天の未だ斯の文を喪ぼさざるや、匡人其れ予を如何せん
天の未だ斯の文を喪ぼさざるや、匡人其れ予を如何せん
- 論語 … 孔子(前552~前479)とその門弟たちの言行録。四書の一つ。十三経の一つ。二十編。儒家の中心的経典。我が国へは応神天皇の代に伝来したといわれている。ウィキペディア【論語】参照。
子畏於匡。曰、文王既沒、文不在茲乎。天之將喪斯文也、後死者、不得與於斯文也。天之未喪斯文也、匡人其如予何。
子、匡に畏す。曰く、文王既に没し、文茲に在らずや。天の将に斯の文を喪ぼさんとするや、後死の者、斯の文に与るを得ざるなり。天の未だ斯の文を喪ぼさざるや、匡人其れ予を如何せん。
- 匡 … 衛の国の地名。
- 畏 … 生命の危険にさらされる。ここでは孔子の容貌が陽虎に似ていたため、匡の住民に間違われて包囲され、五日間も拘禁されたことを指す。
- 文王 … 周の武王の父。姓名は姫昌。孔子が最も尊敬した聖人の一人。ウィキペディア【文王 (周)】参照。
- 既没 … すでに亡くなっている。
- 文不在茲乎 … 「文ここに在らずや」「文ここに在らざらんや」と読む。反語の形。文化の伝統は、この私の身に伝わっているではないか。「文」は文化。「茲」は「ここ」と読み、孔子自身を指す。
- 天 … 天の神。
- 斯文 … 文王の作ったこの文化。
- 喪 … 滅ぼす。
- 天之将喪斯文也 … 「~之…也」は「~の…するや」と読み、「~が…するとき」「~が…するなら」と訳す。天の神がこの文化を滅ぼそうとするつもりなら。仮定条件の言い方。
- 後死者 … 文王より後に死ぬ者。すなわち孔子自身を指す。
- 与 … 「あずかる」と読む。たずさわる。参与する。
- 天之未喪斯文也 … 上記の「天之将喪斯文也」と同じく、「~之…也」は「~の…するや」と読み、「~が…するとき」「~が…するなら」と訳す。天の神がまだこの文化を滅ぼさないつもりなら。仮定条件の言い方。
- 匡人 … 国名の下の「人」は、「じん」と読まずに「ひと」と読む。
- 其如予何 … 「それわれをいかんせん」と読む。「いったいこのわたしをどうしようというのか、どうすることもできまい」と訳す。反語の形。「如何」は、「~をいかん(せん)」と読み、「~をどうするか」「どうしたらよいか」と訳す。目的語がある場合は「如~何」と、その目的語を間にはさむ。ここでは「予」が目的語なので「如予何」となる。
- 詳しい注釈や現代語訳については「子罕第九5」参照。
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