古別離(孟郊)
古別離
古別離
古別離
- ウィキソース「古別離 (孟郊)」参照。
- この詩は、夫(または恋人)との別れに際し、女心を詠んだもの。
- 詩題 … 楽府題。古い調べに倣って作った、別離の情を詠んだ詩。古は、古い調べに擬して作ったという意味。『楽府詩集』の解説に「楚辞に曰く、悲しきは生別離より悲しきは莫し、と。古詩に曰く、行き行きて重ねて行き行く、君と生きながら別離す。相去ること万余里、各〻天の一涯に在り、と。後、蘇武匈奴に使いし、李陵之に詩を与えて曰く、良時再びす可からず、離別須臾に在り、と。故に後人之に擬して古別離を為る」(楚辭曰、悲莫悲兮生別離。古詩曰、行行重行行、與君生別離。相去萬餘里、各在天一涯。後蘇武使匈奴、李陵與之詩曰、良時不可再、離別在須臾。故後人擬之爲古別離)とある。ウィキソース「樂府詩集/071卷」参照。『全唐詩』巻二十六(雑曲歌辞、聶夷中の作)に重出。また『全唐詩』巻六百三十六(聶夷中の作)にも重出し、題下に「一作孟郊詩」と注する。
- 孟郊 … 751~814。中唐の詩人。湖州武康(浙江省)の人。字は東野。貞元十二年(796)、進士に及第。溧陽(江蘇省)の尉となったが、のちに辞任した。韓愈とは生涯親しかった。『孟東野詩集』十巻がある。ウィキペディア【孟郊】参照。
欲別牽郎衣
別れんと欲して郎が衣を牽く
- 欲別 … 今まさに別れようとするとき。
- 牽郎衣 … あなたの着物の袖を引く。あなたの着物の袖を引きながら申します。郎は、女性が夫や恋人を呼ぶ語。古楽府「東門行」(『楽府詩集』巻三十七)に「剣を抜きて門を出でて去らんとす、児女は衣を牽きて啼く」(拔劍出門去、兒女牽衣啼)とある。ウィキソース「樂府詩集/037卷」参照。
郎今到何處
郎は今 何処にか到る
- 郎今到何處 … あなたは今からどちらへ行くの。『全唐詩』巻二十六、『全唐詩』巻六百三十六、『楽府詩集』『万首唐人絶句』では「郎に問う何処にか遊ぶと」(問郎遊何處)に作る。
- 到 … 『唐詩別裁集』では「向」に作る。
不恨歸來遲
帰り来ることの遅きを恨みず
- 不恨帰来遅 … 帰りが遅くなるのは恨みませんが。『楚辞』招隠士に「王孫帰り来れ、山中には以て久しく留まる可からず」(王孫兮歸來、山中兮不可以久留)とある。王孫は、隠士。ここでは、屈原を指す。ウィキソース「招隱士」参照。また、隋の蘇蟬翼「故人の帰るに因りての作」(『古詩紀』巻一百三十八)に「郎去ること何ぞ太だ速やかなるや、郎来ること何ぞ太だ遅かるや」(郎去何太速、郎來何太遲)とある。ウィキソース「古詩紀 (四庫全書本)/卷138」参照。
- 來 … 『全唐詩』巻二十六、『全唐詩』巻六百三十六、『楽府詩集』『万首唐人絶句』では「日」に作る。
莫向臨邛去
臨邛に向って去ること莫かれ
- 莫向臨邛去 … 美人が多くいるという臨邛の町だけは行かないで下さいね。臨邛は、現在の四川省成都市邛崍市。成都の西南にある町。ウィキペディア【邛崍市】参照。ここは昔、前漢の司馬相如(前179~前117)が富豪の娘卓文君と恋仲になった所。二人は駆落ちし、成都へ行ったが生計が成り立たず、また臨邛の町へ戻り、飲み屋を開いたという。ここでは、そんな美人がいる町だから、夫(または恋人)が浮気を起こさないようにと、女心を述べたもの。『史記』司馬相如伝に「会〻梁の孝王卒す。相如帰るも、家貧しく、以て自ら業とする無し。素より臨邛の令王吉と相善し。……臨邛の中、富人多く、而うして卓王孫は家僮八百人あり、……令に貴客有り、為に具して之を召く。……酒酣にして、臨邛の令前みて琴を奏めて曰く、窃かに聞く長卿之を好むと。願わくは以て自ら娯しめ、と。相如辞謝し、為に鼓すること一再行。是の時、卓王孫、女文君というもの有り。新たに寡となり、音を好む。故に相如繆りて令と相重んじ、而うして琴心を以て之に挑む。……卓氏に飲し琴を弄するに及びて、文君窃かに戸より之を窺い、心悦びて之を好しとす。……文君、夜亡げて相如に奔る。相如乃ち与に馳せて成都に帰る。家居徒だ四壁立つのみ。……相如、与に倶に臨邛に之き、尽く其の車騎を売り、一酒舎を買いて酒を酤る。而うして文君をして炉に当たらしむ」(會梁孝王卒。相如歸、而家貧、無以自業。素與臨邛令王吉相善。……臨邛中多富人、而卓王孫家僮八百人、……令有貴客、爲具召之。……酒酣、臨邛令前奏琴曰、竊聞長卿好之。願以自娯。相如辭謝、爲鼓一再行。是時卓王孫有女文君。新寡、好音。故相如繆與令相重、而以琴心挑之。……及飮卓氏弄琴、文君竊從戸窺之、心悦而好之。……文君夜亡奔相如。相如乃與馳歸成都。家居徒四壁立。……相如與倶之臨邛、盡賣其車騎、買一酒舍酤酒。而令文君當爐)とある。ウィキソース「史記/卷117」参照。
詩型・韻字
- 五言絶句。
- 處・去(去聲御韻)。
テキスト
- 『箋註唐詩選』巻六(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
- 『全唐詩』巻三百七十二(排印本、中華書局、1960年)
- 『全唐詩』巻二十六・雑曲歌辞・古別離(排印本、中華書局、1960年)※聶夷中の作として収録
- 『全唐詩』巻六百三十六(排印本、中華書局、1960年)※聶夷中の作として収録
- 『孟東野詩集』巻一(『四部叢刊 初編集部』所収)
- 『楽府詩集』巻七十一・雑曲歌辞(北京図書館蔵宋刊本影印、中津濱渉『樂府詩集の研究』所収)※聶夷中の作として収録
- 『唐詩解』巻二十四(順治十六年刊、内閣文庫蔵)
- 『唐詩品彙』巻四十三([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
- 『唐詩別裁集』巻十九([清]沈徳潜編、乾隆二十八年教忠堂重訂本縮印、中華書局、1975年)
- 『万首唐人絶句』五言・巻十六(明嘉靖本影印、文学古籍刊行社、1955年)※聶夷中の作として収録
- 『古今詩刪』巻二十(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、汲古書院)
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