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遊山西村(陸游)

遊山西村
山西(さんせい)の村(むら)に遊(あそ)ぶ
陸(りく)游(ゆう)
  • 〔テキスト〕 『澗谷精選陸放翁詩集』前集 巻五(『四部叢刊 初編集部』所収)、『剣南詩稿』巻一(『四庫全書』所収)、他
  • 七言律詩。渾・豚・村・存・門(上平声元韻)。
  • ウィキソース「遊山西村」参照。
  • 乾道三年(1167)、故郷での作。四十三歳。この前年に免職となり、帰郷していた。
  • 山西村 … 三山(さんざん)の西にある村。三山は、作者の故郷、山陰(浙江省紹興市)の鑑(鏡)湖のほとりにあり、作者はここに居を構えて住んだ。
  • この詩は、首聯(しゅれん)(または起(き)聯(れん)、第一・二句)で農家の主人が作者を招く挨拶、尾(び)聯(れん)(第七・八句)でそれに対する作者のお返しの言葉、頷聯(がんれん)(または前聯(ぜんれん)、第三・四句)で道中の描写、頸聯(けいれん)(または後聯(こうれん)、第五・六句)で村の中の情景という構成になっている。
  • 陸游 … 1125~1210。南宋の詩人。越州山陰(浙江省紹興市)の人。字(あざな)は務観。号は放翁。二十九歳のとき進士の試験に一位で及第したが、宰相秦檜(しんかい)に妨害されて殿試で落第させられた。秦檜の死後、三十四歳で初めて官界に入り、福州寧徳(現在の福建省寧徳市)の主簿に就き、さらに都の微官や地方官を歴任した。激情の憂国・愛国詩人でもあり、また自然を愛する田園詩人でもあった。著に『剣南詩稿』八十五巻、『渭(い)南(なん)文集』五十巻、『入蜀記』などがある。ウィキペディア【陸游】参照。
莫笑農家臘酒渾
笑(わら)う莫(な)かれ 農(のう)家(か)の臘酒(ろうしゅ) 渾(にご)れるを
  • 莫笑 … 笑ってはいけない。笑って下さるな。
  • 莫 … 「なかれ」と読み、「~するな」と訳す。禁止を表す。
  • 臘酒 … 陰暦十二月に仕込んで正月に飲む酒。臘は、臘月。陰暦十二月のこと。
  • 渾 … にごっている。にごり酒。どぶろくをいう。濁に同じ。
豐年留客足雞豚
豊年(ほうねん) 客(かく)を留(とど)むるに 鶏豚(けいとん)足(た)る
  • 豊年 … 去年は豊作だった。
  • 留客 … 客を引き止めて、もてなすこと。客は作者(陸游)を指す。
  • 足鶏豚 … (客をもてなす)鶏と豚が充分あること。
山重水複疑無路
山(さん)重(ちょう) 水複(すいふく) 路(みち)無(な)きかと疑(うたが)い
  • 山重水複 … 山が幾重にも重なり、川が複雑に入りくむ。
  • 疑無路 … 道はこの先行き止まりかと疑ってしまう。
柳暗花明又一村
柳(りゅう)暗(あん) 花(か)明(めい) 又(また)一村(いっそん)
  • 柳暗花明 … 柳がうっそうと茂ってほの暗く、花がぱっと明るく咲いている。
  • 又 … さらにまた。「また」には「又」「亦」「復」と三種類の漢字があるが、それぞれ微妙に意味合いが異なる。「又」は「また~」と読み、「そのうえ~」「さらに~」「加えて」と訳す。「亦」は「~(も)また」と読み、「~もまた」「~も同様に」と訳す。「復」も「また」と読み、「もう一度」「再び」と訳す。
  • 一村 … 村が一つあった。村が一つ現れた。
簫鼓追隨春社近
簫(しょう)鼓(こ) 追随(ついずい)して 春(しゅん)社(しゃ)近(ちか)く
  • 簫鼓 … たて笛と太鼓。
  • 追随 … 笛と太鼓のかけ合い。笛と太鼓の音が追いかけ合うように鳴り響いている様子。「笛と太鼓の音が作者の後を追いかけてくる」という解釈もあるが、ここでは採らない。
  • 春社 … 春の祭り。立春後、五度目の戊(つちのえ)の日に社(やしろ)で祝う春祭り。社は、土地の神を祀る祠(ほこら)。
  • 春 … 『澗谷精選陸放翁詩集』(『四部叢刊 初編集部』所収)では「村」に作る。
衣冠簡朴古風存
衣(い)冠(かん) 簡朴(かんぼく)にして 古(こ)風(ふう)存(そん)す
  • 衣冠 … 衣服と冠(かんむり)。ここでは村人の服装。
  • 簡朴 … 質素。簡素で素朴。
  • 古風存 … 昔ながらの風習がまだ残っている。
從今若許閑乘月
今(いま)より若(も)し 閑(かん)に 月(つき)に乗(じょう)ずるを許(ゆる)さば
  • 従今 … これからも。これから後も。
  • 従 … 「より」と読み、「~から」と訳す。時間・場所の起点の意を示す。自に同じ。
  • 若 … 「もし」と読み、「もし~ならば」と訳す。順接の仮定条件の意を示す。如に同じ。
  • 閑 … のんびりと。ひまな時に。ひまに任せて。
  • 乗月 … 月明かりに乗じて。月の出た折に。月に照らされて。月明かりをたよりに。月に導かれて。
  • 許 … 許してくれるなら。
拄杖無時夜叩門
杖(つえ)を拄(つ)いて 時(とき)と無(な)く 夜(よる)門(もん)を叩(たた)かん
  • 拄杖 … 杖をついて。
  • 無時 … 時間を定めずに。気の向いた時に。
  • 叩門 … あなたの家の門を叩きにまいりましょう。あなたの家を訪問しますよ。
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