詠懐詩八十二首 其一(阮籍)
詠懷詩八十二首 其一
詠懐詩八十二首 其の一
詠懐詩八十二首 其の一
- 〔テキスト〕 『先秦漢魏晋南北朝詩』魏詩巻十、『古詩源』巻六 魏詩、『古詩賞析』巻十 魏詩、『六臣註文選』巻二十三(『四部叢刊 初編集部』所収)、他
- 五言古詩。琴・襟・林・心(平声侵韻)。
- ウィキソース「詠懷詩 (夜中不能寐)」「詠懷詩五言八十二首」参照。
- 詠懐詩 … 懐いを詠う。胸中に思っている事柄を詠う詩。
- 阮籍 … 210~63。三国時代、魏の文学者、思想家。陳留郡尉氏県(河南省開封市)の人。字は嗣宗。嵆康とともに「竹林の七賢」の中心的人物。また、父の阮瑀は「建安七子」の一人であった。老荘思想を好み、酒と琴をこよなく愛し、清談にふけった。魏から晋への政権交代の不安定な時期、司馬氏に仕えたが、酒に酔って奇行を重ね、政争から身を避けた。ウィキペディア【阮籍】参照。
夜中不能寐
夜中 寐ぬる能わず
- 夜中 … 夜中まで。夜半。
- 不能寐 … 眠ることができない。寝つかれない。「寐」は眠る。寝る。
起坐彈鳴琴
起坐して鳴琴を弾ず
- 起坐 … 起き上がって座ること。
- 鳴琴 … 琴。
- 弾 … 弾き鳴らす。
薄帷鑑明月
薄帷に明月鑑り
- 薄帷 … 寝床の薄い帷。薄いカーテン。
- 鑑 … 照らす。「照」と同じ。「鑒」に作るテキストもある。「鑑」の異体字。
清風吹我襟
清風 我が襟を吹く
- 清風 … 清々しい風。さわやかな風。
- 襟 … 『六臣註文選』(『四部叢刊 初編集部』所収)では「衿」に作る。
孤鴻號外野
孤鴻 外野に号び
- 孤鴻 … 群れを離れてしまった一羽のおおとり。
- 外野 … 遠い野原。
- 号 … 大声で鳴くこと。
翔鳥鳴北林
翔鳥 北林に鳴く
- 翔鳥 … 空高く飛んでいる鳥。「朔鳥」に作るテキストもある。「朔鳥」は北方から渡ってきた鳥。
- 北林 … 北の林。
徘徊將何見
徘徊して将た何をか見る
- 徘徊 … さまよい歩く。
- 将 … 「はた」と読み、「そもそも」「いったい」と訳す。
- 何見 … 何を見ようとするのか、何も見ることができない。反語。
憂思獨傷心
憂思して独り心を傷ましむ
- 憂思 … 心配する心。憂いに満ちた思い。
- 独傷心 … 自分の心を苦しめるばかりだ。
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