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七歩詩(曹植)

七步詩
しち
(伝)そうしょく
  • 〔テキスト〕 『先秦漢魏晋南北朝詩』魏詩巻七、『古詩源』巻五 魏詩、『古詩賞析』巻九 魏詩、『世説新語』文学第四、他
  • 五言古詩。汁・泣・急(入声緝韻)。
  • ウィキソース「七步詩」参照。
  • 魏の文帝(そう)が、才能あふれる弟の曹植をねたみ、「七歩歩くうちに詩を作れ。できなければ厳罰に処する」と命じた。これに対し、曹植はすぐに詩を作ったという。この詩はそのときに作ったもの。ここから、優れた詩を素早く作れる才能のことを「七歩の才」という。ただし、この詩は曹植の詩文集である『曹子建集』に収められておらず、偽作説が有力である。
  • 曹植 … 「そうち」とも。192~232。三国時代、魏の武帝(曹操)の五男。あざなは子建。陳王に封ぜられたので、ちん王とも呼ばれる。思はおくりな。詩文に優れた。詩文集『曹子建集』がある。ウィキペディア【曹植】参照。
煮豆持作羹
まめもっあつもの
  • 持 … 「以」と同じ。
  • 羹 … あつもの。魚・鳥の肉や野菜を入れた熱い吸い物。
漉豉以爲汁
してもっしる
  • 豉 … 豆を煮たり蒸したりして発酵させたもの。みそや納豆の類。「」の訓読みは、みそ。『世説新語』(『四部叢刊 初編子部』所収)では「しゅく」に作る。「菽」の訓読みは、まめ。
  • 漉 … こす。濾過ろかする。
萁在釜下然
まめがらかましたりて
  • 萁 … 豆がら。豆の実を取り出したあとの、さや・茎など。自分に難題を持ちかけて苦しめる兄の曹丕に喩える。
  • 然 … 燃える。『世説新語』(『四部叢刊 初編子部』所収)では「燃」に作る。同義。
豆在釜中泣
まめかまなかりて
  • 豆 … 曹植に喩える。
本自同根生
もと 同根どうこんよりしょうずるに
  • 本 … もともとは。本来は。
  • 自 … 「より」と読み、「~から」と訳す。返読文字。時間・場所などの起点を示す。『古詩源』『古詩賞析』では「是」に作る。
  • 同根生 … 「同根」は「根を同じくして」と読んでもよい。豆もまめがらも、同じ根から生まれたものだ。私と兄さんとは兄弟だ、ということの喩え。曹丕は同母兄。
相煎何太急
あいることなんはなはきゅうなる
  • 相 … ここでは「互いに」という意味ではなく、動作に対象があることを示す言葉。
  • 煎 … まめがらが豆を煮ること。曹丕が曹植をいじめることの喩え。
  • 何 … 「なんぞ」と読み、「どうして~か」と訳す。疑問形。
  • 太 … ひどく。あまりにも~しすぎる。
  • 急 … 激しい。厳しい。むごい。
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