>   漢詩   >   唐詩選   >   巻六 五絶   >   答人(太上隠者)

答人(太上隠者)

答人
人(ひと)に答(こた)う
太(たい)上(じょう)隠者(いんじゃ)
  • ウィキソース「答人」「全唐詩/卷784」参照。
  • この詩は、作者がある人に名前を問われ、何も答えず立ち去り、そのときに書き残したもの。
  • 詩題 … 人に答える。『全唐詩』には、題下に「古今詩話に云う、太上隠者は、人、其の本末を知る莫し。好事の者、従いて其の姓名を問う。答えず。詩一絶を留めて云う、と」(古今詩話云、太上隱者、人莫知其本末。好事者從問其姓名。不答。留詩一絕云)と注する。
  • 太上隠者 … 姓名・事蹟ともに不詳。太上は、最上・最高の意と、最古・太古の意とがある。ここでは後者の意か。また、太上が自称か他称かも不明。隠者は、俗世間の煩わしさから逃れて山中などに隠れて暮らしている人。隠遁者。隠士。隠君。
偶來松樹下
偶〻(たまたま)松(しょう)樹(じゅ)の下(もと)に来(きた)り
  • 偶来 … たまたまやって来た。ふとやって来た。ふらりとやって来た。
  • 松樹下 … 松の木の下。北周の庾信「王(おう)司徒褒(ほう)を傷(いた)む」詩(『古詩紀』巻一百二十六)に「柏谷(はくこく)より松樹を移し、陽(よう)陵(りょう)に墓田を買う」(柏谷移松樹、陽陵買墓田)とある。柏谷は、柏谷山。陽陵は、墓地の名。ウィキソース「古詩紀 (四庫全書本)/卷126」参照。
高枕石頭眠
枕(まくら)を高(たか)くして石頭(せきとう)に眠(ねむ)る
  • 高枕 … 安心してよく眠ること。安眠熟睡すること。『史記』張儀伝に「楚・韓の患(うれ)い無くは、則ち大王枕を高くして臥(が)し、国必ず憂い無からん」(無楚韓之患、則大王高枕而臥、國必無憂矣)とある。ウィキソース「史記/卷070」参照。また、前漢の楊雄「解嘲(かいとう)」(『文選』巻四十五)に「世治まれば、則ち庸(よう)夫(ふ)枕を高くして余り有り」(世治、則庸夫高枕而有餘)とある。庸夫は、平凡な男。ウィキソース「解嘲」参照。
  • 石頭 … 石のこと。頭は、接尾辞。『列仙伝』に「卓たるかな修羊、奇を韜(つつ)み霊を含む。石を太華に枕にし、黄精(おうせい)を餐茹(さんじょ)す」(卓矣修羊、韜奇含靈。枕石太華、餐茹黄精)とある。卓矣は、優れているなあ。修羊は、仙人の名。韜奇は、優れた才能を包み隠すこと。太華は、山の名。五岳の一つ。華山とも。黄精は、薬草の名。和名ナルコユリ。餐茹は、食べること。ウィキソース「列仙傳」参照。
山中無曆日
山(さん)中(ちゅう) 暦日(れきじつ)無(な)し
  • 山中 … 山中の生活。南朝梁の沈約「鍾(しょう)山(ざん)の詩、西陽王の教えに応ず」詩(『文選』巻二十二)に「山中は咸(み)な悦(よろこ)ぶ可く、賞(しょう)は四(しい)時(じ)を逐(お)うて移る」(山中咸可悦、賞逐四時移)とある。賞は、ここでは景色を愛(め)でること。ウィキソース「鍾山詩應西陽王教」参照。
  • 暦日 … 暦(こよみ)。『史記』文帝紀に「上(しょう)曰く、朕、犠(ぎ)牲(せい)・珪幣(けいへい)を執りて以て上帝・宗廟に事うるを獲ること、今に十四年、歴日県(はる)かに長し」(上曰、朕獲執犧牲珪幣以事上帝宗廟、十四年於今、歴日縣長)とある。犠牲は、生贄(いけにえ)。珪幣は、祭祀に供える瑞玉の供物。ウィキソース「史記/卷010」参照。また、東晋の陶潜「桃花源の詩」(『陶淵明集』巻六)に「紀(き)暦(れき)の誌(しるし)無しと雖も、四(しい)時(じ)自ずから歳(とし)を成す」(雖無紀暦誌、四時自成歳)とある。紀暦は、こよみ。誌は、記録。ウィキソース「桃花源記」参照。また、南朝陳の徐陵の楽府「雑曲」(『玉台新詠』巻九・宋刻不收)に「立春 歴日 自ずから当(まさ)に新たなるべし、正月 春(しゅん)旛(ばん) 底(なん)ぞ故(ふる)きを須(もち)いんや」(立春歴日自當新、正月春旛底須故)とある。春旛は、綾絹(あやぎぬ)を切って作った旛(はた)。立春の日に士大夫の家で作る。春幡に同じ。ウィキソース「雜曲 (徐陵)」参照。
寒盡不知年
寒(かん)尽(つ)くるも年(とし)を知(し)らず
  • 寒尽 … 寒さが尽きて暖かくなっても。冬が去って春が来ても。ここでは、年が改まったことを指す。『禽経(きんけい)』に「中春 寒尽きて、雁始めて北に向かう」(中春寒盡、雁始北向)とある。ウィキソース「禽經」参照。
  • 不知年 … 年が改まったことを知らない。今年が何年だか知らない。
詩型・韻字
  • 五言絶句。
  • 眠・年(下平声先韻)。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻六(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻七百八十四(排印本、中華書局、1960年)
  • 『唐詩解』巻二十四(順治十六年刊、内閣文庫蔵)
  • 『唐詩品彙』巻四十五([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
  • 『唐詩別裁集』巻十九([清]沈徳潜編、乾隆二十八年教忠堂重訂本縮印、中華書局、1975年)
  • 『古今詩刪』巻二十(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、汲古書院)
歴代詩選
古代 前漢
後漢 魏
晋 南北朝
初唐 盛唐
中唐 晩唐
北宋 南宋
金 元
明 清
唐詩選
巻一 五言古詩 巻二 七言古詩
巻三 五言律詩 巻四 五言排律
巻五 七言律詩 巻六 五言絶句
巻七 七言絶句
詩人別
あ行 か行 さ行
た行 は行 ま行
や行 ら行