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杜少府之任蜀州(王勃)

杜少府之任蜀州
しょうにん蜀州しょくしゅう
王勃おうぼつ
  • 〔テキスト〕 『唐詩選』巻三、『唐詩三百首』五言律詩、『全唐詩』巻五十六、『王子安集』巻三(『四部叢刊 初編集部』所収)、『王勃集』巻下(『前唐十二家詩』所収)、『王勃集』巻下(『唐五十家詩集』所収)、『王勃集』巻下・延享四年刊(『和刻本漢詩集成 唐詩1』所収、19頁、略称:延享刊本)、『文苑英華』巻二百六十六、『唐詩品彙』巻五十六、『唐詩別裁集』巻九、他
  • 五言律詩。秦・津・人・鄰・巾(平声真韻)。
  • ウィキソース「杜少府之任蜀州」「王子安集 (四部叢刊本)/卷第三」参照。
  • 杜 … 姓。
  • 少府 … 官名。県尉(県の検察や警察を指揮する職)の敬称。
  • 蜀州 … 今の四川省。
  • 州 … 『全唐詩』には「一作川」とある。『文苑英華』では詩題を「送杜少府之任蜀州」に作り、「集作川」とある。
  • 之任 … 赴任する。
  • 王勃 … 650~676。初唐の詩人。こうしゅう竜門(山西省しん県)の人。あざなあん。王績の兄である王通(おうとう・おうつう、文中子)の孫。乾封元年(666)、ゆう(唐代の科挙の科目名)の挙に及第。朝散郎を授けられた。南海を舟で渡る途中、溺死した。初唐四傑(王勃・楊炯・盧照鄰・駱賓王)の一人に数えられる。『王子安集』十六巻がある。ウィキペディア【王勃】参照。
城闕輔三秦
じょうけつ 三秦さんしんとし
  • 城闕 … ここでは長安城。長安の宮殿。「城闕」の本来の意味は、物見台のある城門のこと。
  • 輔 … 助けられている。守られている。
  • 輔三 … 『全唐詩』には「一作俯西」とある。『文苑英華』には「集作俯西」とある。
  • 三秦 … 秦王朝滅亡後、かつての秦国を三つに分割して治めさせたところから出た言葉。秦の地方のこと。ここでは都をとりまく畿内の地。
風煙望五津
風煙ふうえん しんのぞ
  • 風煙 … 風に流れているかすみ。
  • 煙 … 『唐詩選』『唐詩品彙』では「烟」に作る。異体字。
  • 五津 … 四川省にある大江(揚子江の支流)の五つの渡し場。「津」は渡し場。
  • 望 … 遠望する。
與君離別意
きみべつ
  • 君 … 杜少府を指す。
  • 与 … 「と」と読み、「~と」と訳す。「A与B」の場合は、「AとB」と読む。「與」は「与」の旧字体。
  • 意 … 気持ち。
同是宦遊人
おなじくれ 宦遊かんゆうひと
  • 同 … 「ともに」と読んでもよい。『全唐詩』には「一作倶」とある。『文苑英華』には「集作倶」とある。
  • 宦遊人 … 故郷を離れて、任地を転々とする役人暮らしの人。
海内存知己
海内かいだい 知己ちきそんせば
  • 海内 … 四海の内。天下。広い世界。
  • 知己 … 自分を真に理解してくれる人。親友。『史記』晏嬰伝に「君子は己を知らざるにくっするも、己を知る者にぶ」(君子詘於不知己、而信於知己者)とある。ウィキソース「史記/卷062」参照。また刺客伝・豫譲の条にも「嗟乎ああ、士は己を知る者の為にし、女は己をよろこぶ者の為にかたちづくる」(嗟乎、士爲知己者死、女爲説己者容)とある。ウィキソース「史記/卷086」参照。また秦宓しんひつの「遠遊」(『古詩紀』巻二十七)に「巌穴がんけつ我がとなりに非ず、林麓りんろく知己無し」(巖穴非我鄰、林麓無知己)とある。ウィキソース「古詩紀 (四庫全書本)/卷027」参照。
  • 己 … 『前唐十二家詩本』『唐五十家詩集本』『文苑英華』『唐詩品彙』では「巳」に作る。
  • 存 … いる。存在する。
天涯若比鄰
天涯てんがいりんごと
  • 天涯 … 天の果て。空の果て。非常に遠い所。涯は、かぎり。地の果て。『論衡』率性篇に「人間じんかんの水は汚濁なるも、野外に在る者は清潔なり。ともに一水たり、みなもとは天涯よりするも、或いは濁り或いはむは、在る所の勢い、之をして然らしむるなり」(人閒之水汚濁、在野外者淸潔。倶爲一水、源從天涯、或濁或淸、所在之勢、使之然也)とある。ウィキソース「論衡/08」参照。
  • 比鄰 … となり近所。
  • 鄰 … 『四部叢刊本』『前唐十二家詩本』『唐五十家詩集本』『文苑英華』『唐詩品彙』では「隣」に作る。「鄰」は異体字。
無爲在岐路
かれ 岐路きろりて
  • 無為 … 「けん」とも読む。やめようではないか。よそうじゃないか。
  • 岐路 … 分かれ道。ここでは別れ道。
兒女共沾巾
じょともきんうるおすを
  • 児女 … 女子供。
  • 児女共 … 従来は「児女とともに」と訓読し、「女子供のように」と訳してきた。松浦友久は、「共」を「~と同じように」と訳すのは困難であるといい、また「児女」は「如・若・像」の類を省いたまま副詞として使われていると指摘している。そして「児女共」は「児女のごとく共に」と訓読し、「児女のように(君と私とが)共に」と訳すのが妥当であると言っている。松浦友久編『校注 唐詩解釈辞典』(大修館書店)115頁参照。
  • 巾 … ハンカチ。
  • 沾 … ぬらす。『全唐詩』『四部叢刊本』『前唐十二家詩本』『唐五十家詩集本』『延享刊本』『文苑英華』『唐詩品彙』『唐詩別裁集』では「霑」に作る。同義。
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巻七 七言絶句
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