顔淵第十二 1 顏淵問仁章
279(12-01)
顏淵問仁。子曰。克己復禮爲仁。一日克己復禮。天下歸仁焉。爲仁由己。而由人乎哉。顏淵曰。請問其目。子曰。非禮勿視。非禮勿聽。非禮勿言。非禮勿動。顏淵曰。回雖不敏。請事斯語矣。
顏淵問仁。子曰。克己復禮爲仁。一日克己復禮。天下歸仁焉。爲仁由己。而由人乎哉。顏淵曰。請問其目。子曰。非禮勿視。非禮勿聽。非禮勿言。非禮勿動。顏淵曰。回雖不敏。請事斯語矣。
顔淵仁を問う。子曰く、己に克ちて礼に復るを仁と為す。一日己に克ちて礼に復れば、天下仁に帰せん。仁を為すは己に由る。而して人に由らんや。顔淵曰く、其の目を請い問う。子曰く、非礼は視ること勿かれ、非礼は聴くこと勿かれ、非礼は言うこと勿かれ、非礼は動くこと勿かれ。顔淵曰く、回不敏なりと雖も、請う斯の語を事とせん。
現代語訳
- 顔淵が人の道をきく。先生 ――「欲をおさえて規律を守るのが、人の道だ。一日でも欲をおさえて規律を守れば、世間が人の道につく。人の道はわが身からで、それなら他人まかせにはできまい。」顔淵 ―― 「どうかその内容を…。」先生 ――「不規律を見ず、不規律をきかず、不規律をいわず、不規律に走らぬこと。」顔淵 ―― 「わたくしのようなものでも、そのことにはげみたくぞんじます。」(魚返善雄『論語新訳』)
- 顔淵が仁の意義をたずねた。先師はこたえられた。――
「己に克ち、私利私欲から解放されて、調和の大法則である礼に帰るのが仁である。上に立つ者がひとたび意を決してこの道に徹底すれば、天下の人心もおのずから仁に帰向するであろう。仁の実現はまずみずからの力によるべきで、他にまつべきではない」
顔淵がさらにたずねた。――
「実践の細目について、お示しをお願いいたしたいと存じます」
先師がこたえられた。――
「非礼なことに眼をひかれないがいい。非礼なことに耳を傾けないがいい。非礼なことを口にしないがいい。非礼なことを行なわぬがいい」
顔淵がいった。――
「まことにいたらぬ者でございますが、お示しのことを一生の守りにいたしたいと存じます」(下村湖人『現代訳論語』)
語釈
- 顔淵 … 前521~前490頃。孔子の第一の弟子、顔回。姓は顔、名は回。字が子淵であるので顔淵とも呼ばれた。魯の人。徳行第一といわれた。孔子より三十歳年少。早世し孔子を大いに嘆かせた。孔門十哲のひとり。ウィキペディア【顔回】参照。
- 克己 … 自分のわがままや欲望にうちかつこと。
- 復礼 … 「礼に復る」と読み、「礼にたちもどる」と訳す。また「礼を復む」とも読み、「礼をふみ行なう」と訳す説もある。
- 為仁 … それが仁である。
- 一日 … 一日だけでも。
- 帰仁 … 仁徳になびき従う。「帰」は帰服する。
- 為仁由己 … 仁を行なうのは、自分自身の力によってできる。
- 由人乎哉 … (仁は)他人の力にたよるものであろうか。(決して他人の力にたよってできるものではない。)反語の形。「乎哉」は「や」と読む。
- 請問 … ぜひお聞かせねがいたい。
- 目 … 重要な項目。細目。眼目。
- 非礼 … 礼の規則にはずれたもの。
- 勿 … 「なかれ」と読み、「~するな」「~しないように」と訳す。
- 回 … 顔淵の名。
- 雖 … 「~といえども」と読み、「~であるけれども」と訳す。
- 不敏 … 賢くない。自分を謙遜していう。
- 事 … 仕事とする。実行する。
- 斯語 … この言葉。「克己復礼」を指す。
補説
- 克 … 『義疏』では「尅」に作る。
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