成徳楽(王表)
成德樂
成徳楽
成徳楽
- 〔テキスト〕 『唐詩選』巻七、『全唐詩』巻二百八十一、『古今詩刪』巻二十二(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、65頁)、『唐詩品彙』巻五十二、『才調集』巻九、他
- 七言絶句。樓・秋・流(平声尤韻)。
- ウィキソース「成德樂」参照。
- 詩題 … 唐の楽曲の名の一つ。成徳とは、成し遂げた徳。完全な徳。また、徳を成し遂げること。題名と詩の内容とは関係ない。
- この詩は、趙国の美女が歌う悲しい歌声に、旅愁をそそられたことを詠んだもの。
- 王表 … 生没年不詳。中唐の詩人。大暦十四年(779)、進士に及第。秘書少監となった。『全唐詩』に詩三首を収める。
趙女乘春上畫樓
趙女春に乗じて画楼に上り
- 趙女 … 趙国の女性。燕国の女性とともに美人の産地といわれた。「古詩十九首 其の十二」(『文選』巻二十九、『玉台新詠』巻一)に「燕・趙には佳人多し、美なる者顔玉の如し」(燕趙多佳人、美者顏如玉)とある。ウィキソース「東城高且長」参照。また張衡「南都の賦」(『文選』巻四)に「斉童唱えて趙女列なり、坐して南歌し起って鄭舞す」(齊童唱兮列趙女、坐南歌兮起鄭舞)とある。ウィキソース「南都賦」参照。趙は、戦国七雄の一つ。今の山西省北部から河北省東南部を領有した。晋の大夫の趙氏が、韓氏・魏氏とともに晋の領土を3分して独立したもの。初め晋陽(今の山西省太原市)に都を置き、のち邯鄲(今の河北省邯鄲市)に移した。前222年、秦に滅ぼされた。ウィキペディア【趙 (戦国)】参照。
- 乗春 … 春の陽気に任せて。春の陽気に誘われて。乗は、機会をちょうど利用すること。
- 画楼 … 美しく彩色した高楼。
一聲歌發滿城秋
一声 歌は発す 満城の秋
- 一声 … ひと声。
- 歌発 … 歌を悲しげに唱えば。
- 満城秋 … 町中が秋の気配のように物悲しさが漂う。満城は、町全体。町中。
無端更唱關山曲
端無くも更に唱う 関山の曲
- 無端 … 思いがけなくも。
- 関山曲 … 楽府題の一つ。関山は、関所のある山。「関山月」「度関山」などの楽府題と同様、出征兵士や旅人の望郷の愁いを詠う。『楽府古題要解』巻下、関山月の条に「皆離別を傷むを言うなり」(皆言傷離別也)とある。ウィキソース「樂府古題要解」参照。
不是征人亦淚流
是れ征人ならずとも亦た涙流れん
- 不是征人亦涙流 … この歌を聞けば、たとえ旅人でなくても涙を流さずにはいられない。まして私のような旅人は思わず涙がこぼれてしまう。
- 征人 … 旅人。または遠征の兵士。
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