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湖中(顧況)

湖中
湖(こ)中(ちゅう)
顧(こ)況(きょう)
  • 七言絶句。低・啼・西(平声齊韻)。
  • ウィキソース「湖中」参照。
  • 詩題 … 『全唐詩』には、題下に「一作洞庭秋日」と注する。『唐詩紀事』では「洞庭秋日」に作る。
  • 湖中 … 湖中にて。湖は、洞庭湖を指す。
  • この詩は、ある秋の日、洞庭湖に舟を浮かべたときに詠んだもの。漂泊のわが身を嘆いている。
  • 顧況 … 725~814?。中唐の詩人。蘇州海塩県(今の浙江省嘉興市海塩県)の人。字(あざな)は逋(ほ)翁(おう)。至徳二載(757)、進士に及第。秘書郎、著作郎となった後、饒州(江西省)の司戸参軍に左遷された。晩年は家族を連れて茅山(今の江蘇省鎮江市句容県の東南)に隠棲し、華陽真逸と号した。ウィキペディア【顧況】参照。
青草湖邊日色低
青草(せいそう)湖(こ)辺(へん) 日(にっ)色(しょく)低(た)れ
  • 青草湖 … 一名巴丘湖。洞庭湖の東南部に位置する。『水経注』湘水篇に「湘水は汨(べき)羅(ら)口(こう)の西北より磊石山(らいせきざん)の西を径(へ)て、北のかた青草湖に対(むか)い、亦た或いは之を青草山に為(つく)ると謂うなり」(湘水自汨羅口西北逕磊石山西、而北對青草湖、亦或謂之爲青草山也)とある。ウィキソース「水經注/38」参照。また『方輿勝覧』巻二十九、岳州の条に「青草湖は、一名巴邱湖。北は洞庭、南は瀟湘、東に汨羅の水を納め、昔より洞庭と並び称す」(青草湖、一名巴邱湖。北洞庭、南瀟湘、東納汨羅之水、自昔與洞庭並稱)とある。ウィキソース「方輿勝覽 (四庫全書本)/卷29」参照。
  • 辺 … 辺り。ほとり。
  • 日色 … 日の輝き。日差し。
  • 色 … 『唐詩紀事』では「影」に作る。
  • 低 … 低く傾く。
黄茅瘴裏鷓鴣啼
黄茅(こうぼう)瘴(しょう)裏(り) 鷓(しゃ)鴣(こ)啼(な)く
  • 黄茅瘴 … 茅(ちがや)が黄ばんで枯れる頃、瘴(しょう)疫(えき)(毒気にあたって起こる熱病や皮膚病)が広まるので、土地の人はこれを黄茅瘴と呼んだという。『南方草木状』(『説郛』巻一百四)の芒茅の条に「芒茅枯るる時、瘴疫大いに作(おこ)る。交広皆爾(しか)り。土人呼びて黄茅瘴と曰い、又た黄芒瘴と曰う」(芒茅枯時、瘴疫大作。交廣皆爾也。土人呼曰黄茅瘴、又曰黄芒瘴)とある。ウィキソース「説郛 (四庫全書本)/卷104下」参照。また『桂海虞衡志』(『説郛』巻六十二)に「春を青草瘴と曰い、夏を黄梅瘴と曰い、六七月を新禾瘴と曰い、八九月を黄茅瘴と曰う。土人黄茅瘴を以て尤(もっと)も毒ありと為す」(春曰靑草瘴、夏曰黃梅瘴、六七月曰新禾瘴、八九月曰黃茅瘴。土人以黃茅瘴爲尤毒)とある。ウィキソース「説郛 (四庫全書本)/卷062上」参照。
  • 瘴 … 『全唐詩』『唐五十家詩集本』『唐詩品彙』『万首唐人絶句』『古今詩刪』『唐詩紀事』では「嶂」に作る。
  • 裏 … ~のなかで。
  • 鷓鴣 … キジ科シャコ属の鳥。鳩ぐらいの大きさで、うずらに似ている。越の地方に多く生息している。越(えつ)雉(し)ともいう。鳴き声が物悲しいので、詩によく用いられる。『禽経』に「飛べば必ず南に翥(と)ぶ」(飛必南翥)とある。ウィキソース「禽經」参照。また、後唐(こうとう)の馬縞『中華古今注』巻下、鷓鴣の条に「南方に鷓鴣と曰う鳥有り、其の名は自ら呼ぶ。常に日に向いて飛び、霜露を畏れ、早晩には出ずること稀なり、有る時には夜飛び、飛べば則ち出で樹葉を以て背上を覆う」(南方有鳥曰鷓鴣、其名自呼。常向日而飛、畏霜露、早晚稀出、有時夜飛、飛則出以樹葉覆背上)とある。ウィキソース「古今注/中華古今註」参照。ウィキペディア【コモンシャコ】参照。
  • 啼 … 次々と声を出して続けて鳴くこと。『唐詩選』では「鳴」に作る。
丈夫飄蕩今如此
丈(じょう)夫(ふ) 飄(ひょう)蕩(とう) 今(いま)此(かく)の如(ごと)し
  • 丈夫 … 立派な男。ますらお。ここでは作者自身を指す。『説文解字』巻十下、夫部に「周制に八寸を以て尺と為し、十尺を丈と為す。人の長さは八尺、故に丈夫と曰う」(周制以八寸爲尺、十尺爲丈。人長八尺、故曰丈夫)とある。ウィキソース「說文解字/10」参照。また『春秋穀梁伝』巻十一、文公十二年に「男子は二十にして冠す。冠して丈夫に列す」(男子二十而冠。冠而列丈夫)とある。ウィキソース「春秋穀梁傳註疏/卷11」参照。
  • 飄蕩 … あてもなくさまようこと。落ちぶれて流浪すること。
  • 蕩 … 『唐五十家詩集本』では「泊」に作る。
  • 今如此 … 今このような身の上である。
一曲長歌楚水西
一(いっ)曲(きょく)の長(ちょう)歌(か) 楚(そ)水(すい)の西(にし)
  • 一曲 … 一節(ひとふし)。
  • 長歌 … 声を長く引き伸ばして歌うこと。『唐詩紀事』では「狂歌」に作る。
  • 楚水西 … 楚国の川の西方。青草湖は汨羅江の西にあたり、その昔、屈原が汨羅に身を投じた所でもある。ここではその故事への連想が込められていよう。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻七(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻二百六十七(排印本、中華書局、1960年)
  • 『顧況集』巻下(明銅活字本、『唐五十家詩集』所収、上海古籍出版社、1989年)
  • 趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻十五(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)
  • 『唐詩品彙』巻五十([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
  • 『古今詩刪』巻二十二(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、汲古書院)
  • 『唐詩紀事』巻二十八([宋]計有功輯撰、上海古籍出版社、1987年)
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