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題延平剣潭(欧陽詹)

題延平劍潭
延平(えんぺい)の剣潭(けんたん)に題(だい)す
欧陽(おうよう)詹(せん)
  • 七言絶句。難・漫・寒(上平声寒韻)。
  • ウィキソース「題延平劍潭」参照。
  • 詩題 … 延平は、今の福建省南平市延平区。剣潭は、閩江の上流にあった渡し場。延平津・剣津・剣渓とも呼ばれる。建渓・西渓(富屯渓)・沙渓が合流する辺りに位置する。昔、晋の雷煥は、張華と協力して地中から名剣二ふりを掘り出し、一つを張華に与え、もう一つを自分で所持した。後に張華が殺され、剣は所在不明となった。その後、雷煥も死んでその子がその剣を帯び、この渡し場を渡ったところ、剣が自然に抜け出て川に落ちた。川の中には剣は見当たらず、二匹の竜が泳いでいたという。『晋書』張華伝に「煥、県に到り、獄屋の基を掘り、地に入ること四丈余、一石の函を得たり。光気非常にして、中に双剣有り。並びに題を刻む。一を龍泉と曰い、一を太阿と曰う。……使いを遣わして一剣並びに土を送りて華に与え、一を留めて自ら佩ぶ。……華誅せられ、剣の所在を失う。煥卒(しゅっ)し、子の華、州の従事と為る。剣を持じて行き、延平津を経しとき、剣忽ち腰間より躍り出でて水に堕つ。人をして水に没(もぐ)りて之を取らしむるも、剣を見ず。但だ両竜の各〻長さ数丈なるを見る。蟠縈(はんえい)し文章有り、没(もぐ)りし者懼れて反る。須臾にして光彩水を照らし、波浪驚沸す。是に於いて剣を失う」(煥到縣、掘獄屋基、入地四丈餘、得一石凾。光氣非常、中有雙劍。竝刻題。一曰竜泉、一曰太阿。……遣使送一劍竝土與華、留一自佩。……華誅、失劍所在。煥卒、子華爲州從事。持劍行經延平津、劍忽於腰閒躍出墮水。使人沒水取之、不見劍。但見兩龍各長數丈。蟠縈有文章、沒者懼而反。須臾光彩照水、波浪驚沸。於是失劍)とある。ウィキソース「晉書/卷036」参照。
  • この詩は、作者が都へ上る途中、延平(今の福建省南平市延平区)の剣潭まで来て、ここの渡し場を渡ったとき、この地にまつわる宝剣の伝説を思い出し、当時を偲んで詠んだもの。
  • 欧陽詹 … 755?~800。中唐の詩人。欧陽が姓。名は詹。泉州晋江(福建省晋江市)の人。字(あざな)は行周。貞元八年(792)、韓愈らとともに進士に及第。貞元十五年(799)、国子監四門助教に任ぜられた。韓愈を推挙して四門博士にした。貞元十六年(800)、長安にて客死。韓愈は彼のために「欧陽生哀辞」と「哀辞の後に題す」という二文を書いている。ウィキソース「全唐文/卷0567」参照。『欧陽行周文集』十巻が『四部叢刊 初編』に収録されている。ウィキペディア【欧陽詹】参照。
想像精靈欲見難
精霊(せいれい)を想像(そうぞう)して 見(み)んと欲(ほっ)すれども難(かた)し
  • 精霊 … 精妙なる霊気。ここでは竜に化した宝剣の霊気。南朝梁の江淹「清思詩五首」の第五首に「草木(そうもく)根蔕(こんたい)に還(かえ)り、精霊(せいれい)妙(みょう)理(り)に帰(き)す」(草木還根蔕、精靈歸妙理)とある。ウィキソース「古詩紀 (四庫全書本)/卷086」参照。
  • 想像 …心に思い浮かべること。『楚辞』遠遊に「旧(きゅう)故(こ)を思(おも)いて以(もっ)て想像(そうぞう)し、長(ちょう)太息(たいそく)して涕(なみだ)を掩(ぬぐ)う」(思舊故以想像兮、長太息而掩涕)とある。ウィキソース「楚辭/遠遊」参照。
  • 像 … 『全唐詩』『四部叢刊本』『万首唐人絶句』では「象」に作る。
  • 欲見難 … 見たいと思ってもできそうにない。
通津一去水漫漫
通津(つうしん) 一(ひと)たび去(さ)って水(みず)漫漫(まんまん)たり
  • 通津 … 渡し場。通は、四通八達。四方八方に通じていること。津は、船着き場。渡し場。ここでは剣潭を指す。劉宋の謝瞻「王(おう)撫(ぶ)軍(ぐん)、庾(ゆ)西陽(せいよう)との集いにて別る。時に予(よ)章(しょう)太守(たいしゅ)と為(な)る。庾(ゆ)は徴(め)されて東に還る」詩(『文選』巻二十)に「頹陽(たいよう)は通津(つうしん)を照(て)らし、夕陰(せきいん)は平陸(へいりく)に曖(くら)し」(頹陽照通津、夕陰曖平陸)とある。ウィキソース「王撫軍庾西陽集別時為豫章太守庾被徵還東」参照。
  • 一去 … ここでは宝剣が水中に沈み去ったということ。
  • 水漫漫 … 川の水が広々と果てしなく流れるさま。南朝梁の沈約「早(つと)に定山(ていざん)を発(はっ)す」詩(『文選』巻二十七)に「海(うみ)に帰(き)して流(なが)れは漫漫(まんまん)たり、浦(ほ)より出(い)でて水(みず)は浅浅(せんせん)たり」(歸海流漫漫、出浦水淺淺)とある。ウィキソース「昭明文選/卷27」参照。
空餘千載凌霜色
空(むな)しく余(あま)す 千載(せんざい) 霜(しも)を凌(しの)ぐ色(いろ)
  • 空余 … ただ空しく残っているのは。ここでは宝剣が人に使われることもなくの意。
  • 千載 … 千年の後(のち)までも。『全唐詩』『四部叢刊本』『万首唐人絶句』では「昔日」に作る。
  • 凌霜色 … 霜にも勝る冴えて凛然とした刃の色。宝剣の刃の形容。劉宋の謝恵連「甘賦」に「性(せい)耿介(こうかい)として霜(しも)を凌(しの)ぐ」(性耿介而凌霜)とある。ウィキソース「漢魏六朝百三家集 (四庫全書本)/卷071」参照。
長與澄潭白日寒
長(とこ)しえに澄(ちょう)潭(たん)と与(とも)に白日(はくじつ)寒(さむ)し
  • 長 … 永遠に。いつまでも。
  • 澄潭 … 清く澄み切った潭(ふち)。
  • 白日寒 … 白昼の日に照り映えて寒々としている。
  • 白日 … 『全唐詩』では「生晝」に作り、「一作白日」と注する。『四部叢刊本』『万首唐人絶句』では「生晝」に作る。こちらは「昼(ちゅう)寒(かん)を生(しょう)ず」(生晝寒)と読む。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻七(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻三百四十九(排印本、中華書局、1960年)
  • 『欧陽行周文集』巻三(『四部叢刊 初編集部』所収)
  • 趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻二十二(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)
  • 『唐詩品彙』巻五十二([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
  • 『古今詩刪』巻二十二(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、汲古書院)
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