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尋隠者不遇(賈島)

尋隱者不遇
隠者(いんじゃ)を尋(たず)ねて遇(あ)わず
賈(か)島(とう)
  • ウィキソース「尋隱者不遇」参照。
  • この詩は、山中に住む隠者を尋ねたが会えなかったので、その時のことを詠んだもの。
  • 詩題 … 『全唐詩』巻五百七十四には、題下に「一に孫革が羊尊師を訪(たず)ぬ詩に作る」(一作孫革訪羊尊師詩)と注する。『全唐詩』巻四百七十三では、孫革の作とし、詩題を「羊尊師を訪(たず)ぬ」(訪羊尊師)として重出。題下に「一に賈島の詩に作る」(一作賈島詩)と注する。ウィキソース「訪羊尊師」参照。『文苑英華』でも孫革の作とし、詩題を「訪羊尊師」に作る。『万首唐人絶句』では、無本(賈島の僧名)の作とし、詩題を「尋隠不遇二首其一」に作る。
  • 隠者 … 煩わしい俗世間から隠れて静かに暮らしている人。隠遁者・隠士とも。
  • 賈島 … 779~843。中唐の詩人。范陽(はんよう)郡涿(たく)県(河北省涿州市)の人。字(あざな)は閬(ろう)(浪)仙(せん)。初め何度も科挙に落第した末、出家して無本と号したが、のちに韓愈に詩才を認められて還俗(げんぞく)した。遂(すい)州長江県(四川省蓬渓(ほうけい)県)の主簿に任ぜられ、のち普州(四川省安岳県)の司倉参軍に転任となったが、赴任しないうちに卒(しゅっ)した。「推敲」の故事で有名。『賈浪仙長江集』十巻がある。ウィキペディア【賈島】参照。
松下問童子
松(しょう)下(か) 童(どう)子(じ)に問(と)えば
  • 松下 … 松の木の下で。東晋の陶潜「飲酒」詩の第十四首に「荊(けい)を班(し)いて松下に坐し、数〻(しばしば)斟(く)んで已に復た酔う」(班荊坐松下、數斟已復醉)とある。荊を班(し)くとは、友人と睦(むつ)まじく並んで、荊(いばら)を敷いて座ること。ウィキソース「飲酒二十首」参照。
  • 松 … 『文苑英華』では「花」に作る。
  • 童子 … 隠者のそば近くに仕える子ども。侍童。『詩経』衛風・芄蘭(がんらん)に「芄蘭(がんらん)の支(えだ)、童子 觿(けい)を佩(お)ぶ」(芄蘭之支、童子佩觿)とある。芄蘭は、草の名。ガガイモ。多年生の蔓草(つるくさ)。觿は、くじり。角(つの)の先を尖(とが)らせて、紐などの結び目を解くのに用いるもの。腰につけて飾りにしたという。ウィキソース「詩經/芄蘭」参照。また『礼記』檀弓(だんぐう)上篇に「童子隅(ぐう)坐(ざ)して燭(しょく)を執(と)る」(童子隅坐而執燭)とある。隅坐は、片隅に座ること。ウィキソース「禮記/檀弓上」参照。
言師採藥去
言(い)う 師(し)は薬(くすり)を採(と)らんとして去(さ)れり
  • 言 … 童子が答えて言った。
  • 師 … 先生。ここでは、童子が仕えている隠者を指す。
  • 採薬去 … 薬草を採りに出かけられました。薬は、薬草。薬草を採集するのが隠者の仕事である。『後漢書』龐公伝に「後(のち)、遂に其の妻子を携(たずさ)えて鹿門山に登り、因りて薬を采(と)りて反(かえ)らず」(後遂攜其妻子登鹿門山、因采藥不反)とある。ウィキソース「後漢書/卷83」参照。また『抱朴子』弁問篇に「室に入りて形を煉り、山に登りて薬を采(と)る」(入室煉形、登山采藥)とある。ウィキソース「抱朴子/卷12」参照。また、三国魏の阮籍「詠懐詩八十二首」の第四十一首に「薬を採るものは旋返(せんばん)する無く、神仙も志(し)は符(あ)わず」(採藥無旋返、神仙志不符)とある。旋返は、巡り帰る。志は、書き留める。文書。誌と同義。符(あ)わずとは、食い違うこと。ウィキソース「詠懷詩五言八十二首」参照。
只在此山中
只(た)だ此(こ)の山(さん)中(ちゅう)に在(あ)らんも
  • 只 … きっと。いずれ。
  • 在此山中 … この山中におられるはずだが。『楚辞』九章・渉江に「吾が生の楽しみ無きを哀しみ、幽独(ゆうどく)にして山中に処(お)る」(哀吾生之無樂兮、幽獨處乎山中)とある。幽独は、隠れ離れてひとりでいること。ウィキソース「楚辭/九章」参照。
雲深不知處
雲(くも)深(ふか)くして処(ところ)を知(し)らず
  • 雲深 … 雲が深すぎて。北斉の鄭(てい)公超「庾(ゆ)羽騎(うき)抱(ほう)を送る」詩(『古詩紀』巻一百二十)に「旧宅 青山遠く、帰路 白雲深し」(舊宅青山遠、歸路白雲深)とある。羽騎は、近衛騎兵。ウィキソース「古詩紀 (四庫全書本)/卷120」参照。
  • 不知処 … どこにおられるのやら、さっぱりわからない。西晋の皇甫謐『高士伝』巻下に「夏(か)馥(ふく)、字(あざな)は子治(しじ)、陳(ちん)留(りゅう)圉(ぎょ)の人なり。……林慮山(りんりょさん)中に入り、……家人求むれども処を知らず」(夏馥字子治、陳留圉人也。……入林慮山中、……家人求不知處)とある。ウィキソース「高士傳」参照。
詩型・韻字
  • 五言絶句。
  • 去・處(去声御韻)。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻六(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻五百七十四(排印本、中華書局、1960年)
  • 『全唐詩』巻四百七十三(排印本、中華書局、1960年)※作者:孫革、詩題:訪羊尊師として収録
  • 『唐詩三百首注疏』巻六上・五言絶句(廣文書局、1980年)
  • 『文苑英華』巻二百二十八(影印本、中華書局、1966年)※作者:孫革、詩題:訪羊尊師として収録
  • 『唐詩解』巻二十四(順治十六年刊、内閣文庫蔵)
  • 『唐詩品彙』巻四十三([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
  • 『唐詩別裁集』巻十九([清]沈徳潜編、乾隆二十八年教忠堂重訂本縮印、中華書局、1975年)
  • 『万首唐人絶句』五言・巻二十五(明嘉靖本影印、文学古籍刊行社、1955年)※作者:無本、詩題:尋隱不遇として収録
  • 『古今詩刪』巻二十(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、汲古書院)
  • 松浦友久編『続校注 唐詩解釈辞典〔付〕歴代詩』(大修館書店、2001年)
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