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江楼書感(趙嘏)

江樓書感
江楼こうろうにてかんしょ
ちょう
  • 〔テキスト〕 『唐詩選』巻七、『全唐詩』巻五百五十、趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻三十一(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)、『古今詩刪』巻二十二(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、65頁)、『才調集』巻七、『唐詩品彙』巻五十三、他
  • 七言絶句。然・天・年(平声先韻)。
  • ウィキソース「江樓舊感」参照。
  • 詩題 … 『全唐詩』では「江樓舊感」に作り、題下に「一作感懷」とある。『万首唐人絶句』では「江樓舊感」に作る。『才調集』では「感懷」に作る。
  • 江楼 … 川のほとりにある高楼。
  • この詩は、川のほとりにある高楼に登り、感慨を書き記したもの。転句の「人」とは、作者の愛妾を指すのではないかという説がある。作者が浙西(浙江省を流れる銭塘江の西側の地域)に住んでいたとき、一人の美しい愛妾を溺愛していたが、科挙のため都へ上っている間に、地元の長官が彼女を見初めて自分の屋敷に連れて行ってしまった。翌年、進士に及第してこのことを聞き、詩を一首作って嘆いた。長官もそれを聞き、妾を長安の作者のもとへ送り届けた。二人は再会して喜びあったが、その二晩の後、妾は死んだという。『唐才子伝』に「先に嘏、浙西に家せしとき、美姫びき有りて溺愛す。計偕けいかいするに及び、留めて母に侍せしむ。会〻たまたま中元に鶴林寺に遊ぶ。浙の帥、窺い見て之を悦び、奪い帰る。明年、嘏及第して、自ら傷みて詩を賦して曰く、……帥之を聞きて、殊に惨惨として、介して姫を送りて長安に入らしむ。時に嘏、方に関を出で、途次横水おうすい駅にて、馬上に於いて相遇う。姫因りて嘏を抱きて痛哭し、しん宿しゅくにしてしゅっす。遂に横水のきたに葬る。嘏、思慕して已まず。臨終に見る所有り。時まさに四十余」(先嘏家浙西、有美姬溺愛。及計偕、留侍母。會中元遊鶴林寺。浙帥窺見悅之、奪歸。明年嘏及第、自傷賦詩曰、……帥聞之、殊慘慘、遣介送姬入長安。時嘏方出關、途次橫水驛、於馬上相遇。姬因抱嘏痛哭、信宿而卒。遂葬於橫水之陽。嘏思慕不已。臨終目有所見。時方四十餘)とある。美姫は、美しい女性。計偕は、挙人(官吏登用試験の地方試験の合格者)が会試(都での試験)を受けに行くこと。中元は、陰暦七月十五日。信宿は、二晩泊まること。ウィキソース「唐才子傳/卷7」参照。
  • 趙嘏 … 生没年不詳。晩唐の詩人。山陽(江蘇省淮安区)の人。あざなは承祐。武宗の会昌四年(844)、進士に及第。大中年間、渭南(陝西省臨渭区)の尉となったが、それきり官位は上がらなかった。しかし、詩名は高く、杜牧が彼の「長安晩秋」詩の「残星ざんせい幾点いくてんがんさいよこぎり、ちょうてき一声いっせいひとろうる」(殘星幾點雁橫塞、長笛一聲人倚樓)を激賞したため、世に「ちょうろう」とも呼ばれたという。『渭南集』及び『編年詩』二巻がある。ウィキソース「長安晚秋」、ウィキペディア【趙嘏】参照。
獨上江樓思渺然
ひと江楼こうろうのぼりて おもびょうぜん
  • 独 … ただ一人。
  • 江楼 … 川辺の高楼。川沿いの高楼。
  • 思 … わが思い。
  • 渺然 … 果てしなく広がる。果てしないさま。『才調集』では「眇然」に作る。眇然は、高遠なさま。『古今詩刪』『唐詩品彙』では「悄然」に作る。悄然は、しょんぼりとしたさま。
月光如水水連天
月光げっこうみずごとく みずてんつらなる
  • 如水 … 水のように冴えわたる。水のように澄みわたる。
  • 水連天 … 川の水は大空まで続いている。
  • 連 … 『全唐詩』『万首唐人絶句』『才調集』では「如」に作る。
同來翫月人何處
おなじくきたりてつきもてあそびしひといずれのところ
  • 同来翫月人 … いっしょにこの高楼に登り、月を眺めた人は。
  • 翫月 … 月を眺めて楽しむこと。
  • 翫 … 『全唐詩』では「望」に作り、「一作玩」とある。『万首唐人絶句』では「望」に作る。『才調集』では「看」に作る。
  • 何処 … 今はどこにいるのだろうか。
  • 處 … 『才調集』『唐詩品彙』では「在」に作る。『古今詩刪』では「」に作る。異体字。
風景依稀似去年
風景ふうけい依稀いきとして去年きょねんたり
  • 風景 … この風景だけは。
  • 依稀 … よく似ていること。彷彿・髣髴と同じ。
  • 似去年 … 去年と同じように見える。
  • 似 … 『万首唐人絶句』では「佀」に作る。異体字。
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