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和李秀才辺庭四時怨二首 其二(盧弼)

和李秀才邊庭四時怨二首 其二
しゅうさい辺庭へんてい四時しじえんす二首 其の二
ひつ
  • 〔テキスト〕 『唐詩選』巻七、『全唐詩』巻六百八十八、『古今詩刪』巻二十二(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、62頁)、『唐詩品彙』巻五十五、『才調集』巻八、他
  • 七言絶句。瘢・寒(平声寒韻)、山(平声刪韻)通用。
  • ウィキソース「御定全唐詩 (四庫全書本)/卷688」参照。
  • 詩題 … 『全唐詩』では「和李秀才邊庭四時怨四首 其四」に作る。『古今詩刪』では「和李秀才邊庭四時怨二首 冬」に作る。ウィキソース「古今詩刪 (四庫全書本)/卷22」参照。『唐詩品彙』では「和李秀才邊庭四時怨四首 冬」に作る。『才調集』では「答李秀才邊庭四時怨四首 冬」に作る。
  • 李 … 李某。人物については不明。
  • 秀才 … 唐初は秀才科の試験に合格した者を呼んだが、秀才科がまもなく廃止されたため、進士科の受験資格者、すなわち地方の選抜試験に合格した者をいう。ウィキペディア【秀才 (科挙)】参照。
  • 辺庭 … 国境付近。庭は、その辺り。
  • 四時 … 「しいじ」と読んでもよい。四季。春夏秋冬。『論語』陽貨篇に「四時しじおこなわれ、ひゃくぶつしょうず」(四時行焉、百物生焉)とある。ウィキソース「論語/陽貨第十七」参照。
  • 怨 … 怨み。哀しみ。憂愁。辛苦。
  • 和 … 唱和すること。詳しくは和韻すること。和韻には、依韻・用韻・次韻の三種がある。依韻は、原作と同類の韻を用いること。用韻は、原作に用いられている韻字を順不同でそのまま用いること。次韻は、原作と同一の字を同一の順に用いること。ここでは李秀才の元の詩が不明なので、どの和韻かわからない。
  • この詩は、進士の受験資格者となった李某が「辺庭四時怨」と題する辺地における春夏秋冬の辛苦を詠んだ詩を作ってよこしたのに対し、作者が唱和したもの。四首の連作で、その第四首。冬を詠んだもの。
  • 盧弼 … 生没年不詳。晩唐の詩人。范陽(今の河北省涿州市)の人。あざなは子諧。大暦十才子の一人盧綸の孫。『全唐詩』では「汝弼じょひつ」に作る。昭宗の景福二年(893)、進士に及第(『登科記考』巻二十四)。祠部員外郎・知制誥となった。最後は李克用に従い、節度副使になったという。ウィキペディア【盧弼】参照。
朔風吹雪透刀瘢
朔風さくふうゆきいて刀瘢とうはんとお
  • 朔風 … 北風。朔は、北方のこと。曹植の「朔風の詩」(『文選』巻二十九)に「朔風さくふうあおぎ、もっ魏都ぎとおもう」(仰彼朔風、用懐魏都)とある。ウィキソース「朔風詩」参照。また謝朓の「ちょうる」(『文選』巻三十)に「朔風さくふう飛雨ひうき、蕭条しょうじょうとしてこうじょうよりきたる」(朔風吹飛雨、蕭條江上來)とある。ウィキソース「昭明文選/卷30」参照。
  • 吹雪 … 雪を吹きつけて。
  • 刀瘢 … 刀きず。『説文解字』巻七下、疒部に「瘢は、痍なり」(瘢、痍也)とあり、徐注に「きずつくところすでゆると謂いてあと有るをはんと曰う」(痍處謂已愈有痕曰瘢)ウィキソース「說文解字/07」「説文解字繫傳 (四部叢刊本)/卷第十四」参照。
  • 透 … 寒さが染み透る。深く染みる。
飮馬長城窟更寒
うまみずかえば 長城ちょうじょうくつさらさむ
  • 飲馬 … 馬に水を飲ませようとすれば。
  • 長城窟 … 万里の長城の下にある岩穴。水が湧き出ているので、旅人はここで馬に水を飲ませる。漢代の楽府に「飲馬長城窟行」(『楽府詩集』巻三十八・相和歌辞・瑟調曲)がある。ウィキソース「樂府詩集/038卷」参照。『文選』巻二十七、「飲馬長城窟行」の李善注に引く『水経注』に「余、長城に至れば、其の下に往々泉窟有り。馬にみずかう可し」(余至長城、其下往往有泉窟。可飮馬)とある。ウィキソース「昭明文選/卷27」参照。また『楽府古題要解』巻下、飲馬長城窟行の条に「陳琳の水寒くして馬骨を傷ましむの若きは、則ち秦人が長城の役に苦しむを言うなり」(若陳琳水寒傷馬骨、則言秦人苦長城之役也)とある。ウィキソース「樂府古題要解」参照。
  • 更寒 … 一段と寒い。
夜半火來知有敵
はん きたりててきるを
  • 夜半 … 夜中。『全唐詩』『古今詩刪』『唐詩品彙』『才調集』では「半夜」に作る。
  • 火来 … のろしの火が伝わってくる。
  • 知有敵 … 敵の来襲を知った。
一時齊保賀蘭山
いちひとしくたもつ 蘭山らんざん
  • 一時 … 兵士たちが一度に起ち上がる。
  • 斉保 … 一斉に守備を固める。
  • 賀蘭山 … 今の寧夏回族自治区の首府銀川市の西北にある山脈。『元和郡県図志』関内道、霊州、賀蘭山の条に「県の西九十三里に在り。山有り樹木青白にして、望めばはくの如し。北人、駮を呼んで賀蘭と為す」(賀蘭山、在縣西九十三里。山有樹木靑白、望如駮馬。北人呼駮爲賀蘭)とある。駮馬は。毛色がまじって斑になっている馬。ウィキソース「元和郡縣圖志/卷04」参照。
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