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秋風辞(漢武帝)

秋風辭
しゅうふう
かんてい
  • 〔テキスト〕 『楽府詩集』巻八十四(『四部叢刊 初編集部』所収)、『先秦漢魏晋南北朝詩』漢詩巻一、『古詩源』巻二 漢詩、『文選』巻四十五、『古文真宝(後集)』巻一、他
  • 雑言古詩。飛・歸(平声微韻)、芳・忘(平声陽韻)、河・波・歌・多・何(平声歌韻)。
  • ウィキソース「秋風辭 (劉徹)」「昭明文選/卷45」「樂府詩集/084卷」「古詩源/卷二」参照。
  • 辞 … 文体の名。『楚辞』の流れから発展した韻文。抒情的なもので「けい」を使う点に特徴がある。
  • この詩は、前113年、武帝が河東(現在の山西省南部)の汾陰ふんいんに行幸し、こう(大地の神。土地神)の祭祀を行なった折、川の中ほどに屋形船を浮かべて、群臣たちと酒宴を催し、上機嫌となって詠んだと伝えられるもの。
  • 漢武帝 … 前156~前87。前漢の第七代皇帝。姓名は劉徹。在位前141~前87。儒教を国教化、中央集権制を確立し、漢王朝の最盛期をもたらした。また、匈奴を征伐し、西域・安南・朝鮮を征服した。ウィキペディア【武帝 (漢)】参照。
秋風起兮白雲飛
しゅうふうおこりて 白雲はくうん
  • 兮 … 音は「ケイ」。調子を整える助字。訓読しない。『楚辞』や楚調の歌に多く用いられる。
草木黃落兮雁南歸
草木そうもく黄落こうらくして かり みなみかえ
  • 黄落 … 木の葉が黄ばんで落ちること。
蘭有秀兮菊有芳
らんはなり きくかお
  • 蘭 … キク科の植物、フジバカマのこと。今の「ラン」ではない。ウィキペディア【フジバカマ】参照。
  • 秀 … ここでは「はな」と読む。茎が長くのびて、その先端に花が咲いているさま。
  • 芳 … 香り。
懷佳人兮不能忘
じんおもいてわするるあたわず
  • 佳人 … 通常は美人の意。「長安の後宮に残してきた美女たち」とする説、「神女・仙女」とする説、「賢臣」とする説とに分かれる。
  • 懐 … 『文選』では「攜」に作る。「攜」は「携」の異体字。
汎樓船兮濟汾河
楼船ろうせんうかべて ふんわた
  • 楼船 … やぐらのある二階造りの船。屋形船。
  • 汎 … 浮かぶ。「泛」も同じ。
  • 汾河 … 山西省にある川。寧武県に源流を発し、西南に流れて黄河に入る。汾水ともいう。ウィキペディア【汾河】参照。
  • 済 … 渡る。
橫中流兮揚素波
中流ちゅうりゅうよこたわりて素波そは
  • 中流 … 川の中ほど。
  • 素波 … 白い波。
簫鼓鳴兮發棹歌
しょうりてとうはっ
  • 簫鼓 … 笛と太鼓。「簫」は古代の管楽器ではいしょうのこと。16~23本の細い竹管を横に並べて作ったもの。上端を吹いて鳴らす。パンパイプに似ている。
  • 棹歌 … 舟歌。「棹」は船をかいのこと。船頭が船を漕ぐときに歌う歌。とうとも。
歡樂極兮哀情多
歓楽かんらくきわまりて あいじょうおお
  • 歓楽 … 遊びや酒色の喜び、楽しみ。快楽。
  • 極 … 極限に達する。
  • 哀情 … 悲しい気持ち。
少壯幾時兮奈老何
しょうそう幾時いくときぞ いを奈何いかんせん
  • 少壮 … 年が若く、血気盛んな時。
  • 幾時 … いつまで続くのか。
  • 奈~何 … 「~をいかんせん」と読み、「~をどうしようか」「~をどうしたらよいか」と訳す。処置・方法を問う疑問・反語の意を示す。
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