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宮詞(李建勲)

宮詞
きゅう
建勲けんくん
  • 〔テキスト〕 『唐詩選』巻七、『全唐詩』巻七百三十九、『李丞相詩集』巻下(『四部叢刊 続編集部』所収)、『古今詩刪』巻二十二(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、66頁)、『唐詩品彙』巻五十四、他
  • 七言絶句。閒・斑・閒(平声刪韻)。
  • ウィキソース「宫詞 (李建勳)」参照。
  • 宮詞 … 宮中のことを題材として詠う歌。ここでは後宮の女性の嘆きを詠んでいる。
  • 李建勲 … 872~952。晩唐の詩人。李徳誠の子。あざなぎょう。広陵(今の江蘇省揚州市江都区)の人。南唐の烈祖べんに仕えてその建国に功があり、宰相の地位である中書侍郎・同平章事に任命された。南唐の昇元五年(941)、辞任して家に帰った。後に再び呼び戻され、司空を拝命、さらに司徒となった。鍾山(今の江蘇省南京市の東北)に別荘を建てて引退したので、鍾山公の称号を授けられた。『李丞相詩集』二巻がある。ウィキソース「唐才子傳/卷10」、ウィキペディア【李建勛】(中文)参照。
宮門長閉舞衣閒
きゅうもんながざして舞衣ぶいしずかなり
  • 宮門 … 宮殿の門。ここでは後宮の門。
  • 長閉 … 長く閉ざされたままである。天子の訪問がなく、寵愛を失ったことを指す。
  • 長 … 久しく。『唐詩品彙』では「常」に作る。
  • 舞衣 … 舞いの衣。舞いの衣装。
  • 間 … ひまで用がないこと。ここでは着ることがないので仕舞い込んでいること。間は閑に同じ。『説文解字』巻十二上、門部に「隙なり」(隟也)とある。「隟」は「隙」の異体字。ウィキソース「說文解字/12」参照。『四部叢刊本』『古今詩刪』『唐詩品彙』では「閑」に作る。同義。
略識君王鬢已斑
る 君王くんのう びんすでまだらなるを
  • 略 … 「ほぼ」と読む。だいたい。おおかた。おおむね。『古今詩刪』『唐詩品彙』では「畧」に作る。異体字。
  • 識 … わかっている。
  • 君王 … みかど。天子。
  • 鬢 … 左右側面の耳ぎわの毛。鬢の毛。『説文解字』巻九上、髟部に「頰の髪なり」(頰髮也)とある。ウィキソース「說文解字/09」参照。また『釈名しゃくみょう』釈形体篇に「頰と耳との旁に在るを髯と曰う、……其の上の髪に連なるを鬢と曰う」(在頰耳旁曰髯、……其上連髮曰鬢)とある。ウィキソース「釋名」参照。『古今詩刪』『唐詩品彙』では「髩」に作る。異体字。
  • 已 … 『全唐詩』『四部叢刊本』『唐詩品彙』では「便」に作る。
  • 斑 … 鬢の毛が白黒まだらなさま。
却羨落花春不管
かえってうらやむ らっ はるかんせず
  • 却羨 … かえって羨ましいのは。むしろ羨ましいのは。予期に反しての意を含む。
  • 却 … 『唐詩選』『全唐詩』では「卻」に作る。異体字。
  • 落花春 … 散りゆく花。散り落ちる花びら。
  • 春不管 … 春はかまってくれない。春が落花を拘束しないこと。管は、つかさどる。管理する。宮中に拘束されている女性と対比している。
御溝流得到人閒
御溝ぎょこうなが人間じんかんいたるを
  • 御溝 … 宮中を流れるお堀。馬縞『中華古今注』巻上、長安禦溝の条に「ちょうあん御溝ぎょこうは、これ楊溝ようこうう。高楊こうようかみうればなり。……禁溝きんこうう。しゅうなんざんみずき、きゅうだいよりぐ。所謂いわゆる御溝ぎょこうなり」(長安御溝、謂之楊溝。植高楊於其上也。……亦曰禁溝。引終南山水、從宮内過。所謂御溝)とある。ウィキソース「古今注/中華古今註」参照。
  • 流得 … 御溝の水の流れに乗って。
  • 人間 … 宮中に対し、自由な世間。長安の市中を指す。
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