子路第十三 27 子曰剛毅木訥近仁章
329(13-27)
子曰、剛毅木訥、近仁。
子曰、剛毅木訥、近仁。
子曰く、剛毅木訥は、仁に近し。
現代語訳
- 先生 ――「心がかたく、強くて、気どらず、口重いのは、よいたちだ。」(魚返善雄『論語新訳』)
- 孔子様がおっしゃるよう、「意志強固・気性勇敢・容態質朴・言語寡黙なのは、仁に近い。」(穂積重遠『新訳論語』)
- 先師がいわれた。――
「剛健な意志、毅然たる節操、表裏のない質朴さ、粉飾のない訥々たる言葉、こうした資質は、最高の徳たる仁に近い徳である」(下村湖人『現代訳論語』)
語釈
補説
- 『注疏』に「此の章は此の四者の性行有るは、仁道に近きを言うなり」(此章言有此四者之性行、近於仁道也)とある。『論語注疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
- 剛毅木訥、近仁 … 『集解』に引く王粛の注に「剛は、無欲なり。毅は、果敢なり。木は、質樸なり。訥は、遅鈍なり。此の四者有れば、仁に近きなり」(剛、無欲也。毅、果敢也。木、質樸也。訥、遲鈍也。有此四者、近於仁也)とある。『論語集解』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『義疏』に「此れ四事仁と相似たるを言う。故に云う、仁に近し、と。剛者の性は欲を求むること無し。仁者は静かなり。故に剛者は仁に近きなり。毅者の性は果敢なり。仁者必ず勇有り。周窮済急にして、身を殺して仁を成す。故に毅者は仁に近きなり。木者は質樸、仁者は華飾を尚ばず。故に木者は仁に近きなり。訥者は言語遅鈍なり。仁者は言を慎む。故に訥者は仁に近きなり」(言此四事與仁相似。故云、近仁。剛者性無求欲。仁者静。故剛者近仁也。毅者性果敢。仁者必有勇。周窮濟急、殺身成仁。故毅者近仁也。木者質樸、仁者不尚華飾。故木者近仁也。訥者言語遲鈍。仁者愼言。故訥者近仁也)とある。『論語義疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『注疏』に「仁者は静かなり。剛は無欲にして亦た静かなり、故に剛は仁に近きなり。仁者は必ず勇有り。毅者は果敢なり、故に毅は仁に近きなり。仁者は華飾を尚ばず。木者は質樸なり、故に木は仁に近きなり。仁者は其の言や訒なり。訥者は遅鈍なり、故に訥は仁に近きなり」(仁者靜。剛無欲亦靜、故剛近仁也。仁者必有勇。毅者果敢、故毅近仁也。仁者不尚華飾。木者質樸、故木近仁也。仁者其言也訒。訥者遲鈍、故訥近仁也)とある。
- 『集注』に引く程頤の注に「木とは質樸。訥とは遅鈍。四者は質の仁に近き者なり」(木者質樸。訥者遲鈍。四者質之近乎仁者也)とある。『論語集注』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
- 『集注』に引く楊時の注に「剛毅なれば則ち物欲に屈せず。木訥なれば則ち外馳に至らず。故に仁に近し」(剛毅則不屈於物欲。木訥則不至於外馳。故近仁)とある。
- 伊藤仁斎『論語古義』に「仁を為すこと誠を立つるに在り。誠立つときは則ち敢えて人を欺かず。故に其の質剛毅木訥なる者は、未だ仁に至らずと雖も、而も色取りて行い違う者と異なり。故に曰く、仁に近しと。蓋し巧言令色は、外似て内実に偽る。剛毅木訥は、外野にして内取る可し。聖人仁不仁を弁ずる所以の者、是に於いて見る可し」(爲仁在乎立誠。誠立則不敢欺人。故其質剛毅木訥者、雖未至仁、而與色取而行違者異。故曰近仁。蓋巧言令色、外似而内實僞。剛毅木訥、外野而内可取。聖人所以辨仁不仁者、於是可見矣)とある。『論語古義』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
- 荻生徂徠『論語徴』に「剛毅木訥は、蓋し古えの成言にして、剛毅の人は、多く是れ質樸にして言に拙し。故に剛毅は木訥と曰う。猶お巧言の必ず令色を帯びて之を言い、而うして重んずる所は巧言に在るが如きのみ。仁に近しとは、其の仁を成し易きを言うなり。……蓋し仁は力行に在り、剛毅木訥の人は、必ず能く力行す。故に云うこと爾り。後儒析きて以て四と為し、而うして剛は何を以ての故に仁に近く、毅は何を以ての故に仁に近く、木と訥とは各〻何を以ての故ぞと謂う者は、皆古言を識らざるのみ」(剛毅木訥、蓋古之成言、剛毅之人、多是質樸而拙於言。故曰剛毅木訥。猶如巧言必帶令色言之、而所重在巧言耳。近仁者、言其易成仁也。……蓋仁在力行、剛毅木訥之人、必能力行。故云爾。後儒析以爲四、而謂剛以何故近仁、毅以何故近仁、木與訥各以何故者、皆不識古言爾)とある。『論語徴』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
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