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涼州詞(張籍)

涼州詞
涼州りょうしゅう
ちょうせき
  • 〔テキスト〕 『唐詩選』巻七、『全唐詩』巻三百八十六、『唐張司業詩集』巻六(『四部叢刊 初編集部』所収)、『楽府詩集』巻七十九、趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻二十五(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)、『古今詩刪』巻二十二(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、64頁)、『唐詩品彙』巻五十一、『唐人万首絶句選』巻五、他
  • 七言絶句。流・秋・州(平声尤韻)。
  • ウィキソース「涼州詞三首」「唐張司業詩集 (四部叢刊本)/卷第六」参照。
  • 詩題 … 『四部叢刊本』では「涼州詞三首 其二」に作る。『全唐詩』『万首唐人絶句』『楽府詩集』では「涼州詞三首 其三」に作る。『唐詩品彙』では「涼州詞二首 其二」に作る。
  • 涼州詞 … 楽府題。涼州は、現在の甘粛省武威市。玄宗の開元年間、西涼府の都督であった郭知運が採集し朝廷に献上した涼州一帯の楽曲。辺境の地に出征した兵士の心情を詠じたもの。『新唐書』礼楽志に「天宝の楽曲は、皆辺地の名を以てす。涼州・伊州・甘州の類の若し」(天寶樂曲、皆以邊地名。若涼州、伊州、甘州之類)とある。ウィキソース「新唐書/卷022」参照。また『楽府詩集』近代曲辞、涼州歌に「楽苑に曰く、涼州は宮調曲にて、開元中、西涼府の都督郭知運進む」(樂苑曰、涼州宮調曲、開元中、西涼府都督郭知運進)とある。ウィキソース「樂府詩集/079卷」参照。
  • この詩は、辺境の地の風物を詠み、また辺境を守る将軍たちが異民族を打ち破ろうとする気概のないことを嘆いている。
  • 張籍 … 768~830?。中唐の詩人。しゅうこう(安徽省)の人。原籍はぐん(江蘇省)。あざなぶんしょう。貞元十五年(799)、進士に及第。すいいん外郎がいろうこくぎょうなどを歴任した。『張司業詩集』八巻がある。ウィキペディア【張籍】参照。
鳳林關裏水東流
鳳林関ほうりんかん みず ひがしなが
  • 鳳林関 … 今の甘粛省臨夏市の東北、黄河の南岸にあった関所。『新唐書』地理志に「鳳林、……北に鳳林関有り」(鳳林、……北有鳳林關)とある。ウィキソース「新唐書/卷040」参照。
  • 裏 … ~の中。~のうち。場所をあらわす接尾辞。
  • 水 … 黄河の上流の大夏河を指す。
白草黃楡六十秋
白草はくそうこう 六十ろくじっしゅう
  • 白草 … 寒さのため白く枯れた草。辺境特有の草。『漢書』西域伝に「烏秅うだ国王は、烏秅城を治む。……山居して石間にでんす。白草有り、石をかさねて室をつくる。民、手を接して飲む」(烏秅國王、治烏秅城。……山居田石閒。有白草、累石爲室。民接手飮)とある。ウィキソース「漢書/卷096上」参照。
  • 草 … 『万首唐人絶句』では「艸」に作る。同義。
  • 黄楡 … 葉の黄ばんだにれの木。秦の蒙恬もうてん将軍が匈奴を撃退し、にれの木を植えて要塞を作ったことに基づく。『漢書』韓安国伝に「蒙恬もうてんしんためおかすに、数千すうせんひらき、かわもっさかいし、いしかさねてしろし、にれえてさいす」(蒙恬爲秦侵胡、辟數千里、以河爲竟、累石爲城、樹楡爲塞)とある。ウィキソース「漢書/卷052」参照。
  • 楡 … 『四部叢刊本』『楽府詩集』『古今詩刪』『唐詩品彙』『唐人万首絶句選』では「榆」に作る。異体字。
  • 六十秋 … 六十年。秋は、年。歳月。代宗の広徳二年(764)、涼州がばん(チベット人が建てた統一王国)に占領されてから約六十年という意。
邊將皆承主恩澤
へんしょう みなしゅ恩沢おんたくくるも
  • 辺将 … 辺境の将軍。国境守備軍の将軍。
  • 主恩沢 … 天子の恩寵。君の御恩。
無人解道取涼州
ひと涼州りょうしゅうるを解道かいどうする
  • 取 … 攻め取る。取り戻す。奪還する。
  • 解道 … 理解する。知る。道は、動詞に添えられた助字。現代中国語の「知道」に同じ。Weblio日中中日辞典「知道」参照。李白の「金陵城西楼月下の吟」に「解道かいどうす、ちょうこうじょうれんごときを」(解道澄江淨如練)とある。ウィキソース「金陵城西樓月下吟」参照。
  • 解 … 『四部叢刊本』『古今詩刪』では「觧」に作る。異体字。
  • 無人解道取涼州 … 涼州の土地を奪還することを心得ている者が一人もいない。
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