燕歌行二首 其一(曹丕)
燕歌行二首 其一
燕歌行二首 其の一
燕歌行二首 其の一
- 〔テキスト〕 『楽府詩集』巻三十二、『先秦漢魏晋南北朝詩』魏詩巻四、『古詩源』巻五 魏詩、『古詩賞析』巻八 魏詩、『文選』巻二十七、『玉台新詠』巻九、他
- 七言古詩。涼・霜・翔・腸・鄉・方・房・忘・裳・商・長・牀・央・望・梁(平声陽韻)。毎句韻。
- ウィキソース「燕歌行 (曹丕)」「樂府詩集/032卷」参照。
- 燕歌行 … 楽府題。「燕」は現在の河北省一帯。行は、歌・曲の意。北征している夫を思う妻の情を詠ったもの。
- 曹丕 … 187~226。三国時代、魏の初代皇帝。諡号は文帝。在位220~226。曹操の長子。曹植は同母弟。後漢の献帝を廃して帝位についた。洛陽を都と定めた。九品中正法を施行。著『典論』など。ウィキペディア【曹丕】参照。
秋風蕭瑟天氣涼
秋風蕭瑟として 天気涼しく
- 蕭瑟 … ものさびしく吹くさま。
- 天気 … 大気。気候。
草木搖落露爲霜
草木揺落して 露 霜と為る
- 揺落 … 枯れ葉が揺れながら落ちること。
群燕辭歸雁南翔
群燕辞し帰り 雁 南に翔る
- 群燕 … 燕の群れ。
- 雁 … 『楽府詩集』では「鵠」に作る。「鵠」は、くぐい。白鳥の別称。
- 翔 … 羽を大きく広げて飛ぶ。
念君客遊思斷腸
君が客遊を念えば 思い腸を断つ
- 客遊 … 故郷を離れて他国を旅すること。
- 念 … 心中深く思うこと。
- 断腸 … 腸がちぎれるほど、非常に悲しんだり苦しんだりするさま。故事名言「断腸」参照。
慊慊思歸戀故鄉
慊慊として帰るを思い 故郷を恋わん
- 慊慊 … 心が満たされないさま。
君何淹留寄他方
君何ぞ淹留して他方に寄る
- 君何 … 『文選』では「何為」に作る。
- 淹留 … 久しく滞在すること。
- 他方 … 他国。よその土地。
- 寄 … 身を寄せる。
賤妾煢煢守空房
賤妾 煢煢として空房を守り
- 賤妾 … 夫に対し、妻が自分を謙遜していう言葉。「妾」は、わらわ。女性の謙称。
- 煢煢 … 孤独なさま。
- 空房 … 夫のいない部屋。夫のいない寝室。空閨。
憂來思君不敢忘
憂い来りて君を思い 敢えて忘れず
- 憂来 … 悲しみに襲われる。
- 不敢忘 … (あなたのことが)どうにも忘れられない。
不覺淚下霑衣裳
覚えず 涙下りて衣裳を霑すを
- 不覚 … 知らず知らず。知らぬ間に。いつの間にか。
- 霑 … 濡らす。「沾」に作るテキストもある。同義。
援琴鳴弦發清商
琴を援き弦を鳴らせば清商を発し
- 琴 … 古琴。弦は7本。日本の琴と違い、小さい。ウィキペディア【古琴】参照。
- 援 … 引き寄せて手にとる。
- 清商 … 悲しげで澄んだ商の曲調。清商調。「商」は中国の五音音階の第二音。五音は、宮・商・角・徴・羽。
- 発 … 奏でる。
短歌微吟不能長
短歌微吟 長くする能わず
- 短歌微吟 … 微かに口ずさむ歌声。
- 不能長 … 胸が詰まって長く歌えない。
明月皎皎照我牀
明月皎皎として我が牀を照らし
- 皎皎 … 白く輝くさま。畳語(重言)。
- 牀 … 床。寝台。「床」に作るテキストもある。
星漢西流夜未央
星漢西に流れて 夜未だ央きず
- 星漢 … 天の川。
- 夜未央 … 夜が明けない。「央」は尽きる。止む。
牽牛織女遙相望
牽牛 織女 遥かに相望む
- 牽牛 … わし座α(アルファ)星アルタイルの中国名。毎年七月七日に織女星と天の川を隔てて対するという。彦星。
- 織女 … こと座α(アルファ)星ベガの中国名。織女星。織姫。七夕姫。たなばたつめ。
- 相望 … 互いに眺めやる。互いに見つめ合う。
爾獨何辜限河梁
爾独り何の辜ありてか河梁に限らる
- 爾 … あなたたち。二人称。牽牛・織女を指す。
- 独 … 「ひとり~(のみ)」と読み、「ただ~だけ」と訳す。限定の意を示す。
- 辜 … 罪。
- 河梁 … 本来は、川にかけた橋。ここでは単に、河。天の川を指す。
- 限 … 隔てられる。
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