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奉和同前(崔恵童)

奉和同前
同前どうぜんたてまつ
崔恵童さいけいどう
  • 〔テキスト〕 『唐詩選』巻七、『全唐詩』巻二百五十八、趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻十二(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)、『古今詩刪』巻二十二(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、61頁)、『唐詩品彙拾遺』巻四、他
  • 七言絶句。囘・杯・開(平声灰韻)。
  • ウィキソース「宴城東莊 (崔惠童)」参照。
  • 詩題 … 『全唐詩』では「宴城東荘」に作り、「一作崔惠詩、一作崔思詩」とある。『万首唐人絶句』では「宴城東荘」に作り、作者名を「崔思」とする。『唐詩品彙拾遺』では「奉和宴城東荘」に作り、作者名を「崔惠」とする。
  • 同前 … 前に述べたことと同じであること。同上。ここでは前詩。
  • 奉和 … 身分の高い人の詩に唱和すること。前詩は作者の弟であるので、誤記と思われる。
  • この詩は、長安城の東郊にあった別荘で宴会を開かれ、その席上で詠んだもの。
  • 崔恵童 … 生没年不詳。盛唐の詩人。博州(山東省聊城市)の人。右驍衛将軍・冀州(河北省衡水市冀州区)刺史崔庭玉の子。崔敏童の兄。玄宗の娘の晋国公主の婿となり、駙馬都尉となった。『全唐詩』に一首だけ収める。ウィキペディア【崔惠童】(中文)参照。
一月主人笑幾回
一月いちげつ 主人しゅじん わらうこと幾回いくかい
  • 一月 … 一月ひとつきのうちで。
  • 主人 … 別荘のあるじ。別荘の持ち主が崔恵童であるという説があるが、この言葉から否定できる。『全唐詩』には「一作人生」とある。『万首唐人絶句』では「生人」に作る。
  • 笑幾回 … 心から笑うことが何回あるだろうか。『荘子』盗跖篇に「人、上寿は百歳、中寿は八十、下寿は六十。びょうそう・死喪・憂患を除きて、其のうちに口を開きて笑う者、一月いちげつうち四五しごじつに過ぎざるのみ」(人上壽百歲、中壽八十、下壽六十。除病瘦死喪憂患、其中開口而笑者、一月之中、不過四五日而已矣)とあるのを踏まえる。ウィキソース「莊子/盜跖」参照。
  • 回 … 『唐詩選』『万首唐人絶句』『唐詩品彙拾遺』では「囘」に作る。異体字。
相逢相値且銜杯
あいあいうてしばらはいふくまん
  • 相逢相値 … お互いにこうして出会ったのだから。
  • 値 … 思いがけなく出会うこと。『説文解字』巻八上、人部に「値は、措くなり」(値、措也)とあり、徐注に「一に曰く、逢遇するなり」(一曰逢遇)とある。ウィキソース「說文解字/08」「説文解字繫傳 (四部叢刊本)/卷第十五」参照。『全唐詩』では「識」に作り、「一作値」とある。
  • 且 … 「しばらく」と読み、「ひとまず」「ともかく」と訳す。
  • 銜杯 … 酒杯を口にあてる。転じて酒を飲むこと。銜は、口にくわえる。
  • 杯 … 『万首唐人絶句』では「桮」に作る。異体字。
眼看春色如流水
のあたりる 春色しゅんしょくりゅうすいごとくなるを
  • 眼看 … の当たりに見るのは。
  • 春色 … 春の景色。春の趣き。謝朓の「徐都曹に和す」(『文選』巻三十)に「宛洛えんらく遨游ごうゆうく、春色はこうしゅうに満つ」(宛洛佳遨游、春色滿皇州)とある。宛洛は、宛邑(南陽)と洛陽との二都。遨游は、気ままに遊び楽しむこと。皇州は、帝都の地。ウィキソース「昭明文選/卷30」参照。
  • 如流水 … 流れる水のように過ぎ去ってゆく。
今日殘花昨日開
今日こんにちざん昨日さくじつひらきし
  • 残花 … 枝に散り残っている花。
  • 殘 … 『全唐詩』には「一作飛」とある。
  • 昨日開 … 昨日咲いたばかりの花である。
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