夜送趙縦(楊烱)
夜送趙縱
夜、趙縦を送る
夜、趙縦を送る
趙氏連城璧
趙氏 連城の璧
- 趙氏 … 戦国時代、趙の王、恵文王。在位前298~前266。名は何。武霊王の子。廉頗・藺相如らを用い、斉・魏と戦って国の威力を高めた。ウィキペディア【恵文王 (趙)】参照。
- 連城璧 … 趙の恵文王の持っていた「和氏の璧」とよばれる宝玉を、秦の昭王が十五の城を連ねて交換したいと言ったので連城の璧という。『史記』藺相如伝に「趙の恵文王の時、楚の和氏の璧を得たり。秦の昭王之を聞き、人をして趙王に書を遺らしめ、願わくは十五城を以て璧に易えんと請う。……秦王、章台に坐して相如を見る。相如、璧を奉じて秦王に奏む。秦王大いに喜び、伝えて以て美人及び左右に示す。左右、皆な万歳と呼ぶ。相如、秦王の趙に城を償うに意無きを視、乃ち前みて曰く、璧に瑕有り、請う王に指示せん、と。王、璧を授く。相如、因りて璧を持ち、却立して柱に倚り、怒髪上りて冠を衝く。秦王に謂いて曰く、……臣、大王の趙王に城邑を償うに意無きを観、故に臣復た璧を取る。大王必ず臣を急にせんと欲せば、臣の頭、今、璧と倶に柱に砕けん、と。相如、其の璧を持ち、柱を睨み、以て柱に撃たんと欲す。秦王、其の璧を破らんことを恐れ、乃ち辞謝して固く請い、有司を召して図を案じ、此れより以往十五都を趙に予えよと指さす」(趙惠文王時、得楚和氏璧。秦昭王聞之、使人遺趙王書、願以十五城請易璧。……秦王坐章臺見相如。相如奉璧奏秦王。秦王大喜、傳以示美人及左右。左右皆呼萬歳。相如視秦王無意償趙城、乃前曰、璧有瑕、請指示王。王授璧。相如因持璧、卻立倚柱、怒髮上衝冠。謂秦王曰、……臣觀大王無意償趙王城邑、故臣復取璧。大王必欲急臣、臣頭今與璧倶碎於柱矣。相如持其璧、睨柱、欲以撃柱。秦王恐其破璧、乃辭謝固請、召有司案圖、指從此以往十五都予趙)とある。ウィキソース「史記/卷081」参照。また、南朝陳の張正見の楽府「関山月」(『古詩紀』巻一百十二)に「暈は連城の璧を逐い、輪は出塞の車に随う」(暈逐連城璧、輪隨出塞車)とある。暈は、月のかさ。輪は、月輪。ウィキソース「古詩紀 (四庫全書本)/卷112」参照。
由來天下傳
由来 天下に伝う
- 由来 … かねてより。以前から。元来に同じ。劉宋の謝霊運「田南に園を樹て、流れを激し援を植う」詩(『文選』巻三十)に「樵隠は倶に山に在るも、由来事は同じからず」(樵隱倶在山、由來事不同)とある。援は、生垣。樵隠は、木こりと隠者。事不同は、仕事は同じではない。ウィキソース「昭明文選/卷30」参照。
- 天下伝 … (宝として)天下に伝えられてきたものだ。『史記』藺相如伝に「相如、秦王特だに詐詳を以て趙に城を予うるを為し、実は得可からざらんと度り、乃ち秦王に謂いて曰く、和氏の璧は、天下の共に伝えて宝とする所なり、と」(相如度秦王特以詐詳爲予趙城、實不可得、乃謂秦王曰、和氏璧、天下所共傳寶也)とあるのに基づく。ウィキソース「史記/卷081」参照。また、西晋の盧諶「覧古の詩」(『文選』巻二十一)に「趙氏に和璧有り、天下伝えざる無し。秦人は来たりて市わんことを求む、厥の価は徒だ空言のみ。……連城は既に偽り往き、荊玉も亦た真に還る」(趙氏有和璧、天下無不傳。秦人來求市、厥價徒空言。……連城既偽往、荊玉亦眞還)とある。ウィキソース「覽古詩 (盧諶)」参照。
送君還舊府
君が旧府に還るを送れば
- 旧府 … ここでは、趙縦がもと働いていた役所の意と、趙縦の郷里の意との二つの解釈があり、どちらでもよい。府は、役所の意のほか、唐から清代にかけての行政区画の呼称でもあり、州の上位に位置し、州・県を統轄する。『晋書』羊祜伝に「時に長吏官を喪えば、後人之を悪みて、多く旧府を毀壊す」(時長吏喪官、後人惡之、多毀壞舊府)とある。長吏は、地位の高い役人。ウィキソース「晉書/卷034」参照。また、中唐の武元衡「盧起居を送る」詩(『唐詩選』巻七)に「旧府 東山 余妓在り、重ねて歌舞を将って君が帰るを送らん」(舊府東山餘妓在、重將歌舞送君歸)とある。起居は、官名。天子の側近に仕えて、その言行を記録する官。ウィキソース「全唐詩/卷317」参照。
- 送 … 見送る。
明月滿前川
明月 前川に満つ
- 明月 … 明るく輝く月の光。『楚辞』九弁に「明月を卬いで太息し、列星に歩して明に極る」(卬明月而太息兮、歩列星而極明)とある。太息は、ため息。列星は、空に列なる星。極明は、明け方に至る。ウィキソース「九辯」参照。また、三国魏の文帝(曹丕)の楽府「燕歌行二首」(『楽府詩集』巻三十二、『文選』巻二十七、『玉台新詠』巻九)の第一首に「明月皎皎として我が床を照らし、星漢西に流れて夜未だ央きず」(明月皎皎照我床、星漢西流夜未央)とある。皎皎は、明るいさま。星漢は、天の川。未央は、尽きない。終わらない。ウィキソース「燕歌行 (曹丕)」参照。また、三国魏の曹植「公讌の詩」(『文選』巻二十)に「明月に清景澄み、列宿正に参差たり」(明月澄清景、列宿正參差)とある。列宿は、大空に連なる多くの星。参差は、ばらばらに散らばるさま。ウィキソース「公讌詩 (曹子建)」参照。
- 前川 … 目の前の川面。盛唐の李白「廬山の瀑布の水を望む二首」詩(『全唐詩』巻一百八十)の第二首に「日は香炉を照らして紫煙を生ず、遥かに看る 瀑布の前川に挂かるを」(日照香爐生紫煙、遙看瀑布挂前川)とある。ウィキソース「望廬山瀑布水二首」参照。『文苑英華』『唐詩紀事』では「秦川」に作る。
- 満 … (月の光が)満ち溢れる。『全唐詩』には「一作照」と注する。『文苑英華』には「集作照」と注する。
詩型・韻字
- 五言絶句。
- 傳・川(下平声先韻)。
テキスト
- 『箋註唐詩選』巻六(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
- 『全唐詩』巻五十(排印本、中華書局、1960年)
- 『唐詩解』巻二十一(順治十六年刊、内閣文庫蔵)
- 『唐詩品彙』巻三十八([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
- 『文苑英華』巻二百六十六(影印本、中華書局、1966年)※詩題:夜送
- 『唐詩紀事』巻七([宋]計有功輯撰、上海古籍出版社、1987年)
- 『古今詩刪』巻二十(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、汲古書院)
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