>   漢詩   >   唐詩選   >   巻七 七絶   >   西施石(楼穎)

西施石(楼穎)

西施石
西(せい)施(し)石(せき)
楼穎(ろうえい)
  • 七言絶句。津・人・春(上平声真韻)。
  • ウィキソース「西施石」参照。
  • 西施石 … 西施が会稽の苧(ちょ)蘿(ら)山中(今の浙江省紹興市の西南、諸(しょ)曁(き)市)の谷川で紗(うすぎぬ)を洗ったときに使った石。『太平御覧』巻四十七、土城山の項に引く孔曄(こうよう)『会稽記』に「勾践、美女を索(もと)め以て呉王に献ぜんとし、諸(しょ)曁(き)羅山の薪(たきぎ)を売る女、西施・鄭旦(ていたん)を得、先ず土城山に教習せしむ。山辺に石有り、云う是れ西施紗(うすぎぬ)を浣(あら)う石なり」(勾踐索美女以獻吳王、得諸曁羅山賣薪女西施、鄭旦、先教習于土城山。山邊有石、云是西施浣紗石)とある。ウィキソース「太平御覽/0047」参照。
  • 西施 … 春秋時代の越(えつ)の美女。もともと苧(ちょ)蘿(ら)山(今の浙江省紹興市諸(しょ)曁(き)市)に住む薪(たきぎ)売り娘。越王勾践(こうせん)が呉に敗れたのち呉王夫差のもとに送られ、夫差は彼女の色香に溺れて国を亡ぼした。ウィキペディア【西施】参照。
  • この詩は、作者が西施石を見て、西施を偲びながら詠んだもの。
  • 楼穎 … 生没年不詳。盛唐の詩人。『全唐詩』に「天宝中の進士。国秀集の序を作る」(天寶中進士。作國秀集序)とあるが、『登科記考』に楼穎の名は見当たらない。『中国历代人名大辞典』(上海古籍出版社、1999年)には「玄宗の天宝の初め、国子生と為る、芮(ぜい)挺(てい)章(しょう)と友たり」(玄宗天宝初为国子生、与芮挺章为友)とある。国子生は、国子監の学生。芮挺章は、天宝三載(744)に『国秀集』を編纂した人。楼穎がその序文を書いたのは、友人に依頼されたからであったことがわかる。ウィキペディア【国子監】参照。『全唐詩』に五首収録されている。
西施昔日浣紗津
西(せい)施(し) 昔日(せきじつ) 浣(かん)紗(さ)の津(しん)
  • 昔日 … むかし。
  • 浣紗 … 紗(うすぎぬ)を洗う。浣は、洗うこと。
  • 津 … 渡し場。
石上靑苔思殺人
石上(せきじょう)の青苔(せいたい) 人(ひと)を思(し)殺(さつ)す
  • 石上青苔 … そこにある西施石も青い苔におおわれている。
  • 思殺人 … 見る人を深く懐旧の思いにさせる。
  • 思殺 … 深く思うこと。殺は、動詞のあとにつけ、意味を強める接尾辞。
一去姑蘇不復返
一(ひと)たび姑蘇(こそ)に去(さ)って復(ま)た返(かえ)らず
  • 一去 … 一旦行ったきり。
  • 姑蘇 … 呉王夫差の都。今の江蘇省蘇州市。ウィキペディア【蘇州市】参照。また、ここでは姑蘇台を指すものとも思われる。姑蘇台は、春秋時代の後期、呉王闔廬(こうりょ)が姑蘇山(江蘇省蘇州市の西南)上に築き、後にその子夫差が改修した離宮。西施など大勢の美女を住まわせて遊んだという。台とは、建物を築くとき、土を高く盛ってつき固めた台基のこと。『元和郡県図志』江南道、蘇州の条に「(姑蘇)山は(蘇)州の西四十里に在り。其の上に闔廬(こうりょ)、台を起(きづ)く」(山在州西四十里。其上闔閭起臺)とある。ウィキソース「元和郡縣圖志/卷25」参照。また『山堂肆考』宮室、寵西施の条に「呉王夫差越を破り、越乃ち西施を進めて軍を退かんことを請う。呉王之を許し、呉王既に西施を得。甚だ之を寵し、為に姑蘇台を築く。高さ三百丈、其の上にて遊宴す」(吳王夫差破越、越乃進西施請退軍。吳王許之、吳王既得西施。甚寵之、爲築姑蘇臺。髙三百丈、遊宴其上)とある。ウィキソース「山堂肆考 (四庫全書本)/卷172」参照。
  • 不復返 … 再びこの地に帰ってくることはなかった。
岸傍桃李爲誰春
岸傍(がんぼう)の桃(とう)李(り) 誰(た)が為(ため)にか春(はる)なる
  • 岸傍 … 岸辺。
  • 桃李 … ここでは、桃や李(すもも)の花。『詩経』召南・何彼襛矣に「何ぞ彼の襛(さかん)なる、華は桃李の如し」(何彼襛矣、華如桃李)とある。ウィキソース「詩經/何彼襛矣」参照。また『史記』李広伝の論賛に「諺(ことわざ)に曰く、桃(とう)李(り)言(ものい)わざれども、下(した)自(おの)ずから蹊(こみち)を成(な)す、と」(諺曰、桃李不言、下自成蹊)とある。ウィキソース「史記/卷109」参照。
  • 為誰春 … いったい誰のために春の色に咲き誇っているのか。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻七(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻二百三(排印本、中華書局、1960年)
  • 趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻十二(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)
  • 『唐詩品彙』巻五十五([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
  • 『国秀集』巻中(傅璇琮編撰『唐人選唐詩新編』、陝西人民教育出版社、1996年)
歴代詩選
古代 前漢
後漢 魏
晋 南北朝
初唐 盛唐
中唐 晩唐
北宋 南宋
金 元
明 清
唐詩選
巻一 五言古詩 巻二 七言古詩
巻三 五言律詩 巻四 五言排律
巻五 七言律詩 巻六 五言絶句
巻七 七言絶句
詩人別
あ行 か行 さ行
た行 は行 ま行
や行 ら行