雑詩十二首 其一(陶潜)
雜詩十二首 其一
雑詩十二首 其の一
雑詩十二首 其の一
- 〔テキスト〕 『先秦漢魏晋南北朝詩』晋詩巻十七、『古詩源』巻九 晋詩、『陶淵明集』巻四、『古文真宝』前集 巻二、他
- 五言古詩。塵・身・親・鄰・晨・人(平声真韻)。
- ウィキソース「雜詩 (陶淵明)」参照。
- 雑詩 … 作者が感じたことを気ままに詠んだ無題詩のこと。
- この詩で作者は、人生は無常であるので楽しめる時には大いに楽しむべきである、と説いている。
- 陶潜 … 365~427。東晋末の詩人。潯陽(江西省九江市)の人。名は潜、字は淵明、一説には元亮ともいわれる。五柳先生と号した。後世の人々から靖節先生という諡を賜った。四十一歳のとき、彭沢県の県令となったが八十日で辞任し、「帰去来の辞」を作って帰郷した。以後は出仕することなく、隠逸詩人として田園生活を送った。その詩は唐代になって多くの詩人に多大な影響を与えた。ウィキペディア【陶淵明】参照。
人生無根蔕
人生 根蔕無し
- 根蔕 … 「こんたい」と読んでもよい。草木の根元と果実のへた。転じて、物事の拠り所。物事のしっかりとした土台。
飄如陌上塵
飄として陌上の塵の如し
- 飄 … 風に舞いあがる形容。風に吹き飛ばされる形容。
- 陌上塵 … 路上の塵。「陌」は街路。道。
分散逐風轉
分散して風を逐いて転ず
- 分散 … 分かれ散ること。
- 逐風転 … 風の吹くままに転がっていく。
此已非常身
此れ已に常の身に非ず
- 此 … この身。
- 已 … もはや。もう。
- 常身 … 一定不変の身。永遠に変わらない身体。
落地爲兄弟
地に落ちて兄弟と為る
- 落地 … この地上に生まれ落ちて。
- 為兄弟 … みな兄弟となったようなものである。『論語』顔淵第十二5の「四海の内、皆兄弟なり」(四海之内、皆兄弟也)とあるのに基づく。
何必骨肉親
何ぞ必ずしも骨肉の親のみならんや
- 何必 … 「なんぞかならずしも~ん(や)」と読み、「どうして~である必要があろうか、いやないのだ」と訳す。反語。
- 骨肉親 … 血を分け合った人々。肉親。身内。親戚。
得歡當作樂
歓を得ては当に楽しみを作すべし
- 得歓 … 楽しいことがあったら。愉快なことがあれば。
- 当作楽 … 心ゆくまで楽しむべきである。
斗酒聚比鄰
斗酒 比隣を聚む
- 斗酒 … 一斗(日本の一升くらい)の酒。わずかな酒をいう。
- 比隣 … 隣り近所。近所の人々。「鄰」は「隣」の異体字。
- 聚 … 集める。
盛年不重來
盛年 重ねて来らず
- 盛年 … 若く元気盛んな時。壮年。
- 不重来 … 二度とやって来ない。
一日難再晨
一日 再び晨なり難し
- 一日 … 一日に。一日のうちで。
- 難再晨 … 朝は二度やって来ない。「晨」は朝。
及時當勉勵
時に及んで当に勉励すべし
- 及時 … よい時機を失わずに。よい時を逃さずに。しかるべき時に。
- 勉励 … 努め励む。充実した時間を過ごす。
歲月不待人
歳月 人を待たず
- 歳月 … 年月。時の流れ。
- 不待人 … 人を待ってはくれない。
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