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九月九日憶山中兄弟(王維)

九月九日憶山中兄弟
がつここの さんちゅう兄弟けいていおも
おう
  • 〔テキスト〕 『唐詩選』巻七、『唐詩三百首』七言絶句、『三体詩』七言絶句・虚接、『全唐詩』巻一百二十八、他
  • 七言絶句。親・人(平声真韻)。
  • ウィキソース「九月九日憶山東兄弟」参照。
  • 『全唐詩』等には、題下に「時年十七」とある。
  • 『王右丞集箋注』には「凌本作九日憶東山兄弟」とある。
  • 九月九日憶山中兄弟 … 『三体詩』では「九日憶山東兄弟」に作る。
  • 九月九日 … 重陽の節句。この日のならわしとして、小高い丘に登り、茱萸を髪にかざし、菊の花を浮かべた酒を飲むなどして一年の厄払いをする習慣があった。菊の節句。
  • 山中 … 『全唐詩』等では「山東」に作る。「山東」とは長安と洛陽との間にある函谷関かんこくかん以東を指す。山東省ではない。
  • 王維 … 699?~761。盛唐の詩人、画家。太原(山西省)の人。あざなきつ。開元七年(719)、進士に及第。安禄山の乱で捕らえられたが事なきを得、乱後は粛宗に用いられてしょうじょゆうじょう(書記官長)まで進んだので、王右丞とも呼ばれる。また、仏教に帰依したため、詩仏と称される。『王右丞集』十巻(または六巻)がある。ウィキペディア【王維】参照。
獨在異郷爲異客
ひときょうりて かく
  • 異郷 … よその土地。見知らぬ土地。他郷。ここでは都長安を指す。
  • 異客 … 旅に出て他郷にいる人。作者自身を指す。
  • 服部南郭『唐詩選国字解』には「他國に居て作た詩なり、王維が十七歳のときの作なり、親兄弟ともに故郷に居るに、われひとり他國の異客となり、旅ずまいをすることぢや」とある。『漢籍国字解全書』第10巻(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
毎逢佳節倍思親
せつごとに 倍〻ますますしんおも
  • 佳節 … めでたい日。節句や祝日。ここでは重陽の節句を指す。
  • 佳 … 『須溪先生校本唐王右丞集』(『四部叢刊 初編集部』所収)等では「嘉」に作る。
  • 倍 … ますます。ふだんの日よりいっそう。
  • 親 … ここでは「しん」と読み、「おや」とは読まない。血のつながりのある人。身内。
  • 服部南郭『唐詩選国字解』には「たヾさへこゝろぼそいに、佳節にあへば、國もとでは親兄弟と、酒もりすることぢやがと、おもひだす」とある。
遙知兄弟登高處
はるかにる 兄弟けいてい たかきにのぼところ
  • 遥知 … 遠く離れていてもはっきり知っている。「知」は結句の「~少一人」まで掛かっている。
  • 兄弟 … 兄弟たち。
  • 登高 … (重陽の節句の行事で)山に登る。
  • 処 … ここでは「~する時」の意。
遍插茱萸少一人
あまねしゅして 一人いちにんくを
  • 遍 … みんな。全員で。
  • 茱萸 … しゅ。和名カワハジカミ。重陽の節句に、丘に登るとき、髪に茱萸の実を刺して厄除けのしるしとする風習があったという。
  • 挿 … (髪に茱萸を)かざして。「挿」は「はさみて」「さしはさみて」などとも読む。
  • 少一人 … 私ひとりが欠けている。私ひとりが足りない。「少」は「かくことを」「かかん」「かくならん」などとも読む。
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