひとたびってかえらず
  • 黄鶴 … 黄色い鶴。
  • 不復返 … もう帰ってこない。
  • 不復 … 「また~ず」と読み、「もう二度と~ない」と訳す。部分否定。ちなみに、「復不」は「また~ず」と読み、「今度もまた~しない」と訳す。全部否定。
白雲千載空悠悠
白雲はくうん千載せんざい むなしく悠悠ゆうゆう
  • 千載 … 千年。
  • 載 … 『国秀集』では「里」に作る。
  • 悠悠 … ゆったりとのどかにしているさま。
晴川歷歷漢陽樹
晴川せいせん歴歴れきれきたり 漢陽かんようじゅ
  • 晴川 … 晴れ渡った長江の流れ。
  • 歴歴 … はっきりと見えるさま。
  • 漢陽 … 長江をはさんで、武昌の対岸にある町。現在、三市が合併して武漢市となっている。
  • 樹 … 『全唐詩』には「一作戍」とある。
芳草萋萋鸚鵡洲
芳草ほうそう萋萋せいせいたり おうしゅう
  • 芳草 … 香りのよい草花。
  • 芳 … 『全唐詩』では「春」に作り、「一作芳」とある。『文苑英華』『唐百家詩選』『河岳英霊集』『国秀集』『才調集』『唐詩紀事』『唐文粋』では「春」に作る。
  • 草 … 『唐詩選』『唐詩別裁集』では「艸」に作る。同義。
  • 萋萋 … 草が盛んに茂っているさま。『詩経』周南・葛覃かつたんの詩に「くずびて、ちゅうこくうつる、萋萋せいせいたり」(葛之覃兮、施于中谷、維葉萋萋)とある。ウィキソース「詩經/葛覃」参照。また『楚辞』招隠士にも「王孫おうそんあそんでかえらず、しゅんそうしょうじて萋萋せいせいたり」(王孫遊兮不歸、春草生兮萋萋)とある。ウィキソース「楚辭/招隱士」参照。『全唐詩』には「一作青青」とある。『文苑英華』『国秀集』『唐文粋』では「靑靑」に作る。
  • 鸚鵡洲 … 湖北省武漢市武昌区黄鵠磯の西、長江の中にある中洲。『水経注』江水の条に「江の右岸は鸚鵡洲の南に当たる」(江之右岸當鸚鵡洲南)とある。ウィキソース「水經注/35」参照。また『方輿勝覧』鄂州の条に「鸚鵡洲は、江中に在り。黄祖が禰衡でいこうあやむる処なり。衡、鸚鵡をす、故に名づく」(鸚鵡洲、在江中。黄祖殺禰衡處。衡賦鸚鵡、故名)とある。ウィキソース「方輿勝覽 (四庫全書本)/卷28」参照。ウィキペディア【黄祖】【禰衡】参照。
日暮郷關何處是
にち きょうかん いずれのところこれなる
  • 日暮 … 日暮れ。
  • 郷関 … ふるさと。
  • 何処是 … どの辺りがそれ(故郷)だろうか。
  • 是 … 『全唐詩』には「一作在」とある。『河岳英霊集』では「在」に作る。
煙波江上使人愁
えん こうじょう ひとをしてうれえしむ
  • 煙波 … もやの立ちこめた水面。
  • 煙 … 『三体詩』『唐詩品彙』では「烟」に作る。異体字。
  • 江上 … 長江のほとり。
  • 使人愁 … 私の胸に、望郷の思いを起こさせる。
  • 使 … 「~(をして)…(せ)しむ」と読み、「~に…させる」と訳す。使役を表す。
  • 人 … ここでは作者を指す。
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