• 出典：『戦国策』燕（ウィキソース「戰國策 (鮑彪注, 四庫全書本)/卷09」参照）
• 解釈：両者が争っているすきに、第三者が利益を横取りすること。シギとドブ貝が争っているところへ年老いた漁師がやって来て、両方とも捕らえたという故事から。「漁父」の「父」は老人のこと。正しくは「ぎょほ」と読むが、一般的には「ぎょふ」と読まれており、また「漁夫の利」と書くことも多い。

趙（ちょう）、且（まさ）に燕（えん）を伐（う）たんとす。

蘇（そ）代（だい）、燕（えん）の為（ため）に恵王（けいおう）に謂（い）いて曰（いわ）く、

今者（いま）、臣（しん）来（き）たるとき易水（えきすい）を過（す）ぐ。

蚌（ぼう）方（まさ）に出（い）でて曝（さら）す。

而（しこう）して鷸（いつ）其（そ）の肉（にく）を啄（ついば）む。

蚌（ぼう）合（がっ）して其（そ）の喙（くちばし）を箝（はさ）む。

鷸（いつ）曰（いわ）く、今日（こんにち）雨（あめ）ふらず、明日（みょうにち）雨（あめ）ふらずんば、即（すなわ）ち死（し）蚌（ぼう）有（あ）らん、と。

蚌（ぼう）も亦（ま）た鷸（いつ）に謂（い）いて曰（いわ）く、今日（こんにち）出（いだ）さず、明日（みょうにち）も出（いだ）さずんば、即（すなわ）ち死（し）鷸（いつ）有（あ）らん、と。

両（りょう）者（しゃ）、相（あい）舎（す）つるを肯（がえ）んぜず。

漁者（ぎょしゃ）、得（え）て之（これ）を幷（あわ）せ擒（とら）う。

今（いま）、趙（ちょう）且（まさ）に燕（えん）を伐（う）たんとす。

燕（えん）・趙（ちょう）久（ひさ）しく相（あい）攻（せ）むれば、以（もっ）て大衆（たいしゅう）を敝（つか）れしめん。

臣（しん）、強（きょう）秦（しん）の漁（ぎょ）父（ほ）と為（な）らんことを恐（おそ）るるなり。

願（ねが）わくは王（おう）の之（これ）を熟（じゅっ）計（けい）せんことを、と。

恵王（けいおう）曰（いわ）く、善（よ）し、と。乃（すなわ）ち止（や）む。