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十五夜望月(王建)

十五夜望月
十(じゅう)五(ご)夜(や)、月(つき)を望(のぞ)む
王建(おうけん)
  • 七言絶句。鴉・花・家(下平声麻韻)。
  • ウィキソース「十五夜望月寄杜郎中」参照。
  • 詩題 … 『全唐詩』では「十五夜、月を望む。杜郎中に寄す」(十五夜望月寄杜郎中)に作る。杜郎中については不明。郎中は、官名。周代は近侍の通称。隋唐代以後、尚書省の六(りく)部(ぶ)がそれぞれ四司に分かれ、その各司の長。寄は、詩を人に託して送り届けること。『唐詩品彙』『万首唐人絶句』には、題下に「時に琴客を会す」(時會琴客)とある。
  • 十五夜 … 陰暦八月十五日の夜。十五夜の月を「中秋の名月」と言う。
  • 望月 … 月を眺めて楽しむこと。
  • この詩は、八月十五日の夜、月を眺めて詠んだもの。
  • 王建 … ?~830?。中唐の詩人。潁川(えいせん)(河南省許昌市)の人。字(あざな)は仲(ちゅう)初(しょ)。大暦十年(775)、進士に及第。はじめ渭(い)南(なん)県(けん)(陝西省)尉(い)となり、陝(せん)州(しゅう)(河南省)司馬で終わった。『王司馬集』八巻がある。ウィキペディア【王建 (唐)】参照。
中庭地白樹棲鴉
中(ちゅう)庭(てい) 地(ち)白(しろ)うして 樹(き)に鴉(からす)棲(す)み
  • 中庭 … 母(おも)屋(や)の正面にある庭。
  • 地白 … 月光で地面が白く輝いている様子。
  • 鴉 … からす。
  • 棲 … ねぐらにつく。ここでは月光の明るさで木に棲む鴉までが見えている様子。北宋の蘇軾「舟中夜起く」詩に「落月(らくげつ)柳に挂(かか)りて懸蛛(けんちゅ)を看る」(落月挂柳看懸蛛)とある。懸蛛は、ぶら下がった蜘蛛(くも)。ウィキソース「舟中夜起」参照。
冷露無聲溼桂花
冷(れい)露(ろ)声(こえ)無(な)く 桂(けい)花(か)を湿(うるお)す
  • 冷露 … 冷やかな露。
  • 無声 … 音もなく。
  • 桂花 … 木犀(もくせい)の花。月に桂樹が生えているという伝説があり、その伝説に因(ちな)んでいったものと思われる。『酉陽(ゆうよう)雑(ざっ)俎(そ)』に「旧言に月中に桂有り、蟾蜍(せんじょ)有りと。故に異書に言わく、月桂高きこと五百丈、下に一人有り、常に之を斫(き)る。樹の創(きず)随いて合う。人の姓は呉、名は剛、西河の人。仙を学びて過ち有り。謫(たく)して樹を伐(き)らしむ」(舊言月中有桂、有蟾蜍。故異書言月桂高五百丈、下有一人、常斫之。樹創隨合。人姓吳、名剛、西河人。學仙有過。謫令伐樹)とある。蟾蜍は、ひきがえる。月に棲んで月を食い、このために月が欠けるといわれる。ウィキソース「酉陽雜俎/卷一」参照。
  • 湿 … しっとりと濡らす。
今夜月明人盡望
今(こん)夜(や)月明(げつめい) 人(ひと)尽(ことごと)く望(のぞ)むも
  • 月明 … 月あかり。明るい月の光。満月の光。ここでは十五夜の名月。中秋の名月。
  • 人尽望 … 誰しも眺めていることであろうが。
不知秋思在誰家
知(し)らず 秋(しゅう)思(し)の 誰(た)が家(いえ)にか在(あ)る
  • 不知 … ~だろうか。~かしら。
  • 秋思 … (明月を誰しも眺めているだろうが、中でも最も)秋の思いにふけっている人(は)。秋の情緒を心に深く味わっている人(は)。
  • 在誰家 … いったい誰であろうか。誰家は、二字で「だれ」と訳す。家は、人称につく助辞で俗語的表現。
  • 在 … 『全唐詩』には「一作落」と注する。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻七(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻三百一(排印本、中華書局、1960年)
  • 『唐王建詩集』巻九(文化七年刊、『和刻本漢詩集成 唐詩8』所収、汲古書院)
  • 趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻二十四(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)
  • 『唐詩品彙』巻五十一([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
  • 『古今詩刪』巻二十二(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、汲古書院)
  • 『唐詩別裁集』巻二十([清]沈徳潜編、乾隆二十八年教忠堂重訂本縮印、中華書局、1975年)
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