責子(陶潜)
責子
子を責む
子を責む
- 〔テキスト〕 『先秦漢魏晋南北朝詩』晋詩巻十七、『古詩賞析』巻十四 晋詩、『陶淵明集』巻三、他
- 五言古詩。實・筆・匹・術・七・栗(入声質韻)、物(入声物韻)通押。
- ウィキソース「責子」参照。
- 責子 … 「子の儼等に与うる疏」(與子儼等疏)によれば、淵明には儼・俟・份・佚・佟という五人の子がいたことがわかる。ウィキソース「與子儼等疏」参照。詩題は子どもたちを責めるとあるが、内容は不肖の子どもたちをユーモラスに詠んだもの。父親としての愛情を感じさせる作品。
- 陶潜 … 365~427。東晋末の詩人。潯陽(江西省九江市)の人。名は潜、字は淵明、一説には元亮ともいわれる。五柳先生と号した。後世の人々から靖節先生という諡を賜った。四十一歳のとき、彭沢県の県令となったが八十日で辞任し、「帰去来の辞」を作って帰郷した。以後は出仕することなく、隠逸詩人として田園生活を送った。その詩は唐代になって多くの詩人に多大な影響を与えた。ウィキペディア【陶淵明】参照。
白髮被兩鬢
白髪 両鬢を被い
- 白髪 … 白髪。
- 両鬢 … 左右の鬢の毛。「鬢」は耳のわきに生えている髪の毛。
- 被 … 覆いかぶさる。
肌膚不復實
肌膚 復た実たず
- 肌膚 … 肌。皮膚。
- 不復 … もう~でない。
- 不実 … 充実していない。張りもない。
雖有五男兒
五男児有りと雖も
- 五男児 … 五人の男の子。
- 雖 … ~だけれども。
總不好紙筆
総て紙筆を好まず
- 総 … みな。
- 紙筆 … 紙と筆。学問・勉強のこと。
阿舒已二八
阿舒は已に二八
- 阿 … 名前の上につける愛称。何々ちゃんに当たる。
- 舒 … 長男儼の幼名。
- 已 … もう。とっくに。
- 二八 … 二かける八で十六歳。九九の乗法による表現。
懶惰故無匹
懶惰 故より匹い無し
- 懶惰 … 怠けること。怠惰なこと。
- 故 … もとから。前から。以前から。『古詩賞析』では「固」に作る。
- 無匹 … 比べるものがない。「匹」は「類」と同じ。
阿宣行志學
阿宣は行〻志学なるも
- 阿 … 名前の上につける愛称。何々ちゃんに当たる。
- 宣 … 次男俟の幼名。
- 行 … 「ゆくゆく」と読む。もうすぐ。まもなく。~になろうとしている。
- 志学 … 十五歳。『論語』為政第二4の「吾十有五にして学に志す」(吾十有五而志于學)とあるのに基づく。
而不愛文術
而も文術を愛せず
- 而 … 「しかも」「しかるに」「しかれども」と読み、「しかし」「~ではあるが」「それなのに」「~であっても」と訳す。逆接の意を示す。なお、「しかして」「しこうして」と読む場合は並列や順接の意を示す。
- 文術 … 学問。
- 不愛 … 好きでない。好まない。
雍端年十三
雍と端とは年十三なるも
- 雍端 … 「雍」は三男份の幼名、「端」は四男佚の幼名。どちらも十三歳であるため、双生児か、一方が庶子(妾の子)であると思われる。
不識六與七
六と七とを識らず
- 不識六与七 … 六と七との区別がつかない。六と七とを足して十三になることも知らない。雍と端が十三歳なので、それを六と七とに分けてユーモラスに言ったものと思われる。
- 与 … 「と」と読み、「~と」と訳す。「A与B」の場合は、「AとB与」と読む。「與」は「与」の旧字体。
通子垂九齡
通子は九齢に垂とするも
- 通 … 末子佟の幼名。
- 子 … 愛称。何々ちゃんに当たる。
- 九齢 … 九歳。「齢」は年齢。
- 垂 … 「なんなんとす」と読み、「もうすぐ~になろうとしている」「今にも~しそうになる」と訳す。
但覓梨與栗
但だ梨と栗とを覓むるのみ
- 但 … 「ただ」と読み、「ただ~だけ」と訳す。限定の意を示す。句末の語に「のみ」を添えて読むことが多い。
- 梨 … 『古詩賞析』では「棗」に作る。
- 覓 … さがし求める。
天運苟如此
天運 苟くも此の如くんば
- 天運 … 天が与えた運命。天命。
- 苟如此 … もしもこういうことならば。もしもこのようなものなら。もしもこのように定められているならば。「苟」は「いやしくも」と読み、「もしも~だったら」と訳す。順接の仮定条件の意を示す。
且進杯中物
且く杯中の物を進めん
- 且 … 「しばらく」と読み、「ひとまず」「まあまあ」と訳す。
- 杯中物 … 杯の中の物。すなわち酒のこと。
- 進 … 飲もうか。飲むとするか。自分で自分に進めること。
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