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先進第十一 25 子路曾晳冉有公西華侍坐章(4)

4)赤爾何如。對曰、非曰能之。願學焉。宗廟之事、如會同、端章甫、願爲小相焉。
せきなんじ何如いかんこたえていわく、これくするとうにはあらず。ねがわくはまなばん。そうびょうことしくは会同かいどうに、たんしょうして、ねがわくはしょうそうらん。
現代語訳
  • 「赤くん、きみはどう…。」お答え ―― 「やれるというのでなく、見ならいたいものです。お宮の祭りや外交の儀式には、礼服にかんむりで、お手つだい役をしたいです。」(がえり善雄『論語新訳』)
  • そこで孔子様が今度は公西華に向かって、「赤よ、お前はどうじゃ。」とおっしゃった。公西華は元来がんらい礼楽を志していたのだが、今冉求が礼楽は君子に待つと言ったばかりのところだから、私は礼楽の方を致しますとイキナリ言っては、自ら君子をもって任ずるように聞えてあいがわるい故、さらに大いにへりくだって、「私にできると申すのでござりませんが、勉強かたがた致してみたいと存じますのは、国君のご先祖びょうのお祭または諸侯の国際的会合というような場合に、かん束帯そくたいしき次長ぐらいのところを勤めさせていただくことでござります。」と言った。(穂積重遠しげとお『新訳論語』)
  • 先師、――
    せきよ、お前はどうだ」
    公西華がこたえた。――
    「まだ十分の自信はありませんが、稽古かたがたやってみたいと思うことがあります。それは、宗廟のお祭りや、国際会談といったような場合に、礼装して補佐役ぐらいの任務につくことです」(下村湖人『現代訳論語』)
語釈
  • 赤 … 孔子の弟子、公西華の名。前509~?。姓は公西こうせいあざなは子華。公西赤とも。魯の人。儀式に通じていた。ウィキペディア【公西赤】(中文)参照。
  • 非曰能之 … 自分にできると言えるわけではありませんが。
  • 願 … 「ねがわくは~ん」と読み、「ぜひ~したい」と訳す。自らの願望の意を示す。
  • 宗廟之事 … 国君の先祖の霊をまつったみたまやの祭り。
  • 会同 … 諸侯の会合。
  • 端章甫 … 「端」は、黒色の礼服。「章甫」は、礼冠の名。ここでは礼装で威儀を整えるの意。
  • 小相 … 君主が儀式を行なうときの補佐役。
補説
  • 赤(公西華) … 『孔子家語』七十二弟子解に「公西赤はひと、字は子華。孔子よりわかきこと四十二歳。束帯してちょうに立ち、賓主の儀にならう」(公西赤魯人、字子華。少孔子四十二歳。束帶立於朝、閑賓主之儀)とある。ウィキソース「孔子家語/卷九」参照。また『史記』仲尼弟子列伝に「公西赤、字は子華。孔子よりわかきこと四十二歳」(公西赤字子華。少孔子四十二歳)とある。ウィキソース「史記/卷067」参照。
  • 赤爾何如 … 『義疏』に「求の答うること已にう。故に更に公西華に問うなり」(求答已竟。故更問公西華也)とある。『論語義疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『注疏』に「又た公西華に問うなり」(又問公西華也)とある。『論語注疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 対曰、非曰能之。願学焉 … 『集解』に引く鄭玄の注に「我自らは能くすと言うに非ざるなり。願わくは之をねんことを学ばん」(我非自言能也。願學爲之)とある。『論語集解』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『義疏』に「赤答うるなり。非曰は、猶お非謂のごときなり。答えて曰く、己自ら能くすと謂うに非ざるなり。願わくは此に従いて、而る後に学んで之を為すなり」(赤答也。非曰、猶非謂也。答曰、己非謂自能。願從此而後學爲之也)とある。また『注疏』に「此れ赤の志なり。曰は、言なり。我自ら之を能くすと言うには非ず、願わくは学びて焉を為さん」(此赤也之志也。曰、言也。我非自言能之、願学為焉)とある。また『集注』に「公西華は、礼楽の事に志す。君子を以て自ら居るを嫌う。故に将に己が志を言わんとして、先ず遜辞を為し、未だ能くせずして学ぶを願うと言うなり」(公西華、志於禮樂之事。嫌以君子自居。故將言己志而先爲遜辭、言未能而願學也)とある。『論語集注』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 宗廟之事、如会同 … 『集解』に引く鄭玄の注に「宗廟の事は、祭祀を謂うなり。諸侯の時見を会と曰い、殷見を同と曰う」(宗廟之事、謂祭祀也。諸侯時見曰會、殷見曰同)とある。また『義疏』に「此れ以下は、並びに学ぶ所の事を願うを言うなり。宗廟の事は、人君の祭祀の事を謂うなり。如しくは会同には、諸侯に会同の事時有るを謂うなり」(此以下、並言願所學之事也。宗廟之事、謂人君祭祀之事。如會同、謂諸侯有會同之事時也)とある。また『集注』に「宗廟の事は、祭祀を謂う。諸侯時にまみゆるを会と曰い、衆のまみゆるを同と曰う」(宗廟之事、謂祭祀。諸侯時見曰會、衆頫曰同)とある。
  • 端章甫、願為小相焉 … 『集解』に引く鄭玄の注に「端は、玄端なり。玄端を衣て、章甫を冠するは、諸侯の日に朝を視るの服なり。小相は、君の礼をたすくる者を謂うなり」(端、玄端也。衣玄端、冠章甫、諸侯日視朝之服也。小相、謂相君之禮者也)とある。また『義疏』に「端は、玄端の服なり。章甫は、章甫の冠を謂うなり。言うこころは願わくは君に祭祀及び会同の事有れば、而して己は玄端の服・章甫の冠ならん。小相と為らんは、君の礼をたすくるなり」(端、玄端之服也。章甫、謂章甫之冠也。言願君有祭祀及會同之事、而己玄端服章甫之冠也。爲小相、相君之禮也)とある。また『注疏』に「宗廟・祭祀の事、如しくは諸侯の会・同のこと有る、及び諸侯玄端をて、章甫を冠にし、日に朝を視るの時、己願わくは其の小と為りて君の礼をたすけん、と」(宗廟祭祀之事、如有諸侯會同、及諸侯衣玄端、冠章甫、日視朝之時、己願爲其小相君之禮焉)とある。また『集注』に「端は、玄端の服。章甫は、礼冠。相は、君の礼をたすくる者なり。小と言うは、た謙辞なり」(端、玄端服。章甫、禮冠。相、贊君之禮者。言小、亦謙辭)とある。
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