秋閨思(張仲素)
秋閨思
秋閨思
秋閨思
- 〔テキスト〕 『唐詩選』巻七、『全唐詩』巻三百六十七、趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻二十七(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)、『古今詩刪』巻二十二(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、64頁)、『唐詩品彙』巻五十二、『唐詩別裁集』巻二十、『唐人万首絶句選』巻五、他
- 七言絶句。輝・衣・微(平声微韻)。
- ウィキソース「秋思二首」参照。
- 詩題 … 『全唐詩』では「秋(一本有閨字)思二首 其一」に作る。『万首唐人絶句』『古今詩刪』『唐詩品彙』『唐詩別裁集』『唐人万首絶句選』では「秋閨思二首 其一」に作る。
- 秋閨思 … 楽府題。閨は、婦人の私室。または女性の寝室。秋の閨での物思い。
- この詩は、出征している兵士の妻が夫を思う心情を詠んだもの。
- 張仲素 … 769?~819。中唐の詩人。河間(河北省献県)の人。字は絵之。貞元十四年(798)、李翺・呂温とともに進士に及第。武寧軍従事となったが、元和十年(815)、司勲員外郎となり、元和十四年(819)、中書舎人に至った。『唐詩選』に四首収める。ウィキペディア【張仲素】参照。
碧窗斜月靄深輝
碧窓の斜月 深輝靄たり
- 碧窓 … 青緑色の紗(うす絹)を張った窓。
- 窓 … 『唐詩選』『万首唐人絶句』では「窻」に作る。『全唐詩』では「窗」に作る。『古今詩刪』『唐詩品彙』『唐詩別裁集』『唐人万首絶句選』では「牕」に作る。すべて異体字。
- 斜月 … 西に傾いた月。入りかかった月。
- 月 … 『全唐詩』では「日」に作り、「一作月」とある。斜日は、夕日。
- 深輝 … 深く射し込んだ光。
- 輝 … 『全唐詩』『万首唐人絶句』『唐詩別裁集』『唐人万首絶句選』では「暉」に作る。同義。
- 靄 … 靄のかかったように、ぼんやりとしたさま。『全唐詩』『万首唐人絶句』『古今詩刪』『唐詩品彙』『唐詩別裁集』『唐人万首絶句選』では「藹」に作る。同義。
愁聽寒螿涙溼衣
愁えて寒螿を聴き 涙 衣を湿す
- 愁 … 悲しい気持ちで。
- 寒螿 … 秋から冬にかけて鳴く虫。コオロギの類。謝恵連の「擣衣」(『文選』巻三十)に「肅肅として莎鶏は羽ふるい、烈烈として寒螿は啼く」(肅肅莎雞羽、烈烈寒螿啼)とある。ウィキソース「昭明文選/卷30」参照。
- 涙湿衣 … 涙で衣を濡す。
- 溼 … 『古今詩刪』『唐詩品彙』『唐人万首絶句選』では「濕」に作る。本来は「溼」が旧字で「濕」が俗字。
夢裏分明見關塞
夢裏 分明に関塞を見たり
- 夢裏 … 夢の中で。
- 分明 … はっきりと。
- 関塞 … 国境にある関所ととりで。関は、関門。塞は、要塞。夫のいるところ。『墨子』号令篇に「数〻人をして行きて辺城関塞を守り、蛮夷に備うるの労苦者に労賜し、其の守卒の財用の有余と不足、地形の当に辺を守るべき者、其の器備の常に多き者を挙げしむ」(數使人行勞賜守邊城關塞、備蠻夷之勞苦者、舉其守卒之財用有餘不足、地形之當守邊者、其器備常多者)とある。ウィキソース「墨子/號令」参照。また『漢書』賈山伝に「昔者、秦の政は力もて万国を并せ、富天下を有ち、六国を破りて以て郡県と為し、長城を築きて以て関塞と為す」(昔者、秦政力幷萬國、富有天下、破六國以爲郡縣、築長城以爲關塞)とある。ウィキソース「漢書/卷051」参照。
不知何路向金微
知らず 何れの路か金微に向う
- 不知 … さっぱりわからない。
- 何路向 … どの道を通って行ったのやら。
- 金微 … 金微山。モンゴル国にある阿爾泰山。後漢の永元三年(91)、耿夔・任尚等がここで北匈奴を破った。『後漢書』和帝紀に「大将軍竇憲、左校尉耿夔を遣わして、居延の塞より出でしめ、北単于を金微山に囲みて、大いに之を破り、其の母閼氏を獲る」(大將軍竇憲、遣左校尉耿夔、出居延塞、圍北單于於金微山、大破之、獲其母閼氏)とある。ウィキソース「後漢書/卷4」参照。
こちらもオススメ!
歴代詩選 | |
古代 | 前漢 |
後漢 | 魏 |
晋 | 南北朝 |
初唐 | 盛唐 |
中唐 | 晩唐 |
北宋 | 南宋 |
金 | 元 |
明 | 清 |
唐詩選 | |
巻一 五言古詩 | 巻二 七言古詩 |
巻三 五言律詩 | 巻四 五言排律 |
巻五 七言律詩 | 巻六 五言絶句 |
巻七 七言絶句 |
詩人別 | ||
あ行 | か行 | さ行 |
た行 | は行 | ま行 |
や行 | ら行 |