月夜(杜甫)
月夜
月夜
月夜
- 〔テキスト〕 『唐詩三百首』五言律詩、『宋本杜工部集』巻九、『杜詩詳注』巻四、『全唐詩』巻二百二十四、他
- 五言律詩。看・安・寒・乾(平声寒韻)。
- ウィキソース「月夜 (杜甫)」参照。
- 月夜 … 月の美しい夜、遠く離れた妻子を思いやる心情を詠ったもの。至徳元載(756)、作者四十五歳の作。当時杜甫は長安で賊軍に捕らえられ、妻子を北方の鄜州に疎開させていた。
- 杜甫 … 712~770。盛唐の詩人。襄陽(湖北省)の人。字は子美。祖父は初唐の詩人、杜審言。若い頃、科挙を受験したが及第できず、各地を放浪して李白らと親交を結んだ。安史の乱では賊軍に捕らえられたが、やがて脱出し、新帝粛宗のもとで左拾遺に任じられた。その翌年左遷されたため官を捨てた。四十八歳の時、成都(四川省成都市)の近くの浣花渓に草堂を建てて四年ほど過ごしたが、再び各地を転々とし一生を終えた。中国最高の詩人として「詩聖」と呼ばれ、李白とともに「李杜」と並称される。『杜工部集』がある。ウィキペディア【杜甫】参照。
今夜鄜州月
今夜 鄜州の月
- 鄜州 … 今の陝西省富県。長安のはるか北方にあり、杜甫の妻子が疎開していた所。ウィキペディア【富県】参照。
閨中只獨看
閨中 只だ独り看るならん
- 閨中 … 妻の寝室を指す。閨は、婦人の部屋。寝室。
- 只独 … ただひとりで。
- 看 … 「看ん」と読んでもよい。眺めていることだろう。
遙憐小兒女
遥かに憐れむ 小児女の
- 遥憐 … 遠くからいとおしく思うのは。遠くからかわいそうに思うのは。
- 小児女 … 幼い子どもたち。幼い息子と娘たち。当時、杜甫には二男二女があったらしい。
未解憶長安
未だ長安を憶うを解せざるを
- 未解 … まだ~できない。まだ~理解できない。
- 憶長安 … 長安に捕らわれている父(杜甫)を気づかうこと。
香霧雲鬟濕
香霧 雲鬟湿い
- 香霧 … (妻の部屋に立ちこめた)香り高い秋の夜霧。
- 雲鬟 … 雲のように豊かでふわっとした美しい髪。
- 湿 … しっとりと湿る。
清輝玉臂寒
清輝 玉臂寒からん
- 清輝 … 清らかな光。月光のこと。
- 玉臂 … 玉のようになめらかで美しい腕。
- 寒 … さぞ冷たかろう。
何時倚虛幌
何れの時か 虚幌に倚り
- 何時 … いつになったら。
- 時 … 『全唐詩』には「一作當」とある。
- 虚幌 … 人気のない部屋のカーテン。「幌」はカーテン。とばり。
- 倚 … 寄り添って。寄りかかって。もたれて。
雙照淚痕乾
双び照らされて 涙痕乾かん
- 双照 … 夫婦二人で並んで、月光に照らされて。
- 涙痕乾 … 涙のあとを乾かすことができるのだろう。「涙」は、今まで会うことができずに流してきた涙と、再会できた喜びの涙との解釈に分かれる。
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