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長干行(崔顥)

長干行
ちょうかんこう
崔顥さいこう
  • ウィキソース「長干曲」参照。
  • この詩は、長干(現在の南京の南方にあった町)の船着場にて、船で往来する行商人と遊女との戯れを詠んだもの。
  • 詩題 … 楽府題の一つ。雑曲歌辞に属する。都邑三十四曲の一つ。男女の情を述べる内容のものが多い。行は、歌の意。『全唐詩』では「長干曲四首(一作江南曲) 其一」に作る。『河岳英霊集』では「江南曲」に作る。『唐百家詩選』では「江南曲二首其一」に作る。『文苑英華』では「江南行二首其一」に作る。『唐五十家詩集本』『万首唐人絶句』『楽府詩集』では「長干曲四首其一」に作る。『唐詩品彙』『唐詩解』では「長干行二首其一」に作る。『唐詩別裁集』では「長干曲二首其一」に作る。
  • 長干 … 地名。もと金陵(現在の江蘇省南京市)の南の村里の名。船着場であり、色町もあったらしい。西晋の左思「呉都の賦」(『文選』巻五)に「長干延属えんぞくし、ぼうせんす」(長干延屬、飛甍舛互)とあり、その劉淵林注に「けんぎょうの南五里に山岡さんこう有り、其の間平地にして、みん雑居す。東の長干の中に大長干・小長干有り。皆な相連なる」(建業南五里有山崗、其間平地、吏民雜居。東長干中有大長干、小長干。皆相連)とある。延属は、連なること。飛甍は、高いいらか。舛互は、互いに入り交じること。山岡は、丘。吏民は、官吏と民衆。官民。ウィキソース「昭明文選/卷5」参照。
  • 崔顥 … ?~754。盛唐の詩人。べんしゅう(河南省開封市)の人。あざなは不詳。開元十一年(723)、進士に及第。官は司勲員外郎に至った。酒と賭博を好んだという。ウィキペディア【崔顥】参照。
君家住何處
きみいえいずにか
  • 君家 … 君の家。あなたのお住まい。古楽府「りゅう歌辞」(『楽府詩集』巻二十五)に「遥かに看る 是れ君が家、松柏のつか 累累たり」(遙看是君家、松柏冢纍纍)とある。紫騮馬は、赤くり毛の馬。累累は、辺り一面に連なって続く様子。ウィキソース「樂府詩集/025卷」参照。
  • 住何処 … お住まいはどちらですか。「何処」は「いず」「いずれのところ」と読んでもよい。『全唐詩』では「何処住」に作り、「一にさだめしいずならんに作る」(一作定何處)と注する。『河岳英霊集』『楽府詩集』では「定何処」に作る。『唐五十家詩集本』『万首唐人絶句』『文苑英華』『唐百家詩選』では「何処住」に作る。
妾住在横塘
しょうみて横塘おうとう
  • 妾住 … 私は~に住んでいる。私のうちは。妾は、わらわ。女性が自分を謙遜していうことば。古楽府「長干曲」(『楽府詩集』巻七十二)に「しょうが家は揚子に住み、便ち広陵のしおたわむれり」(妾家揚子住、便弄廣陵潮)とある。ウィキソース「樂府詩集/072卷」参照。また、隋の薛道衡の楽府「予章行」(『楽府詩集』巻三十四)に「君は行きて遠くしゅれいわたり、妾は住みてとこしなえに明月楼に依る」(君行遠度茱萸嶺、妾住長依明月樓)とある。ウィキソース「樂府詩集/034卷」参照。
  • 横塘 … 南京の西南にある堤。西晋の左思「呉都の賦」(『文選』巻五)に「横塘査下さか邑屋ゆうおくさかんにほこる」(横塘査下、邑屋隆夸)とあり、その劉淵林注に「横塘は淮水の南に在り。……江にって長堤を築く。之を横塘と謂う」(横塘在淮水南。……縁江築長堤。謂之横塘)とある。邑屋は、村里の住居。ウィキソース「昭明文選/卷5」参照。また、南朝梁の呉均「しょう洗馬けんの古意に和す六首」詩(『玉台新詠』巻六)の第五首に「しょういえす横塘の北、えんを発す小長干に」(妾家横塘北、發艷小長干)とある。艶を発すとは、あでやかな顔色をあらわすこと。ウィキソース「和蕭洗馬子顯古意」参照。
停船暫借問
ふねとどめてしばら借問しゃもん
  • 停船 … 船をとめて。『三輔黄図』巻四、池沼、漢昆明池の条に引く『三秦記』に「昆明池の中に霊沼有り、神池と名づく。云う、堯の時、治水して、嘗て船を此の池に停む、と」(昆明池中有靈沼、名神池。云堯時治水、嘗停船於此池)とある。ウィキソース「三輔黃圖/卷之四」参照。
  • 借問 … ちょっとお尋ねしますが。三国魏の曹植の楽府「七哀の詩」(『文選』巻二十三、『玉台新詠』巻二では「雑詩五首其一」、『楽府詩集』巻四十一では「怨詩行二首其二」と題す)に「借問す歎ずる者はたれぞと。言う是れかくの妻なりと」(借問歎者誰。言是客子妻)とある。客子は、旅人。ウィキソース「七哀詩 (曹子建)」参照。
或恐是同鄉
あるいはおそらくどうきょうならんかと
  • 或恐 … ひょっとしたら。もしや。
  • 恐 … 『全唐詩』には「一作可」と注する。『文苑英華』『河岳英霊集』『唐百家詩選』では「可」に作る。
  • 同郷 … 郷里が同じであること。『荘子』盗跖篇に「今、夫れ此の人は、以ておのれと時を同じくして生まれ、きょうを同じくしてる者と為す」(今夫此人、以爲與己同時而生、同郷而處者)とある。ウィキソース「莊子/盜跖」参照。また、南朝梁の王宋儒「人の為に近くして見ざるをいたむ」詩(『玉台新詠』巻六)に「我に一心の人有り、郷を同じくし県をことにせず」(我有一心人、同郷不異縣)とある。一心の人とは、恋い焦がれる人のこと。ウィキソース「為人傷近而不見」参照。
詩型・韻字
  • 五言絶句。
  • 塘・郷(下平声陽韻)。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻六(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻一百三十(排印本、中華書局、1960年)
  • 『崔顥集』巻下(明銅活字本、『唐五十家詩集』所収、上海古籍出版社、1989年)
  • 『楽府詩集』巻七十二・雑曲歌辞(北京図書館蔵宋刊本影印、中津濱渉『樂府詩集の研究』所収)
  • 『文苑英華』巻二百一(影印本、中華書局、1966年)
  • 『唐詩解』巻二十二(順治十六年刊、内閣文庫蔵)
  • 『万首唐人絶句』五言・巻十五(明嘉靖本影印、文学古籍刊行社、1955年)
  • 『唐詩品彙』巻四十([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
  • 『唐詩別裁集』巻十九([清]沈徳潜編、乾隆二十八年教忠堂重訂本縮印、中華書局、1975年)
  • 『河岳英霊集』巻下(傅璇琮編撰『唐人選唐詩新編』、陝西人民教育出版社、1996年)
  • 『唐百家詩選』巻四([北宋]王安石編、世界書局、1979年)
  • 『古今詩刪』巻二十(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、汲古書院)
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