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古別離(韋荘)

古別離
古(こ)別(べつ)離(り)
韋(い)荘(そう)
  • 七言絶句。毿・酣・南(下平声覃韻)。
  • ウィキソース「全唐詩/卷695」参照。
  • 詩題 … 『全唐詩』では「古離別」に作り、「一作多情」と注する。『四部叢刊本』『韋荘集』『箋注本』『楽府詩集』『唐詩別裁集』では「古離別」に作る。『万首唐人絶句』では「古離別二首其一」に作る。
  • 古別離 … 楽府題の一つ。『楽府詩集』の「雑曲歌辞」に属する。古風な調べにならって、別離の心情を詠んだ詩。
  • 韋荘 … 836~910。晩唐の詩人。字(あざな)は端(たん)己(き)。京(けい)兆(ちょう)杜(と)陵(りょう)(陝西省西安市東南)の人。韋応物の子孫。昭宗の乾寧元年(894)、五十九歳で進士に及第し、校書郎に任ぜられた。のちに王建が前蜀を建てたとき、彼に協力し宰相となった。『浣(かん)花(か)集(しゅう)』十巻がある。ウィキペディア【韋荘】参照。
晴煙漠漠柳毿毿
晴煙(せいえん)漠漠(ばくばく)として 柳(やなぎ)毿毿(さんさん)たり
  • 晴煙 … 晴れた空にたなびく霞(かすみ)。煙は、霞。もや。
  • 漠漠 … 一面にぼんやりと立ち込めている様子。南朝斉の謝朓「東田(とうでん)に遊ぶ」詩(『文選』巻二十二)に「遠樹(えんじゅ)は曖(あい)として仟仟(せんせん)たり、生煙(せいえん)は紛(ふん)として漠漠(ばくばく)たり」(遠樹曖仟仟、生煙紛漠漠)とある。ウィキソース「遊東田」参照。
  • 毿毿 … 毛髪や羽毛が細くふさふさと長いさま。ここでは柳の小枝が糸のように細く長く垂れた形容。盛唐の孟浩然「高陽池にて朱二を送る」詩に「緑岸毿毿として楊柳垂る」(綠岸毿毿楊柳垂)とある。ウィキソース「高陽池送朱二」参照。『四部叢刊本』『韋荘集』では「鬖鬖」に作る。『唐詩別裁集』では「毿」に作る。
不那離情酒半酣
離(り)情(じょう)を那(いか)んともせず 酒(さけ)半(なか)ば酣(たけなわ)なり
  • 離情 … 別離の思い。別れるときの辛い思い。
  • 不那 … どうすることもできない。
  • 半酣 … 酒の酔いが半ば程であること。ほろ酔い気分。
更把玉鞭雲外指
更(さら)に玉(ぎょく)鞭(べん)を把(と)りて雲外(うんがい)に指(さ)せば
  • 更 … さらに。さらにまた。
  • 玉鞭 … 玉の飾りがついた鞭(むち)。
  • 玉 … 『四部叢刊本』『韋荘集』『万首唐人絶句』『楽府詩集』『唐詩別裁集』では「馬」に作る。
  • 把 … 手に取る。
  • 雲外 … 雲の彼方。
  • 指 … 指し示す。
斷腸春色在江南
断(だん)腸(ちょう)の春色(しゅんしょく) 江南(こうなん)に在(あ)り
  • 断腸 … 非常に悲しい様子。腸(はらわた)がちぎれるほどの悲痛な思い。後漢の蔡琰(さいえん)(一説に蔡琰に仮託したもの)の楽府「胡笳十八拍」(『楽府詩集』巻五十九、『楚辞後語』巻三)の第五拍に「雁(かり)飛ぶこと高く、邈(はる)かにして尋ね難し、空(むな)しく腸(はらわた)を断ちて思い愔愔(あんあん)たり」(雁飛高兮邈難尋、空斷腸兮思愔愔)とある。ウィキソース「胡笳十八拍」「樂府詩集/059卷」「楚辭集注 (四庫全書本)/後語卷3」参照。また、三国魏の文帝(曹丕)の楽府「燕歌行」(『文選』巻二十七、『玉台新詠』巻九)に「群燕(ぐんえん)辞し帰り雁(かり)南に翔(かけ)る、君が客遊(かくゆう)を念(おも)うて思い腸(はらわた)を断つ」(群燕辭歸雁南翔、念君客遊思斷腸)とある。ウィキソース「燕歌行 (曹丕)」参照。
  • 春色 … 春の景色。春の趣き。南朝斉の謝朓「徐都曹に和す」詩(『文選』巻三十)に「宛洛(えんらく)は遨游(ごうゆう)に佳(よ)く、春色は皇(こう)州(しゅう)に満つ」(宛洛佳遨游、春色滿皇州)とある。宛洛は、宛邑(南陽)と洛陽との二都。遨游は、気ままに遊び楽しむこと。皇州は、帝都の地。ウィキソース「昭明文選/卷30」参照。
  • 断腸春色 … 春景色が作者の悲痛な別離の思いをかきたてる。
  • 江南 … 長江中流・下流の南岸地域。今の江蘇省南部・浙江省西北部・安(あん)徽(き)省南部・江西省南部などを指す。『中國古今地名大辭典』に「長江以南の総称なり。今は江蘇・安徽・江西の三省を通称して江南と為す」(長江以南之總稱。今通稱江蘇安徽江西三省爲江南)とある。
  • 在 … 存在している。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻七(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻六百九十五(排印本、中華書局、1960年)
  • 『浣花集』巻一(『四部叢刊 初編集部』所収)
  • 向迪琮校訂『韋荘集』巻一(人民文学出版社、1958年)
  • 聶安福箋注『韋荘集箋注』巻一(上海古籍出版社、2002年)
  • 趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻三十(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)
  • 『唐詩品彙拾遺』巻四([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
  • 『楽府詩集』巻七十二・雑曲歌辞(北京図書館蔵宋刊本影印、中津濱渉『樂府詩集の研究』所収)
  • 『古今詩刪』巻二十二(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、汲古書院)
  • 『唐詩別裁集』巻二十([清]沈徳潜編、乾隆二十八年教忠堂重訂本縮印、中華書局、1975年)
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