華清宮(崔魯)
華淸宮
華清宮
華清宮
- 〔テキスト〕 『唐詩選』巻七、『全唐詩』巻五百六十七、趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻三十七(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)、『古今詩刪』巻二十二(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、66頁)、『唐詩品彙』巻五十四、他
- 七言絶句。鸞・寒・干(平声寒韻)。
- ウィキソース「全唐詩/卷567」参照。
- 詩題 … 『全唐詩』『唐詩品彙』では「華清宮三首 其一」に作る。『万首唐人絶句』では「華清宮四首 其三」に作る。
- 華清宮 … 陝西省臨潼区の南、驪山の中腹にあった離宮。玄宗と楊貴妃が遊んだ所として有名。唐の初めに太宗が造営し、温泉宮と名づけられた。玄宗によって華清宮と改名された。『長安志』巻十五に「貞観十八年、左屯衛大将軍姜行本に詔して、将に少匠閻立徳をして宮殿を営建することを作さしめんとす。御賜して湯泉宮と名づく。太宗幸するに因って碑を製す。咸亨二年湯泉宮と名づく」(貞觀十八年、詔左屯衞大將軍姜行本、將作少匠閻立德營建宮殿。御賜名溫泉宮。太宗因幸製碑。咸亨二年名溫泉宮)とある。ウィキソース「長安志 (四庫全書本)/卷15」参照。また『元和郡県図志』関内道、京兆府、昭応県の条に「華清宮は、驪山の上に在り。開元十一年、初めに温泉宮を置く。天宝六年改めて華清宮と為す」(華淸宮、在驪山上。開元十一年、初置溫泉宮。天寶六年改爲華淸宮)とある。ウィキソース「元和郡縣圖志/卷01」参照。また『楊太真外伝』巻下(『説郛』巻一百十一)に「上は毎年冬十月、華清宮に幸し、常に冬を経て宮闕に還る。去くには即ち妃と輦を同じくす。華清宮に端正楼有り、即ち貴妃梳洗の所なり。蓮花湯有り、即ち貴妃澡沐の室なり」(上每年冬十月、幸華淸宮、常經冬還宮闕。去即與妃同輦。華淸宮有端正樓、即貴妃梳洗之所。有蓮花湯、即貴妃澡沐之室)とある。ウィキソース「楊太真外傳」参照。ウィキペディア【華清宮】参照。
- この詩は、玄宗の御代に栄華を極めた華清宮が、今では訪れる人もなく荒廃していることを詠んだもの。
- 崔魯 … 生没年不詳。晩唐の詩人。『全唐詩』では「崔櫓」に作り、「一作魯」とある。宣宗の大中八年(854)、進士に及第(『登科記考』巻二十二)。棣州(今の山東省浜州市恵民県)の司馬となった。『無機集』四巻があるという。現存する詩は、すべて十六首。
草遮回磴絕鳴鸞
草は回磴を遮って鳴鸞を絶ち
- 草 … 『万首唐人絶句』『古今詩刪』では「艸」に作る。同義。
- 回磴 … 曲がりくねっている石段。磴は、石段になった坂道。
- 回 … 『唐詩選』『万首唐人絶句』では「囘」に作る。異体字。
- 草遮 … 草が遮るように生い茂っている。
- 鳴鸞 … 天子の車につける鈴。鳴鑾とも書く。『礼記』玉藻篇に「君子、車に在れば、則ち鸞和の声を聞き、行けば則ち佩玉を鳴らす」(君子在車、則聞鸞和之聲、行則鳴佩玉)とある。ウィキソース「禮記/玉藻」参照。
- 鸞 … 『全唐詩』『万首唐人絶句』『古今詩刪』『唐詩品彙』では「鑾」に作る。同義。
- 絶 … 鈴の音が途絶える。天子の行幸がなくなったことを指す。
雲樹深深碧殿寒
雲樹深深として碧殿寒し
- 雲樹 … 雲のかかる樹木。山中に生えた樹木であるためにこういう。梁の劉孝威の「和皇太子春林晩雨」(『古詩紀』巻九十八、『文苑英華』巻百五十三)に「雲樹交わりて密を為し、雨日共に虹を成す」(雲樹交爲密、雨日共成虹)とある。ウィキソース「古詩紀 (四庫全書本)/卷098」参照。
- 深深 … 奥深くまで生い茂っている形容。『万首唐人絶句』では「㴱㴱」に作る。異体字。
- 碧殿 … 青緑色に塗った宮殿。または碧玉で飾られた美しい宮殿。碧は、『説文解字』巻一上、玉部に「石の青美なる者」(石之靑美者)とある。ウィキソース「說文解字/01」参照。
- 寒 … ひっそりとして肌寒く感じる。
明月自來還自去
明月自ずから来り還た自ずから去る
- 明月 … 明るく澄み渡った月。
- 自来 … ひとりでにやって来て。
- 還 … 「また」と読み、「さらに」「再び」と訳す。
- 自去 … ひとりでに去っていく。
更無人倚玉欄干
更に人の玉欄干に倚る無し
- 無人倚玉欄干 … 玉の手すりに倚りかかる美しい人の姿は、たえて見えない。人は、暗に楊貴妃を指していると思われる。李白の「清平調詞三首 其の三」に「沈香亭北闌干に倚る」(沈香亭北倚闌干)とある。ウィキソース「清平調 (名花傾國兩相歡)」参照。
- 玉欄干 … 玉で飾った欄干。玉で造った手すり。玉の欄。
- 欄 … 『唐詩品彙』では「闌」に作る。同義。
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