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漢苑行(張仲素)

漢苑行
漢苑(かんえん)行(こう)
張(ちょう)仲(ちゅう)素(そ)
  • 七言絶句。池・枝・知(上平声支韻)。
  • ウィキソース「漢苑行」参照。
  • 詩題 … 『全唐詩』『唐詩品彙』では「漢苑行二首其一」に作る。『楽府詩集』『万首唐人絶句』『唐詩紀事』では「漢苑行三首其二」に作る。なお『唐詩紀事』では王涯の作となっている。ウィキソース「唐詩紀事 (四庫全書本)/卷42」参照。
  • 漢苑行 … 新楽府題の一つ。漢苑は、漢の禁苑(宮中の庭園)。すなわち長安の西にあった上林苑のこと。行は、歌・曲の意。『三輔黄図』巻四、苑囿、漢上林苑の条に「漢の上林苑は、即ち秦の旧苑なり。漢書に云う、武帝、建元三年上林苑を開き、東南のかた藍田宜春、鼎湖、御宿、昆吾に至り、南山を旁(かたわら)にして西し、長楊、五柞に至り、北のかた黄山を繞(めぐ)り、渭水に瀕して東す。周(しゅう)袤(ぼう)三百里、と。離宮七十所、皆な千乗万騎を容る。漢宮殿疏に云う、方(ほう)三百四十里、と。漢旧儀に云う、上林苑方三百里、苑中に百獣を養い、天子、秋冬に射猟して之を取る、と。帝初め上林苑を修むるに、群臣遠方、各〻名果異卉三千余種を献じて其の中に植え、亦た製して美名を為す有り、以て奇異なるを標す」(漢上林苑、即秦之舊苑也。漢書云、武帝建元三年開上林苑、東南至藍田宜春、鼎湖、御宿、昆吾、旁南山而西、至長楊、五柞、北繞黃山、瀕渭水而東。周袤三百里。離宮七十所、皆容千乘萬騎。漢宮殿疏云、方三百四十里。漢舊儀云、上林苑方三百里、苑中養百獸、天子秋冬射獵取之。帝初修上林苑、羣臣遠方、各獻名果異卉三千餘種植其中、亦有製爲美名、以標奇異)とある。周袤は、周囲。袤は、長さ。ウィキソース「三輔黃圖/卷之四」参照。また『後漢書』明帝紀、永平十五年に「冬、車騎上林苑に校(こう)猟(りょう)す」(冬、車騎校獵上林苑)とある。校猟は、鳥や獣が逃げ出さないように埒(らち)(囲い)を作って狩りをすること。ウィキソース「後漢書/卷2」参照。また同じく桓帝紀、延熹元年に「冬十月、広成に校猟して、遂に上林苑に幸す」(冬十月、校獵廣成、遂幸上林苑)とある。ウィキソース「後漢書/卷7」参照。ウィキペディア【上林苑】参照。
  • この詩は、漢の上林苑になぞらえて、唐の御苑の風物を詠んだもの。
  • 張仲素 … 769?~819。中唐の詩人。河間(河北省献県(けんけん))の人。字(あざな)は絵(かい)之(し)。貞元十四年(798)、李翺・呂温とともに進士に及第。武寧軍従事となったが、元和十年(815)、司勲員外郎となり、元和十四年(819)、中書舎人に至った。『唐詩選』に四首収める。ウィキペディア【張仲素】参照。
回雁高飛太液池
回雁(かいがん)高(たか)く飛(と)ぶ 太液(たいえき)池(ち)
  • 回雁 … 春になって北へ帰る雁。
  • 高飛 … 空高く飛ぶ。『全唐詩』には「一作風高、一作高翻」と注する。『楽府詩集』『唐詩紀事』では「高翻」に作る。
  • 太液池 … 宮殿にあった池の名。漢代には長安城外西の建章宮の北、未央宮の西南にあった。唐代には城内の大明宮内にあった。『三輔黄図』巻四、池沼の条に「太液池は、長安故城の西、建章宮の北、未央宮の西南に在り」(太液池、在長安故城西、建章宮北、未央宮西南)とある。ウィキソース「三輔黃圖/卷之四」参照。また『史記』封禅書に「是(ここ)に於(お)いて建(けん)章(しょう)宮(きゅう)を作(つく)る。……其(そ)の北(きた)には大(たい)池(ち)・漸台(ぜんだい)を治(おさ)む、高(たか)さ二(に)十(じゅう)余(よ)丈(じょう)。命(な)づけて太液(たいえき)と曰(い)う。池(いけ)の中(なか)に蓬萊(ほうらい)・方(ほう)丈(じょう)・瀛(えい)洲(しゅう)・壺(こ)梁(りょう)有(あ)り。海(かい)中(ちゅう)の神山(しんざん)亀(き)魚(ぎょ)の属(たぐい)に象(かたど)る」(於是作建章宮。……其北治大池漸臺、高二十餘丈。命曰太液。池中有蓬萊方丈瀛洲壺梁。象海中神山龜魚之屬)とある。ウィキソース「史記/卷028」参照。
新花低發上林枝
新(しん)花(か)低(ひく)く発(ひら)く 上(じょう)林(りん)の枝(えだ)
  • 新花 … 新しく咲いたばかりの花。南朝梁の鮑泉「湘東王の春日に和す」詩(『玉台新詠』巻八・宋刻不収)に「新花 新樹に満ち、新月 新暉に麗(うるわ)し」(新花滿新樹、新月麗新暉)とある。ウィキソース「和湘東王春日」参照。また、南朝梁の何遜「雑花を詠ず」詩に「井(せい)上(じょう)に新花発(ひら)き、誰か言わん 経(かつ)て染まらずと」(井上發新花、誰言不經染)とある。井上は、井戸のほとり。ウィキソース「古詩紀 (四庫全書本)/卷094」参照。
  • 低発 … 花が地上低く咲き乱れている。
  • 上林枝 … 上林苑の木々の枝。
年光到處皆堪賞
年光(ねんこう)到(いた)る処(ところ) 皆(みな)賞(しょう)するに堪(た)えたり
  • 年光 … 初春の日の光。
  • 到処 … (春の光が)あらゆる所に満ち満ちて。
  • 皆堪賞 … (漢苑はどこもみな)鑑賞するのに十分である。賞は、愛でる。
春色人閒總未知
春色(しゅんしょく) 人間(じんかん) 総(す)べて未(いま)だ知(し)らず
  • 春色 … 春の景色。春の趣き。南朝斉の謝朓「徐都曹に和す」詩(『文選』巻三十)に「宛洛(えんらく)は遨游(ごうゆう)に佳(よ)く、春色は皇(こう)州(しゅう)に満つ」(宛洛佳遨游、春色滿皇州)とある。宛洛は、宛邑(南陽)と洛陽との二都。遨游は、気ままに遊び楽しむこと。皇州は、帝都の地。ウィキソース「昭明文選/卷30」参照。
  • 人間 … 「じんかん」と読む。人が住む世。世間。俗世間。『史記』留侯世家に「願わくは人間(じんかん)の事を棄て、赤(せき)松(しょう)子(し)に従いて游ばんと欲するのみ」(願棄人間事、欲從赤松子游耳)とある。赤松子は、仙人の号。ウィキソース「史記/卷055」参照。また『韓非子』解老篇に「狂ならば則ち人間(じんかん)法令の禍(わざわい)を免(まぬか)るること能わず」(狂則不能免人間法令之禍)とある。ウィキソース「韓非子/解老」参照。また、盛唐の李白「山中問答」に「桃花流水窅然(ようぜん)として去る、別に天地の人間(じんかん)に非ざる有り」(桃花流水窅然去、別有天地非人間)とある。ウィキソース「山中問荅」参照。
  • 総 … すべて。到底。まったく。総は、下の打ち消しを強める働きを持つ。
  • 未知 … 知られていない。知る由もない。
  • 未 … 『全唐詩』では「不」に作り、「一作未」と注する。『楽府詩集』では「不」に作る。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻七(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻三百六十七(排印本、中華書局、1960年)
  • 趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻二十七(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)
  • 『楽府詩集』巻九十五・新楽府辞(北京図書館蔵宋刊本影印、中津濱渉『樂府詩集の研究』所収)
  • 『唐詩品彙』巻五十二([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
  • 『古今詩刪』巻二十二(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、汲古書院)
  • 『唐詩紀事』巻四十二([宋]計有功輯撰、上海古籍出版社、1987年)
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