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顔淵第十二 7 子貢問政章

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子貢問政。子曰。足食。足兵。民信之矣。子貢曰。必不得已而去。於斯三者何先。曰。去兵。子貢曰。必不得已而去。於斯二者何先。曰。去食。自古皆有死。民無信不立。
こうまつりごとう。いわく、しょくらし、へいらし、たみこれしんず。こういわく、かならむをずしてらば、三者さんしゃいてなにをかさきにせん。いわく、へいらん。こういわく、かならむをずしてらば、しゃいてなにをかさきにせん。いわく、しょくらん。いにしえよりみなり、たみしんくんばたず。
現代語訳
  • 子貢が政治のことをきく。先生 ――「食糧をふやし、軍備をよくし、人民が信頼することだ。」子貢 ―― 「どうしてもダメなときは、この三つのどれをすてますか。」 ―― 「軍備をすてる。」子貢 ―― 「どうしてもダメなときは、あとの二つのどれをすてますか。」 ―― 「食糧だ。昔から人はみな死ぬが…。信頼がなくては、国は立たぬ。」(魚返おがえり善雄『論語新訳』)
  • 子貢が政治の要諦についてたずねた。先師はこたえられた。――
    「食糧をゆたかにして国庫の充実をはかること、軍備を完成すること、国民をして政治を信頼せしめること、この三つであろう」
    子貢がさらにたずねた。――
    「その三つのうち、やむなくいずれか一つを断念しなければならないとしますと、まずどれをやめたらよろしゅうございましょうか」
    先師――
    「むろん軍備だ」
    子貢がさらにたずねた。
    「あとの二つのうち、やむなくその一つを断念しなければならないとしますと?」
    先師――
    「食糧だ。国庫が窮乏しては為政者が困るだろうが、昔から人間は早晩死ぬものときまっている。国民に信を失うぐらいなら、飢えて死ぬ方がいいのだ。信がなくては、政治の根本が立たないのだから」(下村湖人『現代訳論語』)
語釈
  • 子貢 … 前520~前446。姓は端木たんぼく、名は。子貢はあざな。衛の人。孔子より三十一歳年少の門人。孔門十哲のひとり。弁舌・外交に優れていた。ウィキペディア【子貢】参照。
  • 政 … 政治の要点。
  • 足食 … 食糧を十分にする。
  • 足兵 … 軍備を十分にする。
  • 民信之矣 … 人民が為政者を信頼する。
  • 必不得已 … どうしてもやむを得ない事情で。「已」は「止」に同じ。
  • 去 … 捨て去る。
  • 於斯三者 … この三つの中で。「於」は動詞よりも後ろにある場合は置き字として読まない。ここでは「於」が動詞(先にす)よりも前にあるので「おいて」と読む。
  • 何先 … 「なにをかさきにせん」と読む。「何を先にしようか」と訳す。ここでは「どれを先に捨て去るべきか」の意。
  • 自古 … 昔から。「自」は「より」と読む。
  • 民無信 … 人民が為政者を信頼する心がなければ。
  • 不立 … 存立しない。成立しない。
  • 「無~不…」 … 否定語を重ねた形。「~なくんば…(せ)ず」と読む。
補説
  • 民信之矣 … 「之をしんにす」と読み、「人民に信義を重んじる心をもたせる」と訳す説もある。『義疏』では「令民信之矣」に作る。「矣」は置き字。読まない。
  • 去兵。子貢曰 … 『義疏』に「子貢」の字なし。
  • 民無信 … 『義疏』では「民不信」に作る。
学而第一 為政第二
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子罕第九 郷党第十
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子路第十三 憲問第十四
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子張第十九 堯曰第二十