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秋思(許渾)

秋思
秋(しゅう)思(し)
許渾(きょこん)
  • 七言絶句。秋・遊・頭(下平声尤韻)。
  • ウィキソース「秋思 (許渾)」「丁卯集 (四部叢刊本)/卷上」参照。
  • 詩題 … 秋の物思い。楽府題の一つ。ただし『楽府詩集』には収録されていない。『全唐詩』には、題下に「一作秋日」と注する。『許用晦文集』『丁卯集』では「秋日」に作る。
  • この詩は、秋の物思いを詠んだもの。自身の老いを嘆いている。
  • 許渾 … 791~854?。晩唐の詩人。潤州丹陽(江蘇省丹陽市)の人。字(あざな)は用晦(ようかい)。一説に仲(ちゅう)晦(かい)。大和六年(832)、進士に及第。監察御史、虞部(ぐぶ)員外郎、睦(ぼく)州(浙江省)の刺史、郢(えい)州(湖北省)の刺史を歴任。『許用晦文集』二巻・拾遺二巻、『丁卯(ていぼう)集』二巻がある。ウィキペディア【許渾】参照。
琪樹西風枕簟秋
琪(き)樹(じゅ)の西風(せいふう) 枕簟(ちんてん)の秋(あき)
  • 琪樹 … 美しい木々。琪は、玉(ぎょく)の名。珠樹に同じ。庭木を喩える。東晋の孫綽「天台山に遊ぶの賦」(『文選』巻十一)に「建木(けんぼく)景(かげ)を千尋(せんじん)に滅(めっ)し、琪(き)樹(じゅ)璀璨(さいさん)として珠(たま)を垂(た)る」(建木滅景於千尋、琪樹璀璨而垂珠)とある。ウィキソース「遊天台山賦」参照。
  • 西風 … 秋風。
  • 枕簟 … 枕(まくら)と簟(たかむしろ)。簟は、竹で編んだむしろ。転じて、夏の寝具。
  • 枕 … 『全唐詩』には「一作華」と注する。『許用晦文集』『丁卯集』では「華」に作る。
  • 秋 … (枕簟(ちんてん)がひんやりとして)秋の気配を感じさせる。秋の気配が忍び寄ってくる。
楚雲湘水憶同遊
楚(そ)雲(うん) 湘(しょう)水(すい) 同遊(どうゆう)を憶(おも)う
  • 楚雲 … 楚の空に浮かぶ雲。楚は、湖北・湖南省一帯を指す。
  • 湘水 … 湘江の流れ。湘江は、広西チワン族自治区に発して湖南省を北上し、瀟(しょう)水(すい)と合流して洞庭湖に注ぐ川。ウィキペディア【湘江】参照。
  • 水 … 『全唐詩』には「一作月」と注する。『許用晦文集』『丁卯集』では「月」に作る。
  • 同遊 … 昔いっしょに遊んだ友人。
  • 憶 … 思い出す。懐かしい。
高歌一曲掩明鏡
高(こう)歌(か)一(いっ)曲(きょく) 明(めい)鏡(きょう)を掩(おお)う
  • 高歌一曲 … 声高らかに一節(ひとふし)歌うこと。一曲は、一節(ひとふし)。
  • 掩明鏡 … 鏡を掩いかくす。明鏡は、曇りがない鏡。掩は、掩いかくす。ふたをする。伏せる。前漢の班(はん)婕(しょう)妤(よ)「擣(とう)素(そ)の賦」に「秋風に対して鏡を掩う」(對秋風而掩鏡)とあるのを踏まえる。ウィキソース「擣素賦」参照。
昨日少年今白頭
昨日(さくじつ)の少(しょう)年(ねん) 今(いま)は白頭(はくとう)
  • 昨日少年 … 「昨日は少年」と読んでもよい。つい昨日までは若者であったが。三国魏の阮籍「詠懐詩八十二首」の第四首(『文選』巻二十三では十七首中第五首)に「朝(あした)には媚(び)少(しょう)年(ねん)たるも、夕(せき)暮(ぼ)には醜(しゅう)老(ろう)と成る」(朝爲媚少年、夕暮成醜老)とある。ウィキソース「詠懷詩五言八十二首」「詠懷詩十七首」参照。
  • 今 … 今はもう。
  • 白頭 … 白髪頭になってしまっているではないか。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻七(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻五百三十八(排印本、中華書局、1960年)
  • 『増註三体詩』巻一・七言絶句・実接(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)
  • 『許(きょ)用晦(ようかい)文集』巻一(『続古逸叢書』所収)
  • 『丁卯(ていぼう)集』巻上(『四部叢刊 初編集部』所収)
  • 趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻二十九(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)
  • 『唐詩品彙』巻五十三([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
  • 『古今詩刪』巻二十二(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、汲古書院)
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