題袁氏別業(賀知章)
題袁氏別業
袁氏の別業に題す
袁氏の別業に題す
- 五言絶句。泉・錢(平声先韻)。
- 『全唐詩』巻112所収。ウィキソース「題袁氏別業」参照。
- 題袁氏別業 … 『全唐詩』には「一作偶遊主人園」とある。「偶遊」は、たまたま遊ぶ。
- 袁氏 … 不詳。
- 別業 … 別荘。
- 題 … 詩を作って、壁などに書きつけること。
- 晋の王献之(字は子敬)が会稽から呉郡を通ったとき、顧辟彊という人が名園を持っていると聞き、主人とは一面識もなかったが、すぐにおしかけて行った。顧の家ではちょうど賓客を集めて宴会の最中であった。王献之は園庭を見回った後、傍若無人に庭のよしあしを批評したという。この詩は、『世説新語』簡傲篇に見えるこの故事を暗に踏まえている。
- 賀知章 … 659~744。盛唐の詩人。字は季真。会稽永興(浙江省)の人。証聖元年(695)、進士に及第。諸官を歴任の後、開元十三年(725)に礼部侍郎に至った。杜甫の「飲中八仙歌」に詠まれた一人。ウィキペディア【賀知章】参照。
主人不相識
主人 相識らず
- 主人 … 袁氏を指す。
- 不相識 … 知り合いではないが。
- 主人不相識 … 『世説新語』簡傲篇の「先に主人を識らず」(先不識主人)とある言葉を借用している。
偶坐爲林泉
偶坐するは林泉の為なり
- 偶坐 … 向かい合って座る。対座する。
- 林泉 … 庭園のこと。
莫謾愁沽酒
謾に酒を沽うを愁うる莫かれ
- 謾 … みだりに。むやみに。やたらに。「漫」に同じ。
- 沽 … 買う。
- 莫愁 … 心配は御無用。
囊中自有錢
囊中 自ずから銭有り
- 囊中 … 財布の中。
- 自有銭 … 自然と銭も出て来るでしょう。
- 囊中自有銭 … 三好達治は『新唐詩選』(岩波新書、1952年)で「最後の一句は、囊中ここに酒代くらいは持ち合わしていますよ、というのではない。まして相手の囊中をいうのでも、さらさらない。誰の財布をさすのでもない。財布があれば銭がある、というくらいのつかぬことをいうのである」と解釈している。
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