民、信無くんば立たず
民、信無くんば立たず
- 出典:『論語』顔淵第十二7(ウィキソース「論語/顏淵第十二」参照)
- 解釈:人民の信頼がなければ、国が成り立ってゆかない。子貢が政治の要道について質問し、「食糧」「軍備」「人民の信頼」の三つが最も重要であると孔子が答えた。さらに子貢が、やむを得ず取り去るとすればどれを先にしたらよいかと尋ね、孔子は「軍備だ」と答えた。またさらに子貢が二つのうち、やむを得ずどちらかを取り去るとすればどちらがよいかと質問したところ、孔子は「食糧だ。食糧がなければ人民は餓死するかもしれないが、政府を人民が信頼しなくなったら、国家は成り立たない」と答えたという。
- 論語 … 孔子(前552~前479)とその門弟たちの言行録。四書の一つ。十三経の一つ。二十編。儒家の中心的経典。我が国へは応神天皇の代に伝来したといわれている。ウィキペディア【論語】参照。
子貢問政。子曰、足食、足兵、民信之矣。子貢曰、必不得已而去、於斯三者何先。曰、去兵。子貢曰、必不得已而去、於斯二者何先。曰、去食。自古皆有死。民無信不立。
子貢、政を問う。子曰く、食を足らしめ、兵を足らしめ、民之を信ず。子貢曰く、必ず已むを得ずして去らば、斯の三者に於いて何をか先にせん。曰く、兵を去らん。子貢曰く、必ず已むを得ずして去らば、斯の二者に於いて何をか先にせん。曰く、食を去らん。古より皆死有り、民、信無くんば立たず。
- 子貢 … 前520~前446。姓は端木、名は賜。子貢は字。衛の人。孔子より三十一歳年少の門人。孔門十哲のひとり。弁舌・外交に優れていた。また、商才もあり、莫大な財産を残した。ウィキペディア【子貢】参照。
- 政 … 政治の要点。
- 足食 … 食糧を十分にする。
- 足兵 … 軍備を十分にする。
- 民信之矣 … 人民が為政者を信頼する。また「之を信にす」と読み、「人民に信義を重んじる心をもたせる、人民に信義を教え導く」と訳す説もある。「矣」は置き字。読まない。
- 必不得已 … どうしてもやむを得ない事情で。「已」は「止」に同じ。
- 去 … 捨て去る。
- 於斯三者 … この三つの中で。「於」は、動詞よりも後ろにある場合は置き字として読まない。ここでは「於」が動詞(先にす)よりも前にあるので「おいて」と読む。
- 何先 … 「なにをかさきにせん」と読む。「何を先にしようか」と訳す。ここでは「どれを先に捨て去るべきか」の意。
- 自古 … 昔から。「自」は「より」と読む。
- 民無信 … 人民が為政者を信頼する心がなければ。
- 不立 … 存立しない。成立しない。
- 民無信不立 … 人民が政府を信頼しなくなったら、国家は成り立たない。「無~不…」は「~なくんば…ず」と読み、「~がなければ…ない」と訳す。順接の仮定条件の意を示す。
- 詳しい注釈と現代語訳については「顔淵第十二7」参照。
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