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華清宮(崔魯)

華淸宮
せいきゅう
さい
  • 七言絶句。鸞・寒・干(上平声寒韻)。
  • ウィキソース「全唐詩/卷567」参照。
  • 詩題 … 『全唐詩』『唐詩品彙』では「華清宮三首其一」に作る。『万首唐人絶句』では「華清宮四首其三」に作る。
  • 華清宮 … 陝西省臨潼りんどう区の南、ざんの中腹にあった離宮。玄宗と楊貴妃が遊んだ所として有名。貞観十八年(644)、唐の太宗によって「湯泉宮」が造営され、高宗の咸亨かんこう二年(671)、「温泉宮」に改称された。天宝六載(747)、玄宗によって「華清宮」と改称された。『長安志』巻十五に「貞観十八年、左屯衛大将軍姜行本に詔して、将に少匠閻立徳をして宮殿を営建することを作さしめんとす。御賜して湯泉宮と名づく。太宗幸するに因って碑を製す。咸亨二年温泉宮と名づく」(貞觀十八年、詔左屯衞大將軍姜行本、將作少匠閻立德營建宮殿。御賜名湯泉宮。太宗因幸製碑。咸亨二年名溫泉宮)とある。ウィキソース「長安志 (四庫全書本)/卷15」参照。また『元和郡県図志』関内道、京兆府、昭応県の条に「華清宮は、驪山の上に在り。開元十一年、初めに温泉宮を置く。天宝六年(載)改めて華清宮と為す」(華淸宮、在驪山上。開元十一年、初置溫泉宮。天寶六年改爲華淸宮)とある。ウィキソース「元和郡縣圖志/卷01」参照。また『楊太真外伝』巻下(『説郛』巻一百十一)に「しょうは毎年冬十月、華清宮にみゆきし、常に冬を経てきゅうけつに還る。去くには即ち妃とれんを同じくす。華清宮に端正楼有り、即ち貴妃せんの所なり。蓮花湯有り、即ち貴妃澡沐そうもくの室なり」(上每年冬十月、幸華淸宮、常經冬還宮闕。去即與妃同輦。華淸宮有端正樓、即貴妃梳洗之所。有蓮花湯、即貴妃澡沐之室)とある。ウィキソース「楊太真外傳」参照。ウィキペディア【華清宮】参照。
  • この詩は、玄宗の御代に栄華を極めた華清宮が、今では訪れる人もなく荒廃していることを詠んだもの。
  • 崔魯 … 生没年不詳。晩唐の詩人。『全唐詩』では「崔櫓」に作り、「一作魯」と注する。宣宗の大中八年(854)、進士に及第(『登科記考』巻二十二)。てい州(今の山東省浜州市恵民県)の司馬となった。『無機集』四巻があるという。現存する詩は、すべて十六首。
草遮回磴絕鳴鸞
くさ回磴かいとうさえぎって鳴鸞めいらん
  • 回磴 … 曲がりくねっている石段。磴は、石段になった坂道。
  • 草遮 … 草が遮るように生い茂っている。
  • 鳴鸞 … 天子の車につける鈴。鳴鑾めいらんとも書く。『礼記』玉藻篇に「君子、車に在れば、則ちらんの声を聞き、行けば則ちはいぎょくを鳴らす」(君子在車、則聞鸞和之聲、行則鳴佩玉)とある。ウィキソース「禮記/玉藻」参照。
  • 絶 … 鈴の音が途絶える。天子の行幸がなくなったことを指す。
雲樹深深碧殿寒
雲樹うんじゅ深深しんしんとして碧殿へきでんさむ
  • 雲樹 … 雲のかかる樹木。山中に生えた樹木であるためにこういう。南朝梁の劉孝威「皇太子の春林晩雨に和す」詩に「雲樹交わりて密を為し、雨日共に虹を成す」(雲樹交爲密、雨日共成虹)とある。ウィキソース「古詩紀 (四庫全書本)/卷098」参照。
  • 碧殿 … 青緑色に塗った宮殿。または碧玉で飾られた美しい宮殿。碧は、『説文解字』巻一上、玉部に「石の青美なる者」(石之靑美者)とある。ウィキソース「說文解字/01」参照。
  • 寒 … ひっそりとして肌寒く感じる。
明月自來還自去
明月めいげつおのずからきたおのずから
  • 明月 … 明るく澄み渡った月。『楚辞』九弁に「明月をあおいで太息たいそくし、列星にしてめいいたる」(卬明月而太息兮、歩列星而極明)とある。太息は、ため息。列星は、空につらなる星。極明は、明け方に至る。ウィキソース「九辯」参照。また、三国魏の文帝(曹丕)の楽府「燕歌行二首」(『楽府詩集』巻三十二、『文選』巻二十七、『玉台新詠』巻九)の第一首に「明月皎皎きょうきょうとして我がしょうを照らし、星漢せいかん西に流れて夜未だきず」(明月皎皎照我床、星漢西流夜未央)とある。皎皎は、明るいさま。星漢は、天の川。未央は、尽きない。終わらない。ウィキソース「燕歌行 (曹丕)」参照。また、三国魏の曹植「公讌こうえんの詩」(『文選』巻二十)に「明月に清景澄み、れっ宿しゅく正にしんたり」(明月澄清景、列宿正參差)とある。列宿は、大空に連なる多くの星。参差は、ばらばらに散らばるさま。ウィキソース「公讌詩 (曹子建)」参照。
  • 自来 … ひとりでにやって来て。
  • 還 … 「また」と読み、「さらに」「再び」と訳す。
  • 自去 … ひとりでに去っていく。
更無人倚玉欄干
さらひとぎょく欄干らんかん
  • 無人倚玉欄干 … 玉の手すりに倚りかかる美しい人の姿は、たえて見えない。人は、暗に楊貴妃を指していると思われる。盛唐の李白「清平調詞三首」の第三首に「沈香ちんこう亭北ていほく闌干らんかんる」(沈香亭北倚闌干)とある。ウィキソース「清平調 (名花傾國兩相歡)」参照。
  • 玉欄干 … 玉で飾った欄干。玉で造った手すり。玉のおばしま
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻七(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻五百六十七(排印本、中華書局、1960年)
  • 趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻三十七(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)
  • 『唐詩品彙』巻五十四([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
  • 『古今詩刪』巻二十二(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、汲古書院)
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