和李秀才辺庭四時怨二首 其一(盧弼)
和李秀才邊庭四時怨二首 其一
李秀才の辺庭四時怨に和す二首 其の一
李秀才の辺庭四時怨に和す二首 其の一
- 〔テキスト〕 『唐詩選』巻七、『全唐詩』巻六百八十八、『唐詩品彙』巻五十五、『才調集』巻八、他
- 七言絶句。黄・翔・郷(平声陽韻)。
- ウィキソース「御定全唐詩 (四庫全書本)/卷688」参照。
- 詩題 … 『全唐詩』では「和李秀才邊庭四時怨四首 其三」に作る。『古今詩刪』では「和李秀才邊庭四時怨二首」に作り、第一首「春」と第四首「冬」を収録し、本詩である第三首は収録していない。ウィキソース「古今詩刪 (四庫全書本)/卷22」参照。『唐詩品彙』では「和李秀才邊庭四時怨四首 秋」に作る。『才調集』では「答李秀才邊庭四時怨四首 秋」に作る。
- 李 … 李某。人物については不明。
- 秀才 … 唐初は秀才科の試験に合格した者を呼んだが、秀才科がまもなく廃止されたため、進士科の受験資格者、すなわち地方の選抜試験に合格した者をいう。ウィキペディア【秀才 (科挙)】参照。
- 辺庭 … 国境付近。庭は、その辺り。
- 四時 … 「しいじ」と読んでもよい。四季。春夏秋冬。『論語』陽貨篇に「四時行われ、百物生ず」(四時行焉、百物生焉)とある。ウィキペディア【論語/陽貨第十七】参照。
- 怨 … 怨み。哀しみ。憂愁。辛苦。
- 和 … 唱和すること。詳しくは和韻すること。和韻には、依韻・用韻・次韻の三種がある。依韻は、原作と同類の韻を用いること。用韻は、原作に用いられている韻字を順不同でそのまま用いること。次韻は、原作と同一の字を同一の順に用いること。ここでは李秀才の元の詩が不明なので、どの和韻かわからない。
- この詩は、進士の受験資格者となった李某が「辺庭四時怨」と題する辺地における春夏秋冬の辛苦を詠んだ詩を作ってよこしたのに対し、作者が唱和したもの。四首の連作で、その第三首。秋を詠んだもの。
- 盧弼 … 生没年不詳。晩唐の詩人。范陽(今の河北省涿州市)の人。字は子諧。大暦十才子の一人盧綸の孫。『全唐詩』では「盧汝弼」に作る。昭宗の景福二年(893)、進士に及第(『登科記考』巻二十四)。祠部員外郎・知制誥となった。最後は李克用に従い、節度副使になったという。ウィキペディア【盧弼】参照。
八月霜飛柳遍黃
八月 霜飛んで柳遍く黄なり
- 八月 … 陰暦八月。秋の中ごろ。仲秋。
- 霜飛 … 霜の気が空中に飛ぶ。
- 柳遍黄 … 柳の葉もみな黄色に枯れてしまう。
- 遍 … 『全唐詩』では「半」に作る。『才調集』では「變」に作る。
蓬根吹斷雁南翔
蓬根吹き断たれて雁南に翔ける
- 蓬根 … 蓬の根。
- 吹断 … 風に吹きちぎられてころがる。
- 雁 … 『唐詩品彙』では「鴈」に作る。同義。
- 南翔 … 南へと渡ってゆく。
隴頭流水關山月
隴頭の流水 関山の月
- 隴頭流水 … 笛の曲名。『楽府詩集』巻二十一・横吹曲辞に、漢横吹曲として「隴頭」「隴頭吟」「隴頭水」などの曲名がある。『楽府詩集』に『通典』を引いて「天水郡に大阪有り。名づけて隴坻と曰い、亦た隴山と曰う。即ち漢の隴関なり」(天水郡有大阪。名曰隴坻、亦曰隴山。即漢隴關也)とあり、また『三秦記』を引いて「其の阪九回し、上る者は七日にして乃ち越ゆ。上に清水有りて四注して下る。所謂隴頭水なり」(其阪九回、上者七日乃越。上有清水四注下。所謂隴頭水也)とある。ウィキソース「樂府詩集/021卷」参照。また「隴頭歌辞三首 其三」(『楽府詩集』巻二十五・横吹曲辞)に「隴頭の流水、鳴声幽咽す。遥かに秦川を望めば、心肝断絶す」(隴頭流水、鳴聲幽咽。遙望秦川、心肝斷絕)とある。ウィキソース「樂府詩集/025卷」参照。
- 隴頭 … 隴山のほとり。隴山は、陝西省と甘粛省との境にある。昔から異民族との境界をなす山で、長安から西域へ行く通路。頭は、ほとり。『読史方輿紀要』に引く『秦州記』に「隴山は東西百八十里、山の巓に登りて秦川を東望すれば、四五百里、極目泯然たり。山東の人行役し、此に升りて顧瞻する者、悲思せざる莫し」(隴山東西百八十里、登山巓東望秦川、四五百里、極目泯然。山東人行役、升此而顧瞻者、莫不悲思)とある。ウィキソース「讀史方輿紀要/卷五十二」参照。
- 流水 … 流れる水。
- 関山月 … 笛の曲名。『楽府詩集』巻二十三・横吹曲辞に、漢横吹曲として「関山月」の曲名がある。楽府解題に「関山月は離別を傷むなり」(關山月傷離別也)とある。ウィキソース「樂府詩集/023卷」参照。
- 関山 … 関所のある山。辺塞の山。関は、関塞。国境の関所の砦。
泣上龍堆望故鄉
泣いて竜堆に上って故郷を望む
- 泣 … 泣きながら。涙を流しつつ。
- 竜堆 … 白竜堆の略称。今の新疆ウイグル自治区東部、ロプノール湖の東にある砂漠。地形の起伏するさまが臥竜のように見えるところから名づけられたという。『漢書』匈奴伝に「能く白竜堆を踰えて西辺に寇するや」(能踰白龍堆而寇西邊哉)とある。ウィキソース「漢書/卷094下」参照。その注に「竜堆は形、土竜の身の如く、頭無くして尾有り。高さ大なる者は二三丈。埤き者は丈余。皆東北に向いて、相似たり。西域中に在り」(龍堆形如土龍身、無頭有尾。高大者二三丈。埤者丈餘。皆東北向、相似也。在西域中)とある。『漢書評林』巻九十四(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『漢書』西域伝に「楼蘭国は最も東垂に在り、漢に近く、白竜堆に当り、水・草に乏し」(樓蘭國最在東垂、近漢、當白龍堆、乏水草)とある。ウィキソース「漢書/卷096上」参照。
- 上 … 白竜堆は砂漠であるが、堆の字が「堆い」という意であるので、上るといった。
- 望故郷 … 遠い故郷の方を眺めやる。
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