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胡渭州(張祜)

胡渭州
しゅう
ちょう
  • 〔テキスト〕 『唐詩選』巻七、『全唐詩』巻五百十一、『楽府詩集』巻八十・近代曲辞、『古今詩刪』巻二十二(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、64頁)、『唐詩品彙』巻五十二、他
  • 七言絶句。舟・流・愁(平声尤韻)。
  • ウィキソース「全唐詩/卷511」参照。
  • 詩題 … 『楽府詩集』では「胡渭州二首 其一」に作り、「楽苑に曰く、胡渭州は商謂の曲なり」(樂苑曰、胡渭州商謂曲也)とある。ウィキソース「樂府詩集/080卷」参照。
  • 胡渭州 … 楽府題。胡は、えびす。北方や西方に住む遊牧民族の総称。渭州は、今の甘粛省定西市隴西県の辺り。この曲は、もとはこの地方で胡人が歌っていた曲という意であるが、詩題はその曲調を借りているだけで、胡人や渭州と詩の内容とは直接関係ない。
  • この詩は、長江を旅する人の旅愁を詠んだもの。
  • 張祜 … 782?~852?。中唐の詩人。清河(河北省邢台市清河県)の人。一説に南陽(河南省南陽市)の人。あざなしょうきつ。穆宗の長慶年間、令狐楚が朝廷に推薦したが、採用されなかった。その後、各地を放浪し、晩年は丹陽(江蘇省丹陽市)に隠棲して、そこで没した。『張承吉文集』十巻がある。なお『唐詩品彙』では作者名を「張祐」に作る。ウィキペディア【張祜】参照。
亭亭孤月照行舟
亭亭ていていたるげつ こうしゅうらし
  • 亭亭 … 高いさま。梁の元帝の「玄覧げんらんの賦」に「いわお亭亭ていていとしてふたたり、ぶこと苕苕ちょうちょうとしてたかどのごとし」(巖亭亭其似蓋、飛苕苕其若樓)とある。ウィキソース「玄覽賦」参照。また陶潜の「しんとし六月中、火にう」に「迢迢ちょうちょうたりしんしゅうゆうべ、亭亭ていていとしてつきまさまどかならんとす」(迢迢新秋夕、亭亭月將圓)とある。ウィキソース「戊申歲六月中遇火」参照。また謝恵連の「みずうみうかかえりてろうちゅうよりつきもてあそぶ」(『文選』巻二十二)に「亭亭ていていたりこうえいずるつき瀏瀏りゅうりゅうたりたにずるかぜ」(亭亭映江月、瀏瀏出谷飆)とある。ウィキソース「泛湖歸出樓中翫月」参照。
  • 孤月 … 一輪の月。一片の月。
  • 行舟 … 我が漕ぎ行く舟。「三洲歌三首 其の二」(『楽府詩集』巻四十八)に「風流にしてしばらとどまらず、三山行舟を隠す」(風流不暫停、三山隱行舟)とある。ウィキソース「樂府詩集/048卷」参照。
寂寂長江萬里流
寂寂せきせきたるちょうこう ばんなが
  • 寂寂 … ひっそりと静かなさま。陶潜の「飲酒二十首 其の十五」に「班班はんはんとして翔鳥しょうちょうるも、寂寂せきせきとして行跡こうせきし」(班班有翔鳥、寂寂無行跡)とある。ウィキソース「飲酒二十首」参照。
  • 長江 … 中国中部を東西に流れる同国最大の川。下流部を揚子江という。長江全域を指して揚子江と呼ぶのは、我が国はじめ国際的な通称。ウィキペディア【長江】参照。
  • 万里流 … 万里の彼方まで流れてゆく。左思の「えいぜし八首 其の五」(『文選』巻二十一)に「ころも千仞せんじんおかふるい、あしばんながれにあらわん」(振衣千仞崗、濯足萬里流)とある。ウィキソース「詠史八首」参照。
鄉國不知何處是
きょうこくらず いずれのところなる
  • 郷国 … ふるさと。故郷。郷里。
  • 不知何処是 … いったいどこの辺りか、一向にわからない。
  • 處 … 『古今詩刪』では「䖏」に作る。異体字。
雲山漫漫使人愁
雲山うんざん漫漫まんまん ひとをしてうれえしむ
  • 雲山 … 雲のかかっている山。雲を頂いた山。
  • 漫漫 … 果てしなく続くさま。『楚辞』の「離騒」に「みち曼曼まんまんとしてしゅうえんなり、われまさじょうしてきゅうさくせんとす」(路曼曼其脩遠兮、吾將上下而求索)とある。求索は、探し求めること。ウィキソース「楚辭/離騷」参照。
  • 使人愁 … 人の心を悲しくさせる。
  • 使 … 「~(をして)…(せ)しむ」と読み、「~に…させる」と訳す。使役を表す。
  • 人 … 人の心。ここでは作者の心を指す。
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